第1話:追放された剣士と、欠けだらけのふたり
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「ミク。単刀直入に言おう。お前は今日限りでこのパーティーをクビだ」
冒険者ギルドの酒場。賢者ユリウスの冷徹な声が、喧騒の中に重く落ちた。
突然の宣告に、女剣士ミクは息を呑んだ。
「……ユリウス様。それは、どうしてでしょうか……?」
「分からないのか? 我々『星の導き』は、すでに深層を目指すトップパーティーだ。だが、お前の剣撃は軽すぎる。強力な魔物に致命傷を与えられず、討伐に時間がかかりすぎているんだ。賢者である私のパーティーの剣士として、相応しい成果を出せていない」
反論はできなかった。事実、最近のミクは深層の魔物の硬い鱗や強烈な一撃についていけず、防戦に回ることが多かったのだ。
「すでに代わりの剣士は決まっている。Sランクの重戦士だ。お前ではもう、我々の歩みにはついてこれない。……今までご苦労だったな」
荷物をまとめ、ミクは逃げるようにギルドを後にした。
悔しさと情けなさが入り混じり、唇を強く噛み締めた。
(分かっていたことじゃない……私が、あの人たちには不釣り合いだったことくらい)
翌日。ミクは一人、薄暗い迷宮の上層階を歩いていた。
落ち込んでいても生活費は稼がなければならない。上層階なら、ソロのミクでも安全に依頼をこなせる。
「よし、まずは低級魔物の討伐クエストから……」
両頬を叩いて気合を入れたその時、迷宮の通路の奥から激しい金属音と、焦ったような少女の声が響いてきた。
「ガルドさん、右からもう一匹来ます!」
「くっ、分かってる! だが、盾を構えるだけで手一杯だ! アリア、魔法の詠唱はまだか!」
「ごめんなさい、動きが速くて狙いが絞れません!」
慌てて駆けつけると、そこでは二人の冒険者が、五匹のフォレストウルフの群れに囲まれていた。
大柄で分厚い大盾を持ったタンクの青年と、後衛で杖を構える魔法使いの少女。
(タンクと魔法使い……? 前衛のアタッカーがいないじゃない!)
タンクが魔物のヘイトを集め、魔法使いが強力な一撃を放つ。それは基本の戦術だが、近接攻撃で魔物を仕留めるアタッカーがいないため、素早い狼たちの動きを止められず、完全にジリ貧に陥っていた。
「加勢します!」
ミクは剣を抜き、地面を蹴った。
ユリウスには「軽すぎる」と切り捨てられたミクの剣。だが、それは圧倒的な『手数』と『スピード』の裏返しでもある。
「シールドバッシュで少しだけ体勢を崩して!」
ミクの指示に、タンクの青年が即座に反応する。大盾で狼の一匹を弾き飛ばした瞬間、ミクの剣が閃いた。
――流れるような三連撃。
回避に特化したミクの素早い踏み込みと、急所を的確に捉えた刃が、瞬く間に二匹の狼を沈める。
「今です、魔法を!」
「はいっ! 『ファイア・ボルト』!」
ミクが残りの狼を壁際に誘導して足を止めたところに、少女の魔法が直撃する。
たった一人の前衛アタッカーが加わっただけで、歯車が噛み合ったように戦況は覆り、戦闘はあっという間に終わった。
「ふぅ……」
剣を鞘に収めるミクに、二人は目を輝かせて駆け寄ってきた。
「助かった、本当にありがとう! すっげえ身のこなしと剣さばきだな! 俺はガルドだ」
「私はアリアです! あの、あなたのような凄腕の剣士さんが、どうして一人で上層に?」
「私? 私はミク。……凄腕なんてことないわ。昨日、実力不足だってパーティーをクビになったばかりだし」
自嘲気味に笑うミクに、二人はポカンと顔を見合わせた。
「信じられない。あんなに的確に隙を突いて、俺の防御に合わせて動いてくれる前衛がいるなんて、最高じゃないか」
「はい! 私たち、昨日パーティーを組んだばかりで、どうしても前衛のアタッカーが見つからなくて困ってたんです……」
ガルドが一歩前に出て、真剣な表情でミクを見た。
「ミク。もしあんたが今フリーなら、俺たちとパーティーを組んでくれないか? あんたの剣が、俺たちには必要なんだ」
「私の、剣が……?」
必要とされないと突き放されたばかりの自分を、彼らは真っ直ぐな瞳で求めてくれている。
ミクの胸の奥で、消えかかっていた冒険者としての情熱が、再び小さく火を灯した。
「……私でよければ、よろしくお願いします」
追放された女剣士と、前衛を欠いたふたり。
不完全だったパズルがぴたりとハマり、ここから、ミクの本当の冒険が始まる。
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