表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

5.

 魔王城へ戻って来た。

 とは言っても三日ぶりだ。

 本来なら五日以上開けてるから、早すぎる帰還だな。

 まあ、用事があれば直ちに戻って来るし、今回と同様の事で戻るのもすでに五度目だ。

 転移の魔道具があるので楽ではあるけど。

 そもそもの始まりは、獣人達が奴隷として村で働かされていたのを見かけたからだったんだよな。

 でもって、全員が人間に誘拐されてきていたし、食事も満足に与えられてなかったからひどく痩せていて、痛々しかった。

 何とかしてやりたいと思ってしまったんだなー、これが。

 自己満足の偽善だけどな。

 でも、俺も自分の世界から召喚魔法で誘拐されたようなものだったし。

 因みに召喚魔法を使ったのは、魔王領から西へ国を二つ程またがったとこ。

 着地点がズレて魔王城に直接来たんだよ。

 んで、中庭で迷ってたところを魔王様に拾われたわけだ。

 召喚した王国は現在、王城を中心に貴族街の約半分が深いクレーターと化し、二年で池になり三百年の間そのまんまになっているんだそうな。国は内乱状態になり、別の国になった。

「クレーターの原因は勇者召喚時の魔力が暴走した上に逆流した結果であり、自業自得な結末! だからジョセフィーヌは気にしないで良いのよ!」by魔王様

「ジョセフィーヌはやめてくらさいおながいしまつこのとおり(土下座)」by俺

 ま、ともかく、獣人達が俺と似た境遇だとわかればあとは早かった。

 魔王城へ戻り、魔王様にお願いしてみた。そしたら、

「獣人の子供はいるの?」

と、目はギラギラというか渦巻きグルグル、鼻息もフシューフシューと荒く詰め寄られる始末。

「はい。ですがみんなは飢えているようで……」

「何ですって?! すぐに保護しなさい! 方法はジョセフィーヌに任せるわ!」

 とまあ、こんな具合で保護する事になった。

 俺は村に戻り、村長と相談。小麦を十キログラム袋の二十袋で子供含めて十二人全員を身請けし、魔王領へと転移して戻る。

 俺が獣人達を迎えに行っている間に、魔王様が中庭に一時預かりの宿泊施設をその膨大な魔力にものを言わせて用意していた。

 奴隷から解放して体調がまともになるまでそこで療養し、具合が良くなり次第、魔王領での生活を送れるように一時期魔王城で鍛え、それから街へと送る算段をつけたらしい。

 その為に、城から北側に抜けた場所に宿泊施設と訓練用広場を設け、これまで連れてきた元奴隷達を鍛えつつ、手に仕事をつけさせている。

 尤も、教えるのは魔王様の部下やメイド達だ。

 俺? 俺に誰かを教え導くことなんてできるわけがないじゃん。だから丸投げなのSA!

 てなわけで旅を続けたんだが、行く先々で同様の者達がおり、その度に魔王城へ引き取るというサイクルが出来上がってしまったのは大いなる誤算だった。

 何だか仕事になってしまったなぁ……とほり。

 でも獣人の子供達を前に、魔王様がむっちゃテンション高くなってるのには笑ってしまった。

 そんでもって、お肌もツヤツヤ。

 子供達もだんだん元気になっていって、フワモコ状態なので仕方ない。

 そんな事を始めるようになって、一番驚いた事がある。

 それは元奴隷達が云々ではなく、この事業を統括しているのが四天王の一位、オークキングのグルフだった事だ。ヤツに任せたら女性が別の意味で奴隷になってしまうだろうと最初は思った。

 だが、俺が魔王城を出た後に、彼は賢者になったらしい。

 どうゆう事かと魔王様に尋ねたら、

「ジョセフィーヌが居なくなったから、グルフなら私の飢えを凌げるかと思ったんだけどね〜。

 あいつったら量は少ないし薄いし……だから私が満足するまで色々と搾ったら、枯れちゃった。テヘ」

 オークキングが賢者モードになるなんて、一体どれだけ搾り取ったんですかー?!

 おかげで彼は種族が進化したらしく、今はグレート・オークキングとなっているらしいwwww

「魔王様、一部事実を話さないのはいけませんな」

「ちょっ……グルフ、あんたいつの間に……」

 俺がボヤッと魔王様の話を聞いている間に、いつの間にやらグルフが来ていた。

 以前とはあまりに気配というか雰囲気が変わりすぎていて、別人にしか見えない。

 よく見るとグルフ本人なんだが、以前の粗野で無遠慮で無思慮でイカ臭いオークのテンプレな雰囲気は一切無く、礼節を弁え、深く広い知識を持つ賢者となっている。世紀末でヒャッハーな鬼畜エロデブから、ローブを纏った賢者にジョブチェンジしたわけだから、違和感しかない。

 唖然とする俺に、何があったのかを説明してきた。

「魔王様はな、オークキングならいくらでも精が出るだろうとおっしゃって、十日もワシの精を搾り続けたんじゃよ。じゃが、オークキングのワシでも限界はある。

 とうとう枯れたワシに対し魔王様は、役立たずと仰って、ワシの逸物をもぎ取ったんじゃよ。

 そのおかげで性欲に回っていた大半の思考が解放され、思慮と思索へと変わったんじゃ」

「ちょっ……魔王様……」

 俺が魔王様を見ると、明後日の方を見ながら吹けない口笛を吹いている。

「そのおかげで、ワシは【 グレート・オークキング 】へと進化した!」

 ドヤ顔で自慢が炸裂するが、アンタどこの勇者ロボだよ?!

 放射光と集中線の背景にドッギャアアアン‼️ という効果音までついてきたんですが!?

 っていうか、牙をもがれた狼ならぬ、ωをもがれたオークキングとは……ある意味哀れすぎて、男として泣けてくる。

 そのドヤ顔も俺には煤けて見えて仕方がない。

 だが、これで四天王№1の座は揺るぎない物となったようだ、たぶん……おそらく。

 ま、強くイ㌔。

「そっちの話は置いといて、今後も獣人の奴隷を見つけたらこっちに連れて来るって事、続けていいんですかね?」

「構わんぞ。こっちの人口は増えるし、魔物退治の人手も増える。彼等ならこの魔王領でも上手くやっていけるだろうよ」

「解りました。じゃあ、今後も続けるってことで」

「ああ、他にも人族に虐げられている者がいたら連れて来るといい」

「了解しました」

 さっさと街に移動する。魔王様に捕まったら、また二・三日、時間とアレを搾り取られてしまうからな。

 てなわけで、さっさと街へ戻った俺は、奴隷商人の店を片っ端から見て回り、まとめ買いでいくらか値切りつつ、二千を越える獣人達を魔王城に連れて行く事に。獣人の村も三箇所ほど回った。

 他にも、探知魔法で貴族の屋敷で虐げられていた者達を探し、その主人に対して脅h……いやいや、交渉して引き取って行った。

 治療や奴隷からの解放は魔王城のスタッフがやってくれるので、どんどん送る。

 合計三千人ほどになったので、ここらで一区切りかな。

 その事をグルフに尋ねると、

「こちらの受け入れはまだ余裕がある。これまでとペースは同じで構わぬぞ」

 一区切りできねぇ─────!!

 完全に藪蛇だった。

 尤も、グルフの目が【 魔王様の為に、マメに帰ってこい 】と言っているわけで。

 仕方なく俺は、「了解」と言うしかなかった。




 あ、そうそう、スルースキルのレベルが三個さがったわwwwwwwww




 んー……コレかな。

 奴隷獣人購入が一区切りついたので、冒険者ギルドへやってきた。

 冒険者ギルドで俺が見ている依頼は、《薬草採取》だ。

 普通なら常時依頼になっているものだが、これは特殊な薬草なので、別で依頼が出されている。

《上級薬草若葉 五枚》

 これは魔素の濃い場所でごく稀に生える高品質の薬草を指すのだが、その若葉を採ってくるのは早朝でなければできない。

 つまり、危険な森の奥で一晩を明かし、夜明け前から採取準備しなければいけないという事である。

 そうなれば必然的に、ランクの高い依頼となる。

 しかも、それを五枚ともなると、二日か三日がかりになる可能性もある。

 おまけにこの依頼書では報酬額が低い上に期限が明日となっているので、誰も受けないだろう。

 ま、俺の拡張道具袋には上級薬草若葉が千枚ほど入っているから、受けるんだけどね。

 受付を見ると、数人並んでいる若い受付嬢の所と、誰も並んでいない厚化粧のBBAの所がある。

 俺は並ぶのが嫌いなので、誰も並んでいない方へ向かった。

 受付でギルドカードと依頼書を出す。

「この依頼を受けたいんですけど」

 (B)(B)(A)が俺のカードを見て、一瞬引きつったように口の端を歪めた。

「……申し訳ないザマス。貴方のギルドランクでは、この依頼は受けられないザマス。身の丈にあった依頼を選ぶ事をお勧めするザマス」

「実は、この依頼書にある《上級薬草若葉》は、すでに手持ちであるんですけど」

「ずっと以前に採取されたのでは鮮度が悪くなっているに決まってるザマス! それでは依頼達成にはならないザマス!」

「俺が持っている拡張道具袋は時間停止の付与がされているので、その辺りは問題ありません」

 すると、(B)(B)(A)の目が見開かれた。

「そ……そんな……ありえないザマス! 貴方程度のランクでそのような高価で貴重な拡張道具袋を持てるわけが無いザマス! きっとどこかで盗んできたに違い無いザマス!」

「……なぜいきなり盗品・盗人扱いされるのか良識を疑いますが、この拡張道具袋は正真正銘俺のものです。作った本人ですから」

 最初の一つは魔王城に来て数十年後に、魔王城を攻めてきた連中が持っていたものを戦利品として戴いたわけだが、それを分解・解析して性能を高めたオリジナル版が、今俺が持っている物。故に、盗品扱いは頭に来る。何せ五百を超える失敗作を積み重ねてようやっと完成させた、努力の結晶なんだから。

 中身はほとんど戦利品だし、倒した連中をいつまでも俺が担当するエリアに転がしておくわけにもいかなかったんだよな。だから装備や所持品を頂いて、遺体は完全焼却処分してた。奴らの故郷に送り届ける義務なんてなかったしねぇ。

 二つ目以降は魔王様に献上し、お城のスタッフで使っている。

 いずれにせよ、この(B)(B)(A)では話にならない、というかこのギルドで仕事をする気が失せたので、依頼書を元の場所に貼り直す。

 (B)(B)(A)が何か喚いていたが、放っぽいてギルドを出ようとした所で、街中に警報の鐘が連打で大きく鳴り響いた。

 途端にギルド内が騒然とする。

 外に出ると、多くの冒険者達がギルドに向かって来る。

 それらを避けて道端に寄ると、街の北側から大量の魔物の気配が迫っているのが感じ取れた。

「んー、この感じはオーガかトロルってところか? いくらかの大型変異種も混じっているようだけど?」

 正確には判らないが、大雑把に見積もっても変異種が五体前後、普通なのが百から三百ってとこ?

 大きな気配の周りに小さいのがたくさん集まってるらしいから、分かりづらいな。

 一体原因はなんだろうねぇ。

 普通は群れを作らずに、せいぜい二・三体でしか行動しない連中が、こんだけ群れてくるとは……

 もっとも、魔王領では中堅クラスの強さだから、俺からしたら数が多いだけで手間のかかる雑魚レベルなんだよな。多少(なまくら)な剣でも、魔力を纏わせれば胴体を両断できるし。

 ま、この街の冒険者連中がどれだけ対処できるのか、見物するとしようか。

 道の端を北の門に向かって歩いて行く。

 北門は既に閉まっており、砂袋が積み上げられ始めている。

 みるみるうちに人の胸くらいの高さまで積まれていったが、門の板そのものがさして補強されていないので、トロルの力の前には薄い板壁程度にしかならない。

 一撃で破られるだろうな。

 そんな事を考えている間に冒険者連中が続々とやって来て、門を中心に三十メートル離れた扇型で並んでいく。装備や得意な戦闘形態に関係なく。

 普通、重装備の盾持ちが前なんじゃ?

 あ、重装備の連中がやって来て、先に来ていた連中の後ろに陣取っている。

 これだけで頭痛が痛くなってきた。

 魔物退治は早い者勝ちなのか?

 そりゃあ、雑魚が相手ならそれでも良いけど、オーガやトロルって、彼等には楽勝なのか?




 全然楽勝じゃなかったよ。正直、草刈り状態www

 トロルが門をぶち抜き、足元に積み上げられている砂袋を蹴り上げると、それが冒険者連中の前衛に降りかかる。袋が破れ、砂が撒き散らされながら飛んでくるので避けようがない上に、砂に混じって破れていない砂袋がそのまま飛んできて、岩を投げつけられたようにぶっ倒れる者もかなり出た。

 そこへトロルの両脇から飛び込んできたオーガの棍棒に、成す術なく冒険者連中がぶっ飛ばされて宙に舞った。

 それだけで混乱に陥る冒険者達。逃げようにも重装備の連中が邪魔で混乱に拍車がかかる。

 本来盾役の重装備連中が受け止めるなり受け流すなりして被害など出ないはずなのに、どうしてこうなった? 腹痛が痛いんだが……笑いを堪えるのに必死でwww

「見つけたザマス! この盗人(ぬすっと)め! 覚悟するザマス!」

 おっと、(B)(B)(A)に見つかってしまった。

「いや、何を言ってるのか意味不明なんだが……」

「お前が盗んだその拡張道具袋を渡すザマス! お前のような低ランクにはもったいないザマス!」

「これは俺が作ったものだと何度言えば理解できるんだよ?! あんたの方こそ集りか泥棒じゃねぇか!」

 全く、泥棒呼ばわりにカッチーンときて、高値で買ってしまったよ。

「まああああああっ?! なんったる暴言! ギルド職員に対して無礼ザマスっ!」

「無礼はそっちだろうがっ! イキナリ罪をでっち上げられたら、普段温厚な俺でも怒りが天元突破するじゃないかっ!」

 (B)(B)(A)がなおも言い募ろうとした瞬間、その背後から接近してきたゴブリンが、棍棒で(B)(B)(A)を殴って昏倒させた。

(B)(B)(A)! 後ろ! 後ろ!」

 とは言わなかった。こっちの手を汚さずに邪魔者を排除する機会(チャンス)だからな!(邪笑)

 そんで俺は、向かって来たゴブリンを大通りへと誘い出し、サックリと剣で首を落とす。

 小者が大量に入り込んでいるから気をつけないと。

 それにしてもゴブリンがこんな所まで入って来てるって事は、門の方は……げっ! サイクロプスじゃねぇかよ! 街の門よりデカいのが、門をぶち壊して侵入路を広げてやがる。

 すでに片側は十メートル以上の壁が崩れ、そこからオークやゴブリンがワラワラと侵入していた。

 オーガも五体、トロルは二体が門の前に立ちはだかり、冒険者連中を近付けさせない。

 変異種は未だ姿を見せていないのが気になる。

 まあ、押し寄せる魔物の向こう側にはいるんだがね。

 冒険者連中が居るのでこちら側に押し寄せるオークやゴブリンは始末されているが、やはりオーガやトロルは荷が重いらしい。

 前線はオーガ達が前進しないので膠着状態が続く。

 うーーーん……別に依頼は受けてないから、南門から出ようか。

 この街は気に入らないし。

 実は、ギルドの依頼掲示板で、獣人族狩りの依頼があったんだよね。

 それってつまり、獣人はヒトとして扱われてないって事なんだなーと思った。

 これまでの街ではこんな依頼は無かったからな。街ぐるみで獣人奴隷を商品として扱ってるんだろう。

 ということで、とっとと南門へ向かう。



 Oh…………ここもかよ……………orz


 サイクロプスの変異種が楽しそうに門を破壊している。

 破片が飛び散るので、冒険者連中だけでなく魔物達すらうかつに近づけないのは運がいいのか悪いのか……

 こうなったらサッサと退治して街を出て行こうそうしようそれがいい。

 冒険者連中をかき分けて前に出る。

「おい! 近寄るな! 危険だぞ!」

 呼び止めようとする連中を置き去りにし、破片を避けながら突き進む。 




 サクッ




 サイクロプス変異種の首が落ちた。

 俺が真正面から突っ込み、奴が気付いても対処できないうちに魔力を纏わせた長剣で斬り落としたんだけどね。

 そしてその死体は俺の拡張道具袋に入れた。素材が取れるし、邪魔にもなるからな。

 門から出ると、オーガが三体、トロルが四体、オークが大体百、ゴブリン数百がお出迎え。

 団体さんがこちらに駆けてくるのを跳び越える。

 一番前のオークの頭を踏み台にし、奥にいたオーガも踏み台にして群れ全体を跳び越えた。

 そしてどっかの三代目怪盗の如く走り去る。

 追いかけて来たオークやゴブリンは、ワザと速度を緩めて追いつかせ、縦にバラけたところで迎え撃った。

 全部で三十体ほどだったので楽勝。

 そのまま南へと向かった。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ