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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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SSランカーへの道(2)

 目の前で完全に怯え切っている元妹であるリーナを見て、ポチから手配されている狼の魔獣が反応を示さない事もあって嘘は言っていないと判断したクロイツ。


「良し分かった。聞くまでもねーが、あのバカ(ドレア)は<傀儡>の影響下にある……で間違いねーな?」


「はい」


「そうか。まぁそうでなくともあのバカならば同じような行動をとっただろうな。それと、元(・)両親はもうこの世界にはいねーんだよな?あいつらが闇の奴隷商を営んでいて、テメーがその地位を奪った。間違いねーな?」


「……そうです」


「一旦俺は帰るが、何時でもテメー程度には気づかれずにここに来る事ができる事は忘れるな。それと、明後日にでも一月後に奴隷商の幹部を全て集めるように通達しろ。そうそう、赤の紋章をつけられる術者も漏れなく招集しておけ。まっ、その時に色々画策してくれてもかまわねーぜ?その時には、テメーの今後の生活がより惨たらしくなるだけだ」


 これだけ言うと転移で消えるクロイツだが狼の魔獣一匹はこの場に残しており、その姿をリーナが確認する事は出来ない。


 同時に闇の奴隷商の最高戦力である商会長の護衛の一団も連れ去っており、ミュラ達がいる階層に転移させて説明も面倒で省いた状態で、既にいつのも定位置である崖の上で寛いでいる。


 自らの眷属である狼の魔獣から情報を受けていたポチは、いくらクロイツとは言っても実の妹に鉄槌を下さなくてはいけない事、更にはその兄でありクロイツの弟であるドレアにも厳しい沙汰を告げなくてはならない事、最後に両親が死亡している事を知った事により少々落ち込んでいると思い、いつも以上に優しくクロイツを包み込んでいた。


 クロイツは何も言わずに眼下に広がる幸せな光景をボーっと眺めており、自分の気が付かない内に涙が流れていたのだが、その事実を敢えてポチは見なかった事にして只管尻尾で優しくクロイツを撫でていたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 リベラ王国で兄妹の二人で二日ほど楽しく過ごす事が出来ていた“黒套のリージョ”と“白套のリサ”の二人は、常に気配を察知していたSランク魔獣を始末するべく移動していた。


「リサ、向こう側に四匹、あっちに五匹。どっちが良いですか?」


「う~ん、どっちも同じですが……お兄ちゃん(リージョ)が好きな方を選んでください!」


「フフフ、では、兄弟子の厚意を受け取りましょう。私が五匹を相手にさせて頂きますよ、リサ」


 普通はSランク魔獣を相手にする事も出来ず、更には数が多ければ死ぬ可能性が高いだけなのだが……最早二人にとってみれば良い経験ができるチャンスにしかなっていない。


 魔獣達は各ダンジョンから出された精鋭であり、二つに分かれているのは別のダンジョンから来た為で、彼らは定期的に状況を何らかの方法で所属するダンジョンに報告を入れていたのだが、二つの集団からは二度と情報を受け取る事が出来なくなっていた。


 最早戦闘とも言えず、何が起こったかわからないまま命の灯が消えた事だけは不幸中の幸いなのだろうか……その全てが、以前リージョが仕留めたかのようなまるで生きている状態のままに始末されて保管されていた。


「お兄ちゃん(リージョ)、やっぱり予想通りに歯ごたえが無かったですね」


「確かにそうですが、これも全て師匠のおかげですよ、リサ」


 全力で疾走しつつも楽し気に話をしているのだが、何を話していても最終的に話題は師匠(クロイツ)の話になってしまう二人は、そう時間がかからずにゼリア帝国のダンジョンに戻ってダンジョンに侵入する。


「「戻りました」」


「おっ、早かったな。じゃあギルドに行くか?」


 いつも通りの態度に見えなくもないクロイツだが、敬愛する師匠が無理をしている事に気が付かないリージョではないし、“師匠大好き病”のリサがこの状態に気が付かない事も有り得ないのだが、今回の作戦の内容を理解している二人はどうフォローして良いのかわからずに黙って後を付いて行く。


「戻ったぜ!依頼達成だ。これでこの二人、SSランクだな」


 以前リージョが昇格する際にはSランカーの力を借りていないかチェックする必要があったのだが、今回は誰も達成していないSSランカー申請の為に成果だけ確認できれば昇格する事は間違いない状態になっている。


 ミューテルとしては、想定よりも遥かに早くギルドに戻ってきて依頼達成を告げたクロイツと背後にいる二人のSランカーである“黒套のリージョ”と“白套のリサ”を見て、混乱に陥れる作戦は失敗したのだと判断しつつも表情に出ないように気を付けている。


「それは素晴らしいですね。どうぞこちら……」


「いや、俺達の受付はミリアだからな。あの時の依頼はミリアが業務できる状態じゃなかったからお前(ミューテル)から受けたが、今はそうじゃねーだろ?ミリア、処理を頼んだぜ!」


 その後立ち上がったミューテルを完全に無視するようにミリアを引き連れて裏手に回る三人のSランカー。


 ミリアは申し訳なさそうにしているのだが、ミューテルは怒りの表情を取り繕う事が出来ないまま受付の席に座り直して、何とか気持ちを落ち着けようと試みているのだが……やがて裏手の解体場の方からとてつもない騒ぎの声が聞こえてくる。


 確実にSランク魔獣多数を有り得ない状態で納品した事だけは理解でき、悔しさから落ち着く事が出来ずに一旦外に出るのだが、そこには組織からの連絡員がおり、その手紙を受け取るミューテル。


「作戦が失敗したと言う連絡かしらね?それならば知っているわよ!」


 少々イライラしつつも中身を見ると、そこには一月後にナスカ王国の王城に表の身分のままで集合と書かれていた。


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