第2話:残響と、新たな足跡
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それでは、本編をどうぞ!
「――はい、確かに。パーティー名『三律の連環』、正式に受理いたしました。頑張ってくださいね」
冒険者ギルドの受付嬢が、魔法印の押された鉄製のパーティー証を差し出した。
「『三律の連環』か……。剣と盾と魔法、三つの力が合わさって回るって感じで、いい名前じゃないか!」
ガルドが快活に笑い、アリアも嬉しそうに頷く。
「はい! 凸凹だった私たちが、やっと一つになれた気がします」
ミクは手元のカードを指先でなぞりながら、密かに思考を巡らせていた。
(……名前が決まれば、次はこの三人がどう機能するかね。お互いの特性を活かせる『形』を、早く実戦で見つけないと)
しかし、ギルドの喧騒の中に混じった「ある名前」が、ミクの思考を中断させた。
「聞いたか? 賢者ユリウスの『星の導き』、もう50階層のボスを突破したらしいぞ」
「新加入の重戦士が化け物らしくてな。どんな攻撃も一歩も引かずに抑え込むんだと。……やっぱり、あのパーティーに足りなかったのは、ああいう『本物』だったんだな」
周囲の冒険者たちの言葉は、鋭い針のようにミクの胸に刺さった。
(……もう、そんなところまで。やっぱり、私がいなくなった方が順調なんだ)
ユリウスたちが着実に成果を出している事実に、得体の知れない焦燥感がじわじわと広がっていく。
「……二人とも。すぐにクエストを受けましょう」
「おう、やる気満々だな。だが、まずは準備を――」
「簡単なものでいいの。上層3階層の『発光石の採取と魔物間引き』。これなら今すぐ行けるわ。……早く、私たちも成果を出さないと」
焦りに急かされるミクの様子に、二人は顔を見合わせたが、何も言わずに頷いた。
迷宮3階層。
天井から淡い光が漏れるこの階層で、ミクはいつもより深く踏み込んでいた。
「ミクさん、早いです! 離れすぎですよ!」
アリアの制止も、今のミクの耳には届かない。
(もっと速く、もっと確実に。ユリウスさんに『私でもやれる』って証明できるくらいの結果を……!)
その時、通路の曲がり角から三匹のゴブリンが飛び出してきた。
焦っていたミクは、回避のタイミングを僅かに誤る。
「しまっ――」
たじろいだ瞬間、横から巨大な影が割り込んだ。
「させるかよ! 『シールド・バッシュ』!」
ガルドの大盾がゴブリンを弾き飛ばす。
「ミク! 周りが見えてねえぞ。ここは俺が抑える、あんたは好きに動け!」
ガルドの怒鳴り声に、ミクはハッと我に返った。
そうだ、今は一人じゃない。誰かの「駒」として動く必要もないんだ。
ミクは大きく息を吐き、地を蹴った。無理に力でねじ伏せるのではなく、自分の素早さを活かして敵を「誘導」することに集中する。
ゴブリンの一匹を挑発し、あえて隙を見せて通路の開けた場所へと誘い出した。ミクは後ろを振り返らない。ただ、自分が作ったその「隙」を、仲間が逃さないと信じて敵の横をすり抜ける。
「アリア、お願い!」
「はいっ! 『ファイア・ボルト』!」
背後から放たれた熱を帯びた閃光が、誘導されたゴブリンに直撃した。完璧な連携だった。
戦闘が一段落すると、ミクたちは本来の目的である採取に取り掛かった。
岩壁の裂け目に、青白く光る鉱石――「発光石」が固まっているのを見つける。
「あった、これですね。……わあ、綺麗」
「よし、俺が周囲を警戒してる。二人は採取を頼むぜ」
ガルドが通路の前後を睨み、盾を構える。その間にミクが短剣の背を使い、アリアと一緒に丁寧に石を削り出していく。
「あ、ミクさん。こっちの大きいのは私が魔法で少し岩を脆くしますね。……えいっ」
「助かるわ。……うん、これで規定数はクリアね」
削り出した石が袋の中でカチリと音を立てる。ただの採取作業だが、仲間と役割を分担して進める時間は、先ほどまでの焦りを不思議と消し去ってくれた。
ギルドへ戻る道中。
夕焼けに染まる街並みを歩きながら、ミクは手の中の発光石の重みを感じていた。
「……ごめんね、二人とも。ちょっと焦ってたみたい」
「気にするな。ユリウスたちの噂を聞きゃ、誰だってそうなるさ」
ガルドが豪快に笑い、アリアもその隣で微笑む。
「でもミクさん、最後はすごかったです。私、ミクさんの動きを見てるだけで、どこに魔法を撃てばいいか不思議と分かるんですよ」
二人の言葉が、ミクの胸に温かく染み渡る。
ユリウスたちのパーティーは確かに強い。けれど、今の自分には、自分の背中を預けられる、信頼できる仲間がいる。
(……そう。私は私の場所で、頑張ればいいんだ)
「よし、明日はもう一つ下の階層へ行ってみましょう。次は、もっと上手く誘導してみせるから」
「おう、受けて立つぜ!」
「はい、楽しみです!」
三人の笑い声が、暮れゆく街に溶けていった。
ミクの本当の冒険は、まだ始まったばかりだ。
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