第51.5話(幕間):病室の安堵と、最強の冷却装置(クーラー)
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
迷宮都市の巨大な治癒院。
重症患者用の特別室で、全身をギプスで固定されたガストンは、見舞いに訪れた馴染みの斥候から、ギルドで起きた『大事件』の顛末を聞かされていた。
「……本当か、それ。あのプライドの塊だったユリウスが、ミクの下について『支援に回る』って公言したのか……?」
「ああ、本当だぜ。しかも、あいつの顔、憑き物が落ちたみたいに穏やかだった。……正直、明日にでも雪が降るんじゃねえかってギルド中が震えてるよ」
斥候の男が呆れたように肩をすくめる。
その報告を聞いたガストンは、天井を見つめたまま、しばらく言葉を失っていた。
(あのユリウスが、自分の火力を抑えて他人の指示に従う……?)
ガストンが知るユリウスは、常に余裕がなく、自身の絶大な魔力を誇示することに固執し、焦燥感に急き立てられている男だった。
ガストンはパーティーを離脱した時、彼を「臆病者」と罵るユリウスを突き放した。だが、心の底ではずっと気掛かりだったのだ。あのまま誰とも組めず、己の火力を持て余して自滅してしまうのではないかと。
「……そうか」
ガストンは、ふぅっと長く、深い息を吐き出した。
その顔には、驚きよりも、深い安堵の色が広がっていた。
「……ミクか。なるほどな。あいつの暴走(熱暴走)を止められるのは、この街で彼女だけだったってわけだ」
「おいおいガストン、なんだか嬉しそうじゃないか。お前、あいつに散々こき使われて、ボロボロにされたんだろうが」
「……あいつは不器用で、周りが見えてなかっただけの、ただの魔法バカだからな。……俺という盾の限界を理解せず、ただ火力を上げ続けた結果、システムごと焼き切っちまった」
ガストンは、ベッドの横の窓から見える、夜の迷宮都市の明かりを見つめた。
「ユリウスってのは、超高性能だが、放っておけば際限なく熱を出す『危険なエンジン』なんだ。俺たちじゃ、その熱を冷ましきれなかった。……だが、ミクという『最高の冷却装置』と、彼女が組んだ完璧な制御システム(基盤)に組み込まれたのなら。……あいつはきっと、俺たちの時とは比べ物にならない、本当の『賢者』の力を発揮するはずだ」
かつて共に死線を潜った、厄介で、傲慢で、しかし誰よりも魔法を愛していたかつてのリーダー。
彼が孤独な自滅を免れ、最も正しい場所に収まったという事実が、ガストンの心を締め付けていた重い罪悪感を、少しだけ軽くしてくれた。
「……よかったな、ユリウス。今度こそ、お前の最強の魔法で、あの黒死竜をぶっ飛ばしてこい」
ガストンは誰に聞こえるでもなく小さく呟くと、見舞いの果実を一つ手に取り、ポツリと笑った。
「さてと。俺もこんなところでいつまでも寝て(スリープモードで)いる場合じゃねえな。……あいつらが黒死竜を倒して帰ってきた時に、俺だけベッドの上じゃカッコがつかねえ」
傷だらけの重戦士の目に、再び生きるための強い光(再起動のサイン)が灯る。
『三律の連環』が起こした奇跡の波紋は、絶望に沈んでいた男の心にも、確かな希望のパッチを当てていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「面白い!」「この連携、理にかなってる!」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、
ページ下部にある【ブックマークに追加】と、
【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆のモチベーションが爆上がりします!
明日も更新予定ですので、引き続き『三律の連環』の活躍をよろしくお願いします!




