涙なんて流さない
なーみだくん
ティーダの腕の中でまどろむ。
幸せだ。
温かい。
このままでいいじゃないか。
そう僕の中で、僕が言っている。
僕はティーダが好きだ。
ティーダも、僕を好きでいてくれている。
中央へ行けば、同性でも結婚出来るって。
僕と結婚したいと言ってくれた。
きっと幸せに暮らせる。
お金の心配も無い。
何も問題無いじゃないか。
そう、知りたくないことには蓋をすれば、全て上手くいく。
でも、僕の中で、もう1人の僕が泣いている。
『ちがう、君はティーダを愛してなどいない』
『君は安定した暮らしが欲しいだけだ』
『それにティーダに君を監視するよう指示した者がいるはずだ。これには何か理由がある。君が知ろうとしない、重大な理由が』
僕は、自分の声が聞きたくなくて耳を塞ぐ。
ティーダが優しく僕の頭を撫でてくれた。
安心する。この籠の中で囚われていられたら。
でも、と深い溜息を吐く。
僕には、それは出来ない。
自分の心の声を無視するのは、今世ではしたくないんだ。
だから、この温かく安心出来る最高の籠からは抜け出さなきゃ。
朝になり、寝台から抜け出した僕は、朝ご飯を作る。
いつものように、でもいつもより気恥しそうに、ティーダが遅れて起きてきた。
僕の体を気遣いながら、口付けをする。
まるで恋人同士だ。
朝食の間も僕は笑顔を絶やさない。
ついでに簡単な弁当を作ってティーダに持たせてやる。
ティーダは、顔を赤くしながら、興奮して叫んだ。
「はっ!初めて嫁から弁当を作ってもらった!」
僕は嫁じゃないけど、喜んでくれているから、僕も嬉しくなった。
胸がずんと重くもなった。
他の衛兵にも見せびらかしながら食べる、と弁当の包みを持って仕事へ行くティーダを、玄関で見送る。
さながら新婚夫婦だ。
そうしてスーと僕は家を出た。
さよなーらー




