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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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リージョ昇格(1)

お読みいただきありがとうございます

 今この時ですら情報受領側の立場ではなく送信側の立場であるために、その事には気がついていないポチやクロイツ一行。


 人族が普段生活している領域、特に町の中や街道にダンジョンは存在しないので、今の所はその周囲での目撃情報がない事だけは救いだろう。


「最近の目撃情報、何故か冒険者に大きな被害はないのですよ。そのおかげかはわかりませんがSランク魔獣の種類が多岐にわたる事がわかってしまい、喜ぶべきか、悲しむべきか、何とも言えないのです」


 仮に余計な事をして反撃とばかりに自らのダンジョンを支配されては困るので、諜報の為に差し向けているSランク魔獣に余計な事はするなと、それぞれのダンジョンの支配者が釘を刺している事が功を奏して、人族に大きな被害はない状況になっている。


「それで、少し前にリサ様が納品されたポイズナック。あの素材の一部がグアトロ王国の研究機関に送られておりまして、その素材があればエクスポーションを非常に効率的に作成できるとの事だったのです。それで、今回の依頼はSランク魔獣のポイズナックの入手になるのです。魔核があれば更に効率的になると予想されています」


「そうか。そうだ!ちょうど良い。リージョ、お前がやってみろ」


「わ、私がですか?Sランク魔獣……フフ。ありがとうございます、師匠。期待に背く事無く、依頼を完遂して見せますよ」


「お兄ちゃん、頑張って!」


 リサの無意識下での励ましの言葉に反応するミリアだが、クロイツはそう言えばこの事は誰も知らなかったなと思いつつも肯定する。


「お兄ちゃん?リサ様とリージョ様は兄妹なのですか?」


「ん?あぁ、そうだぞ。ところでミリア、今回の依頼はリージョが一人で受ける。何が言いたいかと言うと、Sランク魔獣討伐実績のあるAランカーであれば、昇格する事ができるだろう?」


「は、はい。リージョ様単独での依頼達成であれば、間違いなく昇格になりますが……」


「言いたい事はわかる。俺とリサは依頼達成までギルドで飯でも食っていれば、手助けしていない証明になるだろう?」


「恐れ入ります」


 認定済み上位ランカーの力を借りての実績であれば新たなランク認定はできないので、その不正を排除するためにあえてギルドに滞在すると言うクロイツ。


「ですが……確かに目撃情報はここから数時間の場所ですが、Sランク魔獣を相手にするとなれば相当時間がかかるかと思います。その間継続してこの場所に居て頂く事は現実的ではないのですが……」


「あぁ、そんな事か。リージョ、今日の夕方までに仕留めてこいよ。できるな?」


「もちろんです、師匠。では、時間が惜しいので私はこれで」


 いつもの通りに音もなく消えるリージョ。


「これで何も問題ないだろ?リサ、飯にしようぜ」


「はいっ、師匠!」


 未だに茫然としているミューテルと、やはりクロイツ一行はとんでもない実力があるのだと感激しているミリアをよそに、二人はさっさと併設されている食堂に移動して注文を始めていた。


 周囲は今のやり取りを余す事無く聞いており、Sランク魔獣を数時間で仕留めてくると言って見せた“黒套のリージョ”や、当たり前と言わんばかりの態度であるクロイツとリサも含めた三人の話題で持ちきりになる。


 ただ一人、ミューテルを除いて……


 唖然としているミューテルではあるが、いつの間にか冒険者から受付に書類が出されてその処理に追われ始める。


 内心穏やかではないが、今この場でできる事は何もないために黙々と作業を行うのだった。


 クロイツの異能である育成によって力が底上げされているリージョにとってみれば、過去は手も足も出なかったであろうSランク魔獣であっても、気配遮断が破られる事がないので何も苦労せずにポイズナックを一撃で仕留める事ができる。


 一番時間が必要になったのは、獲物(ポイズナック)がいる場所までの往復の移動だった。


 リージョが消えてから2時間程度経過しただろうか……クロイツとリサはゆっくりと食事を楽しんでデザートも食べ終え、飲み物を飲みながらまったりしている。


「ここのギルドも盛況だな。だが、ミリアの話で初めて知ったが、それ程Sランク魔獣が目撃されているとはな」


「そうですね。私も意識した事はないので気が付きませんでしたよ、師匠……っと、お兄ちゃんが帰ってきたみたいですね」


 一般的なギルドで最強と言われているBランカーでも片道の移動に数時間必要なのだが、往復とポイズナックとの戦闘を含めて2時間で戻ってきたリージョ。


 周囲の人間には一切その存在がわからないのだが、クロイツとリサはその姿を完全に認識する事ができるので、ねぎらいの言葉をかける。


「リージョ、予定通りだな。これでお前もSランカーだ」


「お兄ちゃん、おめでとう!」


 はたから見れば、何もない空間に最強戦力であるSランカー二人が祝辞を述べているので少々おかしくなったのかと不安になっていたのだが、徐々にその姿を露わにするリージョの存在に気が付き、再びギルドは騒然とする。


「ありがとうございます、師匠、リサ。今回の依頼、完遂しました」


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