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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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ミューテル(2)

 不穏な空気を出しているリサに気後れし、何とかリサが不在中に時折共にギルドに来て行動していたリージョに助けを求めるクロイツ。


「い、いや。違うぞリサ。おいリージョ、何とか言えって!」


 振られたリージョだが、まさかの妹の強烈な圧力にどうすれば良いのか思案してしまい、なかなか口を開けない。


 リサとしては、リージョのこの態度がクロイツを庇う為に思案していると思ってしまい、余計に圧が強くなる。


「うぉ~い、リージョ!頼む。何とか言えって!」


「はっ、そ、そうですね。リサ。師匠は無罪ですよ」


「何だよ無罪って!なんだか余計に怪しいじゃねーかよ!良いかリサ、よく聞けって。俺は普通にギルドの対応をしてもらっていただけだ。なぁ?ミリア」


「そうですよ、リサ様。まさかリサ様を差し置いて何かをするわけないじゃありませんか!以前からリサ様が常にクロイツ様に蕩けそうな視線を向けて……」


「わ~わ~わ~わ~、わかりました。何でもないです。ミリアさん、久しぶりですね!元気ですか?早速受付をお願いします!」


 フードの中で茹蛸のように真っ赤になりながら、ミリアの言葉を強制的に遮って続きを言わせないリサ。


 周囲の冒険者は生暖かい目で三人を見ているのだが、ミューテルだけは違う。


 このままではミリアに全て持っていかれると思い、ちょうど自分が作業していた冒険者の処理が終わったので立ち上がり、半ば強引に挨拶する。


「クロイツ様、リサ様、お久しぶりです。リージョ様は初めまして。私ミューテルは、この度リベラ王国からゼリア帝国に異動してきました。お二方が冒険者登録した事はつい最近のように思い出されます。フフフ、クロイツ様は冒険者についての説明も受けずに出ていかれてしまいましたね」


 自分が二人の冒険者登録をしたのだと殊更に強調するミューテル。


「もしよろしければ、昔からお二人の事を良く知っていますので私が担当させていただきましょうか?」


 既に受付と話している時に冒険者の担当を奪うような行動は、その受付に余程の能力不足や問題がない限りタブーとされている。


 その基本理念を完全に無視して、形上は問いかけのような形にはしているが強引に担当受付の立ち位置を奪おうとするミューテル。


 低ランクの冒険者であればだれが受付をしても良いのだが、高ランクになれば慣例としてギルドが対応する受付は固定される。


 納品される物が一般の冒険者とは大きく異なり価値が高く、当然依頼も高レベルでありそれなりの知識が必要であるため、受付側が混乱してしまうのを防いでいるのだ。


 突然新顔から横槍が入った為に少しだけ表情に出てしまうミリアだが、そんな事はお構いなしにミューテルは有無をも言わせず話を進めようとする。


「私であれば皆様に対応させていただいた経験が十分にありますので、是非そうしてください。お互いに動きやすければ皆様はもとよりこのギルド、更にはゼリア帝国の益にもなりますから」


 リージョとリサはこの申し出を即断ろうとしたのだが、クロイツが一歩前に出た為に不思議そうに思いながらも口をつぐむ。


「リサ、師匠はどうしたのでしょうか?普段はこのような面倒ごとは絶対に自分では対応しませんでしたよ?」


「私と一緒の時もそうでしたよ、お兄ちゃん。今回、もうあの人(ミューテル)の事は裏も含めて良く知っているので、綺麗な外観に騙されたとは……流石にないとは思いますけれど」


 弟子二人が、誰にも聞こえない程の小声でさりげなく自分をディスっている話しが聞こえてしまっているクロイツは、わざとらしい咳をして二人を黙らせると、ミューテルの対応を始める。


「オホン!本当に久しぶりだな。そう言えばもう知れ渡っていると思うが、俺の故郷はナスカ王国でな。これから弟子二人と色々な国を回ってみたいと思っているので、住んだ事のある国の話を教えてもらえると助かるんだが……って、前にアンタ(ミューテル)がいたリベラ王国の事は俺も知っているから無しにしてくれ」


 後ろで黙ってクロイツの話を聞いている弟子二人は、なぜこの場でこのような話をするのか今一つ理解できていない。


 あえて各国を渡り歩くと伝える事で、専属になれてもそう長い間はこの場所に留まらないので旨味がないと伝えているのだろうか……と推測しているのだが、クロイツの本当の狙いは別にある。


 問いかけられたミューテルも、リサやリージョが思っている通りに専属で対応できる期間が短くなると暗に告げられたと思い、態々異動してきた事が無駄になると思ったのだが、短い期間とはいえ相当な額を稼げるはずだと頭を切り替えて自分が担当になるために聞かれた事に律儀に答える。


 話し方は、専属の受付の立ち位置を勝ち取った前提だ。


 冒険者側が受付を指名すれば誰も文句を言う事は出来ないので、クロイツ達から間違ってもミリアを担当にすると言われないように、既に自分が担当だと知らしめるべく少々大きな声で話す。


「そうですか。どの程度の期間皆様の受付をさせて頂けるかはわかりませんが、誠心誠意対応させていただきますね。それで……国ですか。皆様はグアトロ王国をご存じですか?」


 リージョだけが少々反応するが、それに気が付けるのはリサとクロイツだけであり、ここで初めてリサとリージョはクロイツの意図を正確に理解した。


 世間話の流れで、ミューテルが生活していた場所を聞き出そうとしているのだ。


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