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第63話:管理者権限(ルート)の誤算と、炎の魔術師による意図的な熱暴走(サーマル・ランアウェイ)

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


迷宮の最深部、さらにその奥底に隠された不可視の空間――『中央制御室コントロール・ルーム』。


空間の中央には、無数の黒い魔力ケーブル(有線コネクタ)が這い回る巨大な魔法陣マザーボードが敷かれ、その中心で小柄な少女が宙に磔にされていた。


『三律の連環』から奪われた炎の魔術師、アリア。

彼女の体からは、絶え間なく膨大な魔力リソースが吸い上げられ、迷宮全体の魔物生成システムへと強制的に分配ルーティングされ続けている。


「……信じられん。第60層に再デプロイした『黒死竜』が、またしても完全消去デリートされただと?」


コンソール(監視ウィンドウ)を見つめていた上位魔族が、信じられないものを見るように声を荒げた。


「炎の魔術師(この小娘)をシステムから引っこ抜き、奴らの最大火力を削いだはずだぞ! なぜ、たった数時間で階層主を討伐できる!?」

「報告によりますと……奴らのパーティーに、かつて追放したはずの『重戦士』が復帰している模様。さらに、新たな女戦士の広範囲物理攻撃によって、魔法の欠損を完全にカバー(代替)しているようです」

「馬鹿な……! アーキテクチャの根本的な仕様変更を、たった数日で完了させただと!? 人間どもの処理能力(クロック数)はどうなっている!」


魔族たちが狼狽する中、空中に磔にされたままのアリアが、ふふっ、と小さく笑い声を漏らした。


「……何がおかしい、小娘」


上位魔族が忌々しげにアリアを睨みつける。彼女の顔は魔力を奪われ続けて蒼白になっているが、その瞳の奥にある『炎』は全く衰えていなかった。


「おかしいですよ。……ミクさんやユリウスさんたちが、たった一人の欠損エラーで立ち止まるわけないじゃないですか」


アリアは、自分を縛り付ける黒い魔力ケーブルをチラリと見下ろした。


「私を攫う時、殺さずに『魔力供給用の生体バッテリー』としてシステムに組み込んだ時点で……あなたたちの負け(致命的なバグ)は確定していたんです」

「減らず口を。貴様の莫大な魔力は、我々のサーバーを通して全階層の魔物生成リスポーンを加速させている。貴様が強がれば強がるほど、仲間の元へ送られる魔物の数(DDoS攻撃)が増えるだけだ」


魔族が冷酷に笑う。

どんなに強力な魔法使いでも、魔力を「吸い上げられる」ことに対しては無力だ。抵抗して魔力を抑え込もうとすればするほど、拘束具の出力が上がり、強制的な吸い上げによる苦痛が増す。それがこのシステムの絶対的な仕様ルールだった。


「ええ、知ってますよ。抵抗すればするほど痛いんですよね、このケーブル」


アリアは、ニッコリと笑った。


「だから……『抵抗する(魔力を抑える)』のはやめました」


直後。

アリアの全身から、これまでとは桁違いの、文字通り爆発的な魔力が噴き出し始めた。


『なっ……!? 貴様、自ら魔力の出力ピークパワーを全開にしたのか!?』


魔族が驚愕の声を上げる。拘束具は「魔力を吸い上げる」機能しかない。対象が自らリミッターを外し、過剰な魔力を流し込んできた場合の『安全装置ブレーカー』など組み込まれていなかったのだ。


「ユリウスさんから教わりました。魔法の本質はただのエネルギーではなく、『属性』を持った物理現象の具現化だって。……私の属性は『炎(熱)』。それを、冷却装置もなしに限界まで吸い上げ続けたら、どうなるか分かりますか?」


中央制御室の気温が、異常な速度で急上昇していく。

アリアを縛り付けていた黒いケーブルが、内側を通る圧倒的な熱量に耐えきれず、ドクドクと不気味に脈打ちながら赤熱し始めた。


『ば、馬鹿な! 魔力吸収マトリクスに異常発熱! 許容量キャパシティを完全にオーバーしています!』

『コンソールの各所でエラー発生! 魔力回路(配線)が物理的に焼き切れていきます!!』

「や、やめろ小娘! このままでは我々の中枢サーバーが熱暴走サーマル・ランアウェイを起こして……!」


上位魔族が慌ててシステムの停止シャットダウンを試みるが、もはやアリアの注ぎ込む熱量(過負荷)の方が圧倒的に早かった。


「ミクさんなら、敵のシステムに繋がれたら絶対にこうします。……『わざと過剰なリソース(熱)を送り込んで、サーバーを物理的に焼き切る(オーバーフローさせる)』ってね!!」


アリアが叫ぶと同時、彼女に繋がっていた数十本のケーブルのうち、数本が耐えきれずに「バツンッ!」と音を立てて弾け飛び、火花を散らした。


『あぁぁぁぁっ! 第61層から第64層までの魔物生成プロセス、熱暴走により強制停止ダウン! リスポーンが完全にストップしました!!』


魔族たちの悲鳴が響き渡る。

アリアは、自分を「ただの魔力タンク」としか認識していなかった管理者(魔族)たちのシステムの脆弱性(排熱処理の甘さ)を突いたのだ。


「ハァッ……ハァッ……」


限界以上の魔力を自ら放出したことで、アリアの体力も限界に近づいていた。しかし、焼け焦げたケーブルに吊るされながらも、彼女の顔には誇らしげな笑みが浮かんでいた。


(……やりましたよ、みんな。これで深層の魔物はもう湧いてきません)

自分は決して、ただ大人しく助けを待つだけの脆弱なパーツ(お荷物)ではない。

最強のシステム『三律の連環』に組み込まれた、最高出力の炎の駆動源だ。


「……さあ、どうしますか? 早く私をシステムから切り離さないと、この部屋ごと全部マザーボードごと焼き尽くしますよ?」


焦燥と混乱に陥る魔族たちを見下ろし、炎の魔術師は不敵に笑う。

彼女の放つ意図的な熱暴走サーマル・ランアウェイによって、魔族の防衛システムは完全に麻痺し、ミクたちが最深部へと到達するための『レッドカーペット』が、今、静かに敷かれたのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「面白い!」「この連携、理にかなってる!」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

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明日も更新予定ですので、引き続き『三律の連環トライ・リンク』の活躍をよろしくお願いします!


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