第3話:隠していた刃と、追いつくための誓い
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『三律の連環』を結成してから数週間。
三人の上層階でのクエストは、驚くほど順調に進んでいた。
「アリア、右の二匹をお願い!」
「はいっ! 『ウィンド・カッター』!」
迷宮の5階層。大コウモリの群れを前にしても、三人の動きに迷いはなかった。
ガルドが大盾で注意を引きつけ、ミクが地を這うような低い姿勢から斬り込み、逃げ道を塞ぐようにアリアの魔法が空中の敵を撃ち落とす。
危なげない戦闘運びで、彼らは次々とギルドの依頼を完遂していった。
しかし、その安定した戦いの中で、ガルドとアリアはある違和感に気づき始めていた。
(……ミクの奴、また一瞬動きを止めたな)
盾を構えながら、ガルドは鋭い視線で前衛を舞うミクの背中を追っていた。
彼女の剣は速い。だが、敵の急所を突く直前や、次の標的へ移る瞬間、ほんのコンマ数秒だけ「待つ」ような素振りを見せるのだ。
それはアリアも同じように感じていた。
(ミクさん……私が魔法の狙いを定めるまで、わざと敵の動きを遅らせてくれてる。自分のペースを落としてまで、私たちに合わせて……)
二人はクエストの帰り道、ミクがポーションの買い出しで席を外した隙に、その事実を共有した。
「やっぱり、ガルドさんも気づいてましたか」
「ああ。ミクは俺たちの反応速度や、魔法の詠唱時間にわざわざ合わせて動いてくれてるんだ。……あいつの本当の速さは、あんなもんじゃないはずだ」
以前所属していたトップパーティーでは「軽すぎる」と評価されたミクだが、その真髄は圧倒的な手数とスピードにある。しかし、彼女が本領を発揮してしまえば、まだレベルの低い自分たちのフォローが追いつかなくなってしまう。ミクはそれを理解した上で、無意識のうちにセーブをかけていたのだ。
「……悔しいですね。私たち、ミクさんに気を遣わせちゃってます」
「ああ。このままじゃ、ミクの足を引っ張るだけだ。あいつに、もう前のパーティーみたいな思いはさせたくねえ」
二人は強く頷き合った。ミクの優しさに甘えている場合ではない。自分たちがレベルアップし、彼女の本当の速さに追いつかなければならないのだと。
それからの探索で、ミクは明らかな変化を感じ取っていた。
(……あれ?)
迷宮6階層でのワーウルフ戦。
ミクが敵の側面へ回り込み、アリアの魔法を待つための「タメ」を作ろうとした瞬間、すでに炎の矢が敵の足元へと着弾していた。
「ガルド、次――」
指示を出すより早く、ガルドが前線へ踏み込み、ミクの死角から飛びかかってきた別のワーウルフを盾で弾き飛ばす。
(……二人の反応が、目に見えて速くなってる。無駄な動きが減って、私の思考とラグがなくなってきてる……?)
戦闘を終え、息を切らす二人にミクは思わず声をかけた。
「二人とも、なんだか最近すごく動きがスムーズね。私の動きを完全に読まれてるみたいで、ちょっとびっくりしちゃった」
タオルで汗を拭っていたガルドが、アリアと顔を見合わせてから、真剣な表情でミクに向き直った。
「……ミク。今日は俺たちから、頼みがあるんだ」
「頼み?」
「ミクさん、私たちに合わせて、手加減して戦ってくれてますよね」
アリアの真っ直ぐな言葉に、ミクは図星を突かれて肩をビクッと跳ねさせた。
「そ、それは……! 二人のペースを乱しちゃいけないと思って、少しだけ歩調を合わせていたというか……!」
慌てて弁解しようとするミクを、ガルドが手で制する。
「気遣ってくれてたのは分かってる。でもな、それじゃ俺たちのパーティーはこれ以上強くなれない。……ミク、これからは一切の加減をせず、あんたの全力で動いてほしいんだ」
「でも、私が急にペースを上げたら、二人の負担が……」
「負担なんて上等ですよ!」
アリアが力強く一歩前に出た。
「私たち、ミクさんの本当のスピードについていけるように、必死でレベルアップします! ミクさんが存分に戦える場所を、私たちでちゃんと作りますから!」
「だから、俺たちを信じて、あんたの全力の剣を見せてくれ」
二人の真剣な眼差しに、ミクは言葉を詰まらせた。
前のパーティーでは「お前ではついてこれない」と切り捨てられた。だが今の仲間は「自分たちが追いつくから、全力を出してくれ」と言ってくれている。
胸の奥が熱くなり、ミクは小さく息を吸い込んだ。
「……分かったわ。でも、本当に容赦しないからね? 息が上がるまで振り回してやるんだから」
「へっ、望むところだぜ!」
「食らいついてみせます!」
照れ隠しに笑うミクに、二人も満面の笑みで応えた。
「それじゃあ、今日はもう一階層下まで行ってみましょうか。私の『本気』、見せてあげるわ」
枷を外した女剣士と、それに食らいつくことを誓った仲間たち。
確かな信頼で結ばれた『トライ・リンク』の新たな連携が、迷宮の奥深くへと確かな足跡を刻み始めていた。
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