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旅

ごめんなさい

明日、アルトと結婚する。

明日でアルトは15になる。


とうとう、ここまで来た。


アルトに気付かれないよう気を配りながら、何度も追手を葬って来た。


迂回して奴らの目を欺きながらの旅路は、過酷だっだ。


だが、アルトの寝顔を見ると、疲れは全て吹き飛び、幸福感が体中を駆け巡る。


この幸せの為なら、悪魔にだってなれる。

地獄に行くとしても、本望だ。



中央に入ると、早速知り合いに会った。

「なんだ、ティーダじゃねーか」


気さくに話しかけてくるコイツは、俺のことをただの貴族のぼんぼんだと思ってる。


「なんだよ、リスル。ちょっと見ない間に肥えたな」


リスルも貴族で、脂物ばっかり食べてるから、太ってツヤツヤしてる。

悪い意味で。


「ふん。カスカーレはろくに食べ物にもありつけて無いんじゃないか。貧相だぞ」


俺のことを、いつも通り貧相だと揶揄して、去っていく。


ああいう奴、大好き。


毒にも薬にもならないって最高。



アルトを連れて教会へ真っ直ぐ向かう。


最近、アルトは余り話さなくなった。

笑わなくなった。


こんな旅暮らしじゃあ、仕方ない。


早く定住地を見つけなきゃ。


教会に着いて、神父に話をつける。

というか、ぶっちゃけ金を渡す。

ぼーっとどこかを見ているアルトを定位置に立たせて、ハイとだけ答えてもらう。


ごくごく簡易的な式をあげ、誓約書にサインをする。

ドレス着せてあげられなくてごめんよ。

落ち着いたら、もう一度、立派な式を挙げよう。

そう心に誓いながら、俺と共にアルトの名前が書かれた誓約書を見て、涙が出た。


神父に誓約書を受理してもらい、夫婦のプレートを受け取る。


これがあれば、俺たちが夫婦だと証明される。


他の国へ行っても、だ。


教会から出ると、俺は感激の涙で前が見えなくなった。


アルトが心配して俺に声をかけてきた。

久しぶりにアルトから声をかけられた気がする。


「大丈夫?」


優しいが、どこか冷たいアルトの声。

最近は、夜の声しか聞いてなかった。

今日は普段のアルトの声が聞けた。

それだけで、俺は完全復活した。


こんなところに長居は無用。


さっさとここから出よう。


アルトを抱き上げて、走り出す。


もう少しで門が見えるところまで来て、衛兵に囲まれた。


その後ろには、リスル。


「なんか分からないけど、お前を見つけたら通報するように国王様から通達があったんだ。お前、貧乏だから盗みでもしたのか」


リスルが笑って俺を指さしている。


「盗みなんてしないさ。これから新婚旅行なんだ。悪いがどいてくれないか」


にっこり笑って、衛兵達の頭上を飛んで行く。

風を操り、遥か上空まで飛ぶと、そのまま外壁を超えた。


そんなに長くは飛べないが、この程度なら余裕だ。


出口から、わんさか衛兵やら警備兵やらが追いかけてくる。


俺に追いつけるなら、がんばれ。


「アルト、つかまってろよ」


アルトに負担をかけてしまって申し訳ないが、俺は風魔法を使い、馬車の3倍から4倍の速さで走り出す。

山は文字通り飛んだ。

帝国随一の魔法と身体能力を誇るカスカーレ家でも、俺に追い付く者なんてそもそも存在しない。

もう、俺の両親は諦めているだろう。

両親や家族は、国に捕らえられたとしても、簡単に逃げ出せる能力を持っている。

そのうち、どこかで会うかもな。


そのまま隣国との国境近くまで来た。


抱き抱えていたアルトの顔が青い。

通常の人間なら、意識を失っていてもおかしくないが、さすがアルトは起きていた。


国境は森の中を通って超えることにする。


静かに森の中に入り、アルトを降ろす。


カタカタと震えるアルトに謝る。


「ごめんな、アルト。恐かっただろう」


なだめて、優しく抱きしめる。


震えは収まらないが、アルトは大丈夫だ、1人にして欲しいと言う。


まあ、アルトがどこに居ても分かるから、少しくらい構わない。


何せ、俺たちは夫婦になった。


もう、何も俺たちを引き離せない。


森の中に泉があり、アルトは少しの間、泉を見て過ごしたいと言ってきた。


俺はその間、周りを見回ってくることにした。


危険なものが無いか、調べて何かが入れば分かる結界の札をあちこちに貼る。


これで、魔物も人も、俺たち以外は入って来れない。

ハッピーエンドにはならないかも?

うーん?どうする?

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