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第91話:反復処理(Forループ)の絶望と、最適化ロジック『常時機動』の発見

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【真・ダンジョン 第一階層・待機ロビー】

完全な三次元空間(3D仮想環境)での無限防衛という、かつてない理不尽な演算負荷トラフィックを這う這うの体で乗り越えた『三律の連環』。


ポーションと十分な休息スリープモードでシステムを再起動させた七人は、再び決意を固め、あの丘の入り口から真・ダンジョンへとアクセスした。

無機質な白い空間(待機ロビー)に降り立つと、空中に浮かぶ巨大なメッセージボード(リリースノート)の表示が更新されていた。


『スカイ・エリアを20回クリアすると次のエリアに進むことができます。挑戦しますか?』

「……20回、だと……?」


ガストンが絶望的な声を上げる。


「あの吐き気を催す全方位戦闘ストレステストを、あと19回も反復処理ループしろって言うの!?」


ミクが頭を抱え、ヴァレリアも「正気かよ……」と顔を引き攣らせる。

だが、空中に浮かぶウィンドウに表示されている選択肢ボタンは、【YES】の一つしか存在しなかった。拒否権(キャンセル処理)など、この真・ダンジョンには用意されていないのだ。


「……愚痴っていても始まらないわ。アリアを取り戻した私たちのシステムが、こんなところでスタック(停止)するわけにはいかないもの」


ミクが覚悟を決め、空中の【YES】ボタンを力強くタップ(実行)した。

直後、ロビーの床が消失し、七人は再び足場のない『無限の空』へと放り出された。


『――スカイ・エリア、第2ループを開始します』


空の彼方から、再びストーム・イーグルやガーゴイルの大群が押し寄せてくる。


「行くわよ! 陣形を展開!」


ミクの号令で迎撃を開始するが、すぐに全員が違和感バグに気づいた。


「なっ……敵のスピードが上がってるぞ!?」

「装甲も硬くなってる! 私の炎が弾かれました!」


そう、これはただの反復処理ではなかった。ループを重ねるごとに敵のステータスが上昇していく『動的難易度調整ダイナミックスケーリング』が組み込まれていたのだ。


ただでさえ足場がなく、踏み込みの力(物理演算)が乗らない空間。

第一回の時と同じように泥臭く戦う七人だったが、強化された敵の群れに完全に押し込まれ、またしても限界スレスレのリソースを削り合う死闘となった。


「ぜぇ、はぁ……っ! 終わっ、た……!」


数時間後。再びギルドの床に転がり出た七人は、前回にも増してボロボロ(エラーまみれ)の這う這うの体となっていた。


その後、三度目の挑戦(第3ループ)にも挑んだが、結果は同じだった。

空間戦闘に少しずつ慣れてきているはずなのに、それ以上のペースで敵のステータス(難易度)が跳ね上がっていくため、相変わらずクリア時には全員が魔力も体力もすっからかんの気絶寸前になってしまうのだ。


 * * *

【迷宮都市・『三律の連環』の拠点】

「……ダメだ。このままじゃ、20ループを完走する前に、確実に私たちのシステム(命)が焼き切れるわ」


街へ戻ったミクは、大きなテーブルに地図や羊皮紙を広げ、ユリウスと共に頭を抱えていた。

最強の頭脳を誇るPMと魔法使いの二人で、夜を徹して対策デバッグを練っていたが、今回ばかりは有効な解決策アルゴリズムが全く思い浮かばない。


「足場がない以上、前衛の物理攻撃に『体重』を乗せられないのが致命的だ。腕力だけで斧や剣を振っても、強化されていく敵の装甲を貫通コンパイルできなくなる」


ユリウスが疲れた目を擦りながら呟く。


「かといって、魔法組の火力だけで削り切るには魔力メモリが足りない……。どうすれば、この何もない空中で『踏み込みの力(物理エネルギー)』を生み出せるの……?」


二人は対策に見当もつかないまま、時間だけが過ぎていった。

そして、明確な解決策アップデートを実装できないまま、彼らは絶望の『第7ループ』へと突入することになってしまった。


 * * *

【真・ダンジョン 第一階層・第7ループ】

「うおおおッ!! 弾き返せねえッ!」

「ガストン! 後ろからワイバーンが来てるわよ!」


第7ループともなると、敵の強さは第1ループの比ではなかった。

ガストンの大盾によるシールドバッシュすら、強化されたアーマー・ワイバーンの突進に力負けし、空中で大きく弾き飛ばされてしまう。


足場がないため、敵の攻撃を踏ん張って耐えることができない。ヴァレリアの戦斧も、空中で静止した状態から腕の力だけで振り回すため、分厚い鱗に弾かれてしまう。


「ハァ、ハァ……! みんな、持ち堪えて!」


ミクが双剣を振るいながら、必死に状況をモニタリングする。

自分たちの攻撃は軽く、敵の攻撃は重い。なぜだ? なぜ敵のワイバーンたちは、この足場のない空中で、あれほど重い一撃(高負荷なトラフィック)を撃ち込めるのか?


ミクは、自らに向かって猛スピードで突進してくるワイバーンの軌道を、スローモーションのように見つめた。

翼を畳み、一直線に滑空してくる巨体。その運動エネルギー。


(……あっ!)

その瞬間、ミクの脳内に雷のような閃き(ブレイクスルー)が走った。


「そうよ……! 敵は『空中で立ち止まって』攻撃してきたりしない! 常に移動して、その『スピード(助走)』を攻撃の威力に乗せて(乗算して)きているんだわ!」


足場がないなら、踏み込む必要はない。

自分の体を砲弾パケットに見立てて、常に最高速度で飛び回り、その移動の運動エネルギー(モメンタム)をそのまま武器に乗せてぶつければいいのだ!


「みんな、聞いて!! 戦術ロジックを根本から書き換えるわよ!!」


ミクの鋭い声が、乱戦の空に響き渡る。


「『止まって迎え撃つ』のをやめなさい! 足場がないことを逆手に取るのよ!」

「どういうことだPM!?」


ガストンがワイバーンを弾きながら叫ぶ。


「魔法組(アリア、ユリウス、ルカさん)は完全に背中合わせに密着して『固定砲台(360度タレット)』になりなさい! お互いの死角をカバーして、絶対にその場から動かないで!」

「了解だ! アリア、ルカ、陣形フォーメーション変更!」


魔法組の三人が、空中でピッタリと背中を合わせ、全方位を監視する無敵のトライアングルを形成する。


「そして物理組! 私たちはもう『盾で守ってから攻撃する』という静的なロジックを捨てるわ!」


ミクが双剣を構え、全身の魔力を推進力に変えて、ワイバーンの群れへ向けてロケットのように突進した。


「常に空中を高速移動コンティニュアス・デプロイし続けなさい! 止まれば的になる! 常に飛び回りながら、すれ違いざまに『体重とスピード』のすべてを武器に乗せて叩き込むのよ!! これがこの空間の最適解(正解)だわ!!」


ミクが超高速で飛びながら、すれ違いざまにワイバーンの首へ双剣を一閃する。

腕の力だけではない。ミク自身の『飛行速度』という莫大な運動エネルギーが乗ったその一撃は、強化されたワイバーンの硬い鱗をあっさりと両断キルした。


「なるほど! 止まって斧を振るから弾かれるんだ! アタシ自身が『空飛ぶ巨大な斧』になっちまえばいいんだね!!」


ヴァレリアがミクの意図を瞬時に理解コンパイルし、歓喜の声を上げる。


とはいえ、頭で理解してもすぐに実行できるほど甘い環境ではない。

ミクを除く物理組の三人(ヴァレリア、ガストン、ガルド)は、最初こそこの「常に移動しながらすれ違いざまに攻撃する(ヒット&アウェイ)」という未知の三次元機動ドッグファイトに激しく苦労した。


突進のスピードを殺せずに敵と正面衝突してしまったり、空振りしてそのまま錐揉み回転してしまったりと、エラー(ミス)を連発した。


だが、彼らは腐っても都市最強の『三律の連環』である。

第8ループ、第9ループ、第10ループ。

反復処理(トライ&エラー)を繰り返すうちに、彼らの身体ハードウェアは新しいアルゴリズムを完璧に学習し、最適化されていった。


そして――【第12ループ目】。

『――第12ループ、最終陣(Wave 7)。アーマー・ワイバーンの群れをデプロイします』


空を黒く染め上げるほどの、極限までステータスが強化されたワイバーンの大群。

だが、その絶望的な群れを迎え撃つ七人のシステムには、もはや一片の迷い(ラグ)も存在しなかった。


「アリア、上空60度に群れが来る! ルカ、防壁の出力を上に回せ!」

「はいっ! 『極大火球エクスプロージョン』!!」


背中合わせになった魔法組が、完璧な全方位監視(360度カバレッジ)で敵の接近を許さず、正確な迎撃プログラムを実行する。


そして、その魔法の弾幕の間を縫うようにして、四つの影が超音速の戦闘機パケットのように空を駆け抜けていた。


「ガハハハハッ!! スピードが乗ったアタシの斧は、もう誰にも止められねえよ!!」


ヴァレリアが猛スピードで突進しながら、戦斧を大上段から振り下ろす。速度×質量の暴力が、ワイバーンの重装甲を紙切れのように引き裂いた。


「盾の旦那! 俺たちは双発の推進器デュアル・ブースターだ!」

「おうよ! 止まらねえぜ!!」


ガストンとガルドは、大盾を船の舳先のように前方に構え、魔力の噴射(シールド・バッシュの反動)で一直線に敵陣へ突っ込んでいく。それはもはや防御ではなく、巨大な質量兵器(破城槌)そのものだった。


「完璧なトラフィック処理ルーティングよ!」


ミクがロードバランサとして飛び回り、四人の物理アタッカーの軌道が絶対に交差クラッシュしないよう、敵の群れを美しく切り刻んでいく。


敵のステータスは、第1ループの時よりも遥かに、絶望的なまでに跳ね上がっている。

だが、常時機動フル・モメンタムという最適解を手に入れた彼らの顔には、焦りどころか、少しの余裕(リソースの空き)すら生まれ始めていた。


「この調子で、残り8回のループ処理……一気にバグ抜き(完走)してやるわよ!!」


空というキャンバスに、七色の光の軌跡と爆炎が美しく描かれる。


『三律の連環』の究極のシステムは、真・ダンジョンの理不尽な環境変数すらも完全に己のものとし、全20回の果てしない反復処理ループの完走へ向けて、さらなる加速を始めるのであった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「面白い!」「この連携、理にかなってる!」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

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明日も更新予定ですので、引き続き『三律の連環トライ・リンク』の活躍をよろしくお願いします!


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