さよなら
あー
「ん?俺の仕事?」
それから何日かして、ティーダは家で夕飯を食べていた。
いつものように酒をガブガブ飲みながら。
美味い美味いと、上機嫌で食べて飲んでいる。
その様子に、にこにこと笑いながら、僕は冷静に見ていた。
「そんなん街の衛兵なんて、たかが知れてるだろ。街の安全のための見回り、犯罪者を捕まえる、そんなとこだ」
いつもと変わりなく話すティーダに不自然さは無い。
「ティーダだけの特別な任務は?」
「は?なにいってんだ?」
いぶかしむように、僕の顔をのぞき込む。
「ティーダが他の衛兵と違うことくらい分かるよ。僕に近付いたのは、なんのため?」
ティーダの顔に怒りが浮かぶ。
「俺はお前と仲良くなりたかっただけだ!なんだよ、それ!冗談でも気分悪いぞ!」
酒瓶をテーブルに荒々しく置く。
きっと嘘を言っていないのは分かる。
でも、真実も全て言っているわけでもない。
「ティーダ。これは真剣な話しなんだ。僕は、君を信頼してる。でも、答えによっては、今日で君とは二度と会えなくなる。本当のことを話して欲しい。僕は君を失いたくない」
真っ直ぐティーダの目を見て乞う。
頼むから、僕は君の特別だと信じさせて。
一拍置いてから、ティーダは諦めたように話し出した。
「俺が他の衛兵と違うとしたら、それは生まれだ。俺は国王の影の家に生まれた。国の為に働くことを幼い頃から叩き込まれた。こんなんでも、中央に戻れば、案外人気者なんだぜ」
少しおどけたように話して、それからゆっくり息を吐いてから続きを話し出す。
「でも、俺は俺だ。」
しっかり僕の目を見て、言い聞かせるように。
「アルトの前にいる俺は、他の誰でもない。俺は、お前の側にいたくて、こうしているんだ。お前と話して、飯を食って、酒飲んで寝る。それが俺の今の幸せなんだ」
ティーダは、僕から一切視線を外さずに、僕の返事を待っている。
僕の方が根負けした。
「そうだな、ティーダはティーダだ。こんなろくでなしに、僕の監視なんて出来るはずないものな」
そう言って、ティーダのコップに酒をついだ。
ほんの少しだけ、ティーダの視線が泳いだが、すぐ笑いに変えた。
「俺様に向かって、そんなこと言っていいと思ってんのか?まったく、何様だ。俺様が弱いのは、将来の嫁様だけなんだぞ」
笑ってそう言うティーダの目は、ほの暗かった。
それからはバカ話しをして、いつも通り飲み過ぎたティーダは、僕の寝台に寝た。
僕の手首をいつもより強く掴んで。
分かっている。僕が、ここから居なくなることを。
なんで僕に監視がついたのかは、分からない。
そんな情報知りたいとも思わない。
でも、ティーダなら、、、いや、よそう。
ティーダにとって、これは仕事なのだ。
国王の影は、国王を裏切ることは出来ない。
それを教えてくれただけでも、僕は嬉しかった。
そっとティーダに口付ける。
顔を離すと、ティーダは目を見開いていた。
信じられないものを見る目で僕を見ている。
「ロマンチックじゃないね、君は」
くすっと笑い、もう一度キスをする。
ティーダが、僕の頭を抱えて、食い尽くすように、むさぼるように、僕の唇を味わった。
それから僕は、服を脱ぎ捨て、ありのままの僕を見せた。
月明かりの中で僕を見るティーダは、潤んだ目で僕を見ていた。
「美しい、、、きれいだ、、、僕の神、いや天使、僕のものになって」
僕の全身に口付けながら、うなされたように言い続けるティーダに、胸が甘く苦しくなる。
「きっと幸せにするから。僕のお嫁さんになって」
足の指先まで口に含みながら、プロポーズをするティーダ。
ほんとロマンチックじゃない。
それでも僕は、全身をとろとろに溶かされて、どこまでが僕か彼か分からなくなるくらいに甘く、切なく、ティーダの全てを受け入れた。
寒いー




