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第95話:イベント・トリガー(見極め)の難しさと、ハードウェアの重力適応特訓

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【真・ダンジョン 第一階層・アース・エリア(第4ループ)】

「この超重力は、上から下へ振り抜く動作において、武器の重さと速度を何倍にも引き上げるバフ(仕様)よ!!」


ミクが実戦の中でその真のロジックを掴み取ったことで、『三律の連環』の亀の陣形(コンテナ構成)は、完全な防衛・殲滅システムとして機能し始めた。


「アリア、ユリウス、ルカさん! そのまま周囲一帯への絨毯爆撃ブロードキャストを継続して! 物理組は一歩も動かず、魔法の網目を抜けてきた敵だけを叩き落として後衛を護るのよ!!」


ミクの指示通り、中央の魔法組が重力に関係なく放てる極大魔法を乱れ撃ちにし、ストーム・ウルフの群れを次々と焼き尽くしていく。

そして、魔法の爆炎を掻い潜って陣形へと肉薄してくる数匹の撃ち漏らし(エラーパケット)に対し、周囲を囲む物理組が『重力に乗せた上からの振り下ろし』で迎撃する。


……だが、この「撃ち漏らしを食い止める」という物理組のタスクが、想像を絶する困難を極めていた。


「そこだァッ!!」


ヴァレリアがウルフの残像へ向けて大斧を振り下ろす。ズバァァンッ! と凄まじい衝撃波が荒野を抉るが、ウルフはコンマ数秒のタイミングの違いでその軌道をすり抜け、陣形へ飛び込んでこようとする。


「クソッ、空振り(パケットロス)だ! 当たりゃデカいのは分かってるが、タイミングが合わねえ!」

「……っ! ガストン、カバーを!」


ミクが叫ぶと同時に、ガストンが重力で超重量となった大盾を地面に叩きつけて壁を作る。


ドゴォォンッ! とウルフが激突して自滅するが、盾を構えるタイミングが僅かに遅れたことで、ガストンの巨躯が衝撃で数歩後ろへズルリと押し込まれた。


「ぐふっ……! クソ、的が絞れねえ上に、こっちの動き(レスポンス)が重力で遅れてるから、どうしたって迎撃のタイミングがブレやがる!!」


ガストンが血の混じった唾を吐き出しながら叫ぶ。

相手は音速を超える超高速プログラム。こちらは重力によってコンマ数秒の動作ラグを抱えたハードウェア。


「自ら飛び込んでくる敵に合わせて、重力と一緒に武器や盾を落とすだけ」――言葉にすれば簡単だが、それを実戦で100%の精度で同期クリーンヒットさせるには、途方もない『見極めと慣れ』が必要だった。


「ハァ……ハァ……! みんな、踏ん張って! 魔法組の詠唱が終わるまで、絶対に壁を崩さないで!」


ミク自身も、飛び込んでくるウルフに対し、重力に乗せた双剣の振り下ろしで応戦するが、空振りを連発してしまう。外れるたびに、双剣の凄まじい重量が自身の腕と腰に跳ね返り、体力を激しく消耗メモリリークしていく。


魔法組が敵の大半を殲滅してくれるとはいえ、物理組の四人は「いつ来るか分からない超高速の撃ち漏らし」を常に警戒し、超重力下で武器を構え続けなければならない。それは肉体と精神をガリガリと削り取る、過酷な耐久テストだった。


『――Wave 7/7 Cleared. アース・エリア、第4ループの処理を完了しました』


最後の一匹をアリアの火球が吹き飛ばし、システム音声が響き渡った瞬間。七人の体は、入り口(待機ロビー)へと排出された。


「ぜぇ……、はぁ……っ。な、なんとかなったわね……」


ロビーの床に、物理組の四人が泥のように倒れ込む。後衛の三人も、魔力消費による激しい頭痛に顔をしかめている。

だが、ロビーのウィンドウに表示された『残り16回』という文字を見て、全員の顔が絶望に歪んだ。


「……なぁ。魔法で削って、近づいたやつだけを重力の一撃で食い止める。戦術ロジックが正解なのは分かったがよ。これ、第5、第6って進むごとに、重力はさらに増していくんだろ?」


ガストンが、痙攣する自分の両腕を見つめながら呟いた。


「ええ。第5ループは1.9倍、第6ループは2.1倍の重力定数になるはずだ……」


ユリウスが青ざめた顔で答える。


「あのな。1.7倍の時点で、俺は盾を支えて立っているだけで膝の軟骨がぶっ壊れそうだった。……これ以上重力が増したら、いくら魔法組が削ってくれるとはいえ、俺たち外側の壁(物理サーバー)が耐えきれずに圧死クラッシュするぞ」


ガストンの言葉に、全員が沈黙した。

どんなに優れた亀の陣形ソフトウェアを構築しても、それを実行する外壁の肉体ハードウェアが重力に耐えられなければ、後衛に敵がなだれ込んでシステムは全滅する。


さらに、ただでさえ合わない「見極めのタイミング」も、重力が増せば落下速度が変わるため、より一層困難になる。


「……なら、やることは一つね」


ミクが、ゆっくりと立ち上がり、ロビーの扉を睨みつけた。


「アース・エリアを進むのは、一旦ストップよ。その代わり……私たちがこの超重力環境に『慣れる』まで、低い階層のループを使って、徹底的に身体を鍛え直す(ハードウェアをアップグレードする)わ」

「鍛え直すって……あの重力空間で特訓レベリングするってことかい!?」


ヴァレリアが目を剥く。


「そうよ。1.5倍や1.7倍の重力空間で、陣形を維持し、武器を振って、タイミングを見極める。細胞レベルでこの異常な負荷に肉体を適応させるの。重力に耐えられる基礎ステータス(土台)を作らない限り、20回のループなんて絶対に完走できないわ」


ミクの提案は、あまりにも地道で、そして泥臭いものだった。

システムの抜け道やバグ技を探すのではない。ただひたすらに、過酷な環境に己の肉体を適応させるための『超重力特訓』。


「……フッ、いいだろう。PMの言う通りだ。小手先の戦術より、最後は基礎スペック(物理)がモノを言うからな。それに、魔法を撃ち続けるための魔力量メモリも拡張する必要がある」


ユリウスが杖を握り直し、不敵に笑う。


「おうよ! 俺様の筋肉(耐久値)の限界、見せてやろうじゃねえか!」

「アタシも、この重力斧を百発百中で当てられるようになるまで、素振りを一万回やってやるよ!」


こうして、『三律の連環』の真・ダンジョン攻略は、一時的な足踏み(保守フェーズ)へと入った。

彼らは第1ループから第4ループまでのアース・エリアを『重力トレーニングルーム』として活用し、泥と汗にまみれながら、さらなる高負荷(第5ループ以降)に耐えうる鋼の肉体ハードウェアを造り上げるための、過酷な鍛錬の日々をスタートさせるのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「面白い!」「この連携、理にかなってる!」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

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明日も更新予定ですので、引き続き『三律の連環トライ・リンク』の活躍をよろしくお願いします!


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