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第74話:『重圧の荒野』のトラフィック・フラッドと、多層防衛の完全稼働

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


第65層の機巧の廃都を無傷のまま駆け抜けた『三律の連環』の六人は、続く第66層へと足を踏み入れた。


そこは、これまでの閉鎖的な階層とは打って変わって、見渡す限りに赤茶けた大地が広がる『重圧の荒野』だった。遮るものは何もなく、ただ乾いた風が吹き荒れている。


「……随分と見晴らしがいい階層ね。トラップを仕掛ける隙間もなさそうだけど」


ミクが双剣の柄に手をかけながら、地平線を睨む。

その時だった。


ズシン……ズシン……と、大地そのものを揺るがすような重低音が響き始めた。


「……おいおい、冗談だろ?」


前方を見据えていたガストンが、顔を引きつらせる。

地平線の彼方から、巨大な土煙を上げて迫り来る黒い津波。


それは、全身を分厚い岩の装甲で覆われた巨大なサイの魔物――『ロック・ライノス』の大群だった。その数は百や二百ではない。視界を埋め尽くすほどの質量トラフィックが、一直線に彼ら目掛けて猛烈な突進を開始したのだ。


「罠も小細工もない。純粋な質量の飽和攻撃トラフィック・フラッドというわけか……! だが、これだけ距離(間)があれば、的としてはデカすぎるぞ!」


ユリウスが杖を高く掲げ、ルカが即座にその後方へ立ち、杖に濃密な魔力を集め始める。


「ルカ、奴らの足元を『水』で満たせ! 私の雷撃の伝導率バフを極限まで引き上げるぞ!」

「了解だ! アリアとの合体魔法ほど派手にはいかないが……足止めとデバフなら任せておけ! 『大瀑布の重圧ハイドロ・フォール』!!」


ルカが杖を振り下ろすと同時、サイの大群の頭上に巨大な水球が出現し、滝のような豪雨となって先頭集団へと降り注いだ。

ただの水ではない。水属性の魔力によって極限まで重く、粘度を高められた水流が、乾燥した赤茶けた大地を瞬時に「底なしの泥濘ぬかるみ」へと変え、サイたちの分厚い岩の装甲にたっぷりと染み込んでいく。


「見事だ。……泥に塗れて、黒焦げになれ!! 『紫電の暴風ライトニング・ストーム』!!」


ルカが作り出した『水(導電体)』という完璧な前処理フィルタリング

そこへ向けて、ユリウスの放った無数の雷撃が容赦なく降り注いだ。


ズドガガガガガガガッ!!!!!

凄まじい轟音。ただの雷撃であれば岩の装甲にある程度防がれていたかもしれないが、ルカの水属性魔法によって全身ズブ濡れになっていたサイたちは、雷の威力を内部まで完全に通し(ショートさせ)、先頭を走っていた数十頭が一瞬にして消し炭となって吹き飛んだ。


「よし、次は私の仕事ルーティングよ!」


魔法の着弾と同時に、ミクが赤い稲妻となって最前線から飛び出した。

彼女は正面からは突っ込まず、群れの『側面』へと超高速で回り込み、すれ違いざまに最も外側を走る数頭のサイの「目」だけを的確に斬り裂いた。


『グォォォォォッ!?』


視界を奪われ、パニックを起こした外側のサイたちが、突進の軌道ベクトルを狂わせて内側へと倒れ込む。

泥濘に足を取られていたことも合わさり、超重量の巨体が横転。後続のサイたちが次々と玉突き事故コリジョンを起こし、数百頭の突進陣形が、瞬く間に中央へとグチャグチャに圧縮されていく。


魔法による事前処理(デバフと広域殲滅)と、遊撃による負荷分散ロードバランシング


「ナイスだミク!! 来やがれクソサイ共ォッ!!」


中央に圧縮され、完全に勢いを殺されたサイの山を、ガストンが満を持して大盾で受け止める。


ガガァァァァァァンッ!!!!

凄まじい衝撃音が荒野に響き渡るが、ガストンの足は一歩も下がらない。


「盾の旦那、ご苦労さん! あとはアタシの火力メインプロセスに任せな!!」


ガストンの横から跳躍したヴァレリアが、密集して身動きの取れないサイの群れのド真ん中へ、規格外の戦斧を容赦なく叩き込む。


「木っ端微塵になりなァッ!! 『大旋風グランド・スイング』!!!」


ズゴォォォォォォォォォンッ!!!!!

圧倒的な質量を持った衝撃波が炸裂する。

一箇所に集められていたサイの群れは、分厚い岩の装甲ごとまとめて粉砕され、赤い荒野に無数の鉄屑と化して散っていった。


「……ふぅ。これで大半はスクラップね」


ミクが着地し、双剣を振って血を払う。

だが、飽和攻撃の余波は完全に終わってはいなかった。

ヴァレリアの一撃から運良く外れ、ミクの誘導からも漏れていた三頭のサイ(ストレイ・パケット)が、土煙の中から突然飛び出し、前衛の脇をすり抜けて後衛へと突進してきたのだ。


『――前方より物理接近。三体』


ユリウスのセンサーが警告を発し、ルカが瞬時に自身の周囲に水属性を応用した『物理反射結界』を最大出力で展開する。

だが、その後衛二人の前に、分厚い鋼鉄の壁が立ち塞がった。


「甘えんだよ。その後ろ(フェイルセーフ)まで通すかよッ!!」


後衛守護の要、ガルドだ。

彼は結界に頼ることなく、自ら一歩前へと踏み出し、分厚い大盾で三頭のサイの突進を真正面から『同時』に受け止めた。


メシャァァァンッ!!!

ルカの結界に指一本触れさせることなく、ガルドの放ったカウンターのシールドバッシュが、三頭のサイの頭蓋をまとめて砕き割った。


「……後方警戒、異常なし。排除完了だ」


ガルドが大盾の血を振り払い、結界を張ったままのルカに向けてニカッと笑う。


「へっ、お前さんの結界を試すまでもねえ。俺の盾がある限り、この後ろにはホコリ一つ通さねえよ」

「……ああ。頼もしい限りだ、ガルド」


ルカが結界を解き、ふっと微笑む。

後衛の属性コンボによる先制攻撃。

遊撃によるルーティング。

前衛の絶対防御と極大火力。

そして、決して結界まで敵を届かせない、後衛守護の完璧なブロック。


「……完璧ね。これなら、どんなイレギュラーが来ようと絶対に捌き切れるわ」


ミクが、サイの残骸の山を見下ろしながら不敵に笑う。

自らのタスクと属性のロジックを完全に理解し、一切の無駄なく連携する『三律の連環』。その圧倒的な処理能力は、深層の暴力すらも完全に沈黙させていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「面白い!」「この連携、理にかなってる!」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

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明日も更新予定ですので、引き続き『三律の連環トライ・リンク』の活躍をよろしくお願いします!


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