俺のもの
あちゃー
隣で美しい嫁が寝ている。
正確には、まだ結婚してはいないけれど。
まだアルトが15になっていないから。
夕食を食べてから、先程まで、ゆっくり、じっくり、余すところが無いよう堪能していた嫁の寝顔は神のように美しい。
こんなにきれいな存在が、俺のもの。
そう思うと、これから起こることにも、何も迷いは無かった。
ただ、アルトが俺の側にいてくれさえすれば。
ただそれだけで、全て俺が片付ける。
アルトには、指1本触れさせない。
今はまだ、気付かれていないだろう。
職場には、1週間の休暇届けを出してある。
同僚には、しばらく旅行してくる、気が向いたら帰ってくる、と冗談交じりに言ってある。
隊長は顔は怖いが、根は優しくていい人だ。
俺が中央に里帰りすると言ったら、泣いていた。
隊長もホームシックなんだろう。
仕事は気にせすゆっくりしてこいと、背中を押された。
元々、あって無いような仕事。
人も足りている。
1人いなくなっても、それほど皆、気にとめない。
誰も探さない。
アルトの店は休みの看板。
常日頃から引きこもっているアルトが、数日出てこなくても不思議に思う者などいない。
そもそも俺以外との関わりなんて無かった。
街には、俺の他にもアルトの監視役はいた。
当然だ。
俺がカスカレート家の者とはいえ、国を揺るがすかもしれない重大任務。
万が一のことがあったら取り返しがつかない。
いわゆる裏の同僚を、アルトの家の玄関で朝のお別れをしてから、再び会うまでの間に、片付けた。
悪いが、俺とアルトの幸せの為に犠牲になってもらった。
不思議と罪悪感なんて全く無かった。
むしろ、ありがとうと言いたい。
死ぬ前に、彼に伝言を国王に向けて送ってもらった。
「当該人物、危険要素なし。怪しい動きあれば、即座に報告する」
つまり、怪しい動きが無ければ、いつまでも亡くなった彼から報告は無い。
さすがに彼の魔力を再現することは出来ないから、バレるまでの時間稼ぎだ。
彼からの報告が上がらないことに不信感を抱き別の者が手配される日までが、俺たちに与えられた猶予だ。
俺からは今も継続して、嘘の報告をあげている。
どれも、取るに足らない情報ばかり。
ポーションの販売が上手くいっている、友人と食事を楽しんでいる、など普通の人の日常を日記のように送っている。
アルトに危険が無いこと、これ以上観察しても意味が無いことを国王に知らせるため。
このまま時が止まればいい。
そう願いながら、アルトの額にキスを落とす。
ティーダ、悪者になってくよー。
アルト逃げてー




