雨
とうとう完結しました。
僕は、自分の結界を解除して、うずくまるティーダを抱き締めた。
「ティーダ」
何の反応も無い。
生きていることだけは、呼吸で分かる。
「僕は、君のことをちゃんと理解出来ていなかった。友達じゃなくていい。夫婦のままでもいい。2人の関係の名前なんて、なんでもいいんだ。もう一度、最初から始めよう。僕は、君のことが知りたい」
ティーダが、わずかに動く。
「どこか、2人だけで暮らせるところへ行こう。小さな島で、2人だけで暮らそうよ」
ティーダが少しだけ顔を挙げた。
「ほんとうに?」
「うん。僕はもう、ティーダに嘘をつかない」
笑ってそう言うと、ティーダが僕に抱きついてきた。
「夢みたいだ。アルトから、そんなことを言ってもらえるなんて。俺もう死んでもいい」
子供みたいなティーダに、笑って答える。
「言い過ぎだよ、ティーダ。ほら、立ち上がって。2人で旅に出よう。もうトイレは一人でやるからね」
冗談めかせて言うと、ティーダも照れながら頷く。
2人で手を繋いで村を出ようとした。
その時、誰かに呼ばれた。
「アルト!」
ワカが、戻ってきていた。
足をもつれさせながら、必死に走ってくる。
僕は、驚きながらも、ティーダのことを説明しようと迎え入れる。
「ワカ、話があるんだ」
横にいたティーダが、おもむろに手を挙げた。
ワカを狙っている。
「ティーダ!やめろ!ちがうんだ!」
ティーダの腕を掴み、軌道を逸らせる。
ワカの近くの地面が大きくえぐれた。
ワカは腰を抜かして青ざめている。
ティーダの正面に立ち、説得する。
「彼女は、お世話になった人の娘だ。それだけだ。君のことを説明しようとしただけだよ。君が僕の大切な人であり、これから旅に出ることを」
ティーダは、少し落ち着きを取り戻したが、不機嫌だ。
「さっき、あの男がワカっていう娘とアルトが結婚するって言ってなかったか」
しっかり覚えていた。
「しないよ。それに僕は、これから君とずっと2人で暮らすんだ。そんなこと出来るはずないじゃないか」
ティーダの機嫌は治った。
ほっとしてワカに向き直る。
「ごめんよ、ワカ。僕はこれから、このティーダと旅に出る。たくさんお世話になったのに、みんなに挨拶が出来なくて申し訳ない。よろしく伝えておいてくれ」
ワカは、涙を流している。
胸は痛むが、優しさは時に残酷だ。
「さよなら、ワカ」
ティーダは、僕を抱えると、いつかの風魔法で、海沿いを飛ぶ様に進んで行った。
それからーー
2人で旅をしながら、ちょうどいい島を探してあちこち歩いた。
ティーダは、すっかり落ち着いて、元の明るく愉快なティーダになっていった。
無理に体を求めることも無くなった。
同意の上ならあるけれど。
楽しい旅の道すがら、時々、魔物を狩ったり、簡単な依頼を受けて、お金を稼いで、生活に必要な物を買い揃えていった。
ティーダはお尋ね者だから、いつもフードを被っていた。
昔の僕とまるで立場が逆転していた。
ちょうどいい島を見つけたのは、1年ほど旅を続けてからだった。
だいぶ南にある島で、いつも温かい。
海の中にあるが、舟で岸に来れば大きな街もあり、ギルドもあってお金も稼げる。
大きな魚も釣れる。
2人で暮らすのには便利でちょうどいい島だった。
小さな漁師小屋があって、そこを改修しながら住むことにした。
決して贅沢は出来ないけれど、僕達はそこで暮らすことにした。
いつかのように、2人で酒を飲みながら、いつまでも笑い合っていると、時間があっという間に過ぎた。
僕達の罪は償うことなんて、きっと一生かけても出来ない。
ティーダは一生お尋ね者で、僕達は人の影でひっそり生きて行く。
だから、僕達は、お互いを求め合う。
涙を流しながら、月の下で愛し合う。
失った悲しみ、苦しみ、後悔も共に抱き締めながら。
僕にはやっぱり、愛なんてよく分からないけれど、もし誰かを愛することがあるなら、きっと相手はティーダだろう。
「きれいだ、アルト」
「ティーダもね」
2人で涙を拭い合い、深く口付ける。
ここまで、読んで頂いた皆様、本当にありがとうございました。
初めての小説で、右も左も分からず、駄文ですが、お付き合い下さり、本当に感謝しかありません。
ありがとうございました。




