下着の行方
ボタンはゆっくりと焦らすように外されていき、今では下半分まで外されていた。
「おや、良い腹筋ですね。鍛えているですね」
クラスメイト達が日向の言葉に合わせるようにキャーと黄色い声をあげる。
「おい、マジで止めろ。止めてって。ちょっ、おいルーム長なに携帯向けているんだよ。ねえ、写メはやめて。止めてって」
ルーム長は残念そうに向けた携帯を下げた。ルーム長につられたのか、他に携帯を向けていた女子も残念そうに携帯を下げる。
「恥じらう水澤さんも可愛くて良いですね」
金井はこの状況を楽しむかのようにクスリと笑った。
恥じらうに決まってるだろ。日向は背伸びし今度はシャツのボタンを上から外し始めた。150ないような小柄な体格では外しにくいようで苦労していた。
「高いし固いです。むー、自分のならぱっぱっと外せるですが」
俺は首を揺すり、更なる抵抗を試みる。とはいっても外しにくさが少し上がる程度の抵抗だが。
幼稚園生の子供じゃないんだ、ボタン一つ外すのにそこまで時間はかからないだろう。
そこでふと、自分の思考の何かが引っ掛かった。
「……幼稚園……」
「誰が幼稚園生ですか。屈辱です。写メとるです」
自分の事を幼稚園生と言われたと思ったのか、日向は語気荒く叫んだ。
すると、下げられていた携帯がまた上がり俺に向いた。
中にはシャツを片手で押さえながら撮影を試みるものもいた。見せたくないけど取りたいと言う複雑な乙女心が現れていた。
もはや隠してはいない金井とは大違いだ。そう思ったときにふと疑問が湧いた。
「金井!」
背後にいる金井を呼ぶ。
「はい。なんですか?」
俺が金井と話をするのが分かったのか、日向はボタンを弄る手を止めた。
「俺が来る前も体育の時はスポーツブラに変えていたのか?」
来る前とは転校してくる前と言う意味だ。
「はい。ずっと変えていますが」
「だったら……今日の着替えがいつもより遅かったのはどうしてなんだ?」
俺の質問に金井はピクリと揺れた。
「それは……あっ……」
金井が何かに気付いた声をあげると、ガラガラと、扉が開けられた。
「いやー体育最高だねー。無回転のコツつかんだし、次はバンバンシュートを決めれルぞー」
教室の雰囲気等お構いなしに茜は中にずんずん入ってくると、俺を指差し言った。
しかし誰もその言葉には反応せずに、指差す茜の手に握られたものを見ていた。
「あら、私のブラジャーですわ」
「やっぱりかー。トイレにかけてあったよー」
木ノ実は持っていたブラジャーを広げた。
「こんなでかいのは祥子のかと思って持ってきたよ」
「うっ」
と、足元で月城は声をあげると鼻を押さえた。どうやら刺激が強すぎたのか、月城はポケットを探りハンカチを取り出し鼻に押し付けた。鼻血が出たのかもしれないな。
大丈夫かと気にする事もなく、俺はじろりと日向を見る。
すると日向は外す時の十倍速でそそくさとボタンを閉じると、ごほんと咳払いをした。
「一件落着です」
「殺すぞチビスケぇぇぇぇ」




