そんなこんなで
水
そんなこんなで、今、俺の顔を覗き込むのは、魔王。
本当は目が覚めてるけど、恐くて目が開けられない。
目玉えぐられそうで。
冷や汗だか脂汗だかが、体中から吹き出しているが、俺は微動だにしない。
いや、出来ない。動けば死あるのみ。
すると横から、鈴の鳴るような声が聞こえた。
「スー、僕はギルドに行って依頼もらってくるから、そいつよろしくね。起きたら、パンでも食べさせて」
えええーーーーっっこの魔王と二人きり!?
ちょっと待って、そこの天使!
「主、この者はすでに目覚めています」
脂汗どころじゃなく、心拍数がはね上がった。
口から心臓が出たと思った。リアルに。
「え、そうなの?おーい、おにーさーん。大丈夫?死にそう?水飲める?」
俺は、全神経を集中させながら、必死に瞼を上げた。
目の前が、魔王から天使に変わっていた。
ほっとした顔になった天使が
「良かったーとりあえず生きてる。水、飲む?」
かわいく首を傾げて聞いてくる。
喉はカラカラだった。脂汗も冷や汗もかいたし、長い時間、飲み食いしていないことは確実だった。
声を出そうにも、上手く出ない。
体を起こすことは、もちろん出来ない。
俺が口を僅かにパクパクさせるのを見て
「あーしゃべれないかー、あんなに血吐いてたもんね。起き上がるのも、無理そうだね。ちょっと待ってて」
天使は、欠けた木の椀から水を口に含むと、素早く俺の口に水を流し込んだ。
え?
え??
ええええええええええーーーーー!?!?!?
目が点て、こういうこと。
頭がパニックのまま、とりあえず水を飲み込む。
喉が、ヒリヒリと焼け付くようだか、何とか飲み込めた。
多分、血の塊も、一緒に飲み込んでる。
そのまま、数回に分けて、水を飲ませてもらう。
もう、俺の思考回路はショートしている。
「うーん、ポーションは、依頼の内容次第だな。今日は、さすがに稼がなきゃ」
天使は、魔王にあとの指示をして、部屋から出て行った。
え、この静かさ、どうしたらいいの。
俺も声出ないし、魔王は表情筋死んでるとしか思えない無表情だし。
あれ?もしかして、俺、この魔王に嫌われてる?
え、生命線握られてる?
ヤバいヤバいヤバいヤバい。
目線だけ動かして魔王を見る。
魔王は、天使が出ていったドアを見つめて、ただじっとしていた。
これ、なに?
えっと、この魔王は、天使のことが好きだったりするわけ?
飼い主の帰りを待つ番犬状態?
へー都会では、そういう関係もあるって噂では聞いてたけど、初めて見た。
この魔王がねー。ふぅーん。
そんなことを考えながら、魔王を見ていると
「水は飲みますか」
魔王が、急にこちらを見て、話しかけてきた。
あーー心臓がまた止まりそうだった。
ほんと、体に悪い顔してる。
とりあえず、僅かに頷く。
魔王は、欠けた木の椀を持ってきて、水を俺に飲ませようと、頭の下に手を差し入れて、、、
ちょちょちょっ
待って!ちがうって!ちがうーーー!!!
いやーーーーー!!!!
魔王が口移しで水を飲ませてくれたところで、意識が途切れた。
水って生きるのには大切




