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時風高校探偵倶楽部の活動報告  作者: 也麻田麻也
第二章 探偵倶楽部勧誘事件
17/40

突然の放送

 事の顛末は拍子抜けするほど簡単だった。

 金井が普段教室で行っていた下着の取り替えをトイレでおこなって来たために、個室の中に外したブラジャーを置いてきてしまった。たったそれだけの事だった。


 金井曰く、普段教室で着替えていたのですっかりと忘れていたらしい。それが本当ならよっぽどの馬鹿か天然だ。


 俺はなぜこんな簡単な事に、直ぐに気付く事ができなかったのだろうか。


 気付いたのは金井に声をかける直前だった。


 男だからか、上半身裸になるような着替えも教室で行っていたので、トイレや他の場所で着替えると言う概念が欠けていたのも気づけなかった原因かもしれないが、だとしてもバックの中に無かった時点で盗難ではなく紛失を疑うべきだった。

 


 俺が直前とはいえ気付けたのは、月城の遅いなと言う呟きを思い出したからだった。


 普段より遅いと言うことは何かがあった、又は普段やらない何かをしたと言うことだと考えた。


 なぜ普段以外のことをしたのか。


 それは普段いない人物、つまりは転校生の俺がいたからだろう。

 今まで金井は月城が窓の外にいる状態でも背を向け下着を替えていたらしい。共学出身の俺からしたら信じられないことだが。

 

 けれど、今回は俺がいたから恥じらいでトイレにいって変えてきたとのこと。もし万が一振り返ったり、中に入ってこられたら、はしたないところを見せてしまうからだと。


 因みに月城は弟又は妹のような存在だから、恥じらいはないらしい。


 考えてみれば簡単なこと。幼稚園児ならば皆上半身裸になって着替えることに抵抗はないだろうが、俺達は高校生なんだ。上半身裸になることに抵抗があるに決まっているよな。


 服を脱がされまでした事件の結末がこんな呆気ないものだと思うと俺は思わず泣けてきた。


 日向、金井を始め、クラスメイト達に謝られ、撮られた写真の削除を条件に許しはしたが、俺の心はどこか腑に落ちない気持ちで一杯だった。


 その気持ちは五時間目六時間目の授業が終わっても消えることは無かった。


 帰りのホームルームも終わると、クラスメイト達がバックを手に席を立った。部活に行こうや遊びに行こうか、今日は塾いきたくないと高校生らしい放課後話をし、キャッキャ騒いでいるのを聞きながら、俺はどうしようかなと、日向から貰った購買部の焼きそばパンをかじった。


 旨いな。

 ソースが濃いめで中に刻まれた紅しょうがが入っており甘さとしょっぱさのハーモニーが絶妙だった。

 

 因みにこのパンは犯人扱いしたお詫びにと貰ったものだ。パンをかじりながら、家に帰ろうか、それとも転校初日だから校内でも見て回ろうか考えていると、俺の席に木ノ実がやって来た。


「せめちんは放課後どうするの?」

 どうするのとは何をすると言う意味だろう。


 特になにもないと答えようと思ったが、俺はそれよりも先に木ノ実との会話でお決まりになりつつある台詞をはいた。

「せめじゃなくて、こうな」


「えー、こうちんって言いにくいよ。口馴染みないから噛みそうだしさ」


 だったらせめちんは口馴染みあるのかよ。


「こうちんか……」

 よほどせめちんと言いたいのか、口をすぼめ呟くと、ハッとした顔をした。

「こうちんを連続で良い続けると、こうちんこうちん、こうちんこ……ちーー」


「言うなよ!」

 卑猥な発言を間一髪食い止める。

「女子高生が口にする単語じゃねえよ」


「えー女子でも一日五回は口にする単語だよ」

 腕組し、そんなことも分からないのと言う顔をする。


 女子との会話経験など数えるほどしかない俺だが、木ノ実の発言が間違っている事くらいは分かった。


 五回も口にするのはお前だけだろ。


「誤解です」

 と、日向が会話に割り込んできた。五回と誤解で一瞬漢字変換に戸惑ったが、木ノ実の発言を否定しているのだと考え、頭の中に誤解と浮かべる。

「うら若き少女達はちんこなんて、一日一、二回しか口にしないです」


「うら若き少女なら零回にしろよ」


「無理です。会話の流れ上避けては通ることが出来ない単語です」


 その言葉に木ノ実と金井がうんうんと頷いた。


「うら若き少女がそんな会話の流れは辿らねえよ」


 俺が未だに女に夢見ているのか、このクラスが異常なのかは分からないが、きっと後者のはずだ。

 いや、後者であって欲しいと切に願う。 

 まだ女子には夢を見ていたい年頃。それが十七才の思春期と言うものだ。


「時に水澤君。茜も聞いたですが、放課後は如何するですか?」


「いかがって、特に決めていないけど」


「それは良かった」

 日向はそう答えるとちらりと、黒板の上に備え付けられた時計を振り替える。

「もしご予定がなければ、私達の部室に遊びに来ないですか?」


「部室?」

 日向の部活は探偵倶楽部と言っていたので、部室とは探偵倶楽部の部室と言うことだろう。転校生に部室に来ないかと誘うと言うことは、これは部活の勧誘なのだろうな。


 人をあんなにも貶めた部活には入りたくないと思い断ろうと俺が口を開いた瞬間、ピンポンパンポーンと迷子の案内を知らせるようなチャイムが鳴った。


『青春と言う名の苦楽と快楽味わっている全校生徒の諸君、暫しこの校内放送を私的に使う事を許していただこう』

 教師にしては若い声がスピーカーから流れると、教室中から歓声が上がった。


 いや、教室中ではなく学校全体から人気アイドルのコンサートと言わんばかりの悲鳴が上がっていた。

 俺が何事だと思い耳を塞いでいると、スピーカーが次の言葉を流した。


『我が探偵倶楽部の諸君に一つの指示を出そう』

 言葉をしっかりと聞こうと言う現れか、校内は突如リスニングの試験中と言わんばかりに静まり返る。『本日二年七組に転入してきた水澤攻』

 と、突然俺の名前がスピーカーから流れると、教室に残ったクラスメイトの視線が俺に集まった。

『君の話を聞き、私は興味を引かれた。そこでだ、君を我が探偵倶楽部に入部させることにした』


「……はい?」


『至急部室まで来るように。ああ、因みに一つ言っておくが、君に入部を拒否する権利も、部室に来ないと言う選択肢もない。それでは生徒諸君、限りある青春の日々を謳歌したまえ』

 ピンポンパンポーンと再度奏でると放送は終わった。


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