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第99話:個別プロファイル(パーミッション)設定と、超機動の模擬戦(ユニットテスト)

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【真・ダンジョン トレーニングルーム(仮想検証環境)】

「……本当に、この真・ダンジョンの仕様アーキテクチャを設計した開発者(創造主)は、底意地が悪いというか、至れり尽くせりというか……」


真っ白な無機質の空間で、ユリウスがコンソール端末を操作しながら呆れたように息を吐いた。


このトレーニングルームの環境設定コンソールには、さらなる隠し機能(裏メニュー)が存在していた。それは空間全体の重力を一律に変更するだけでなく、なんと『対象者ごとに個別の重力値プロファイルを割り当てる』という、恐ろしく細やかなデバッグ機能だった。


「個人単位で重力設定パーミッションが変えられるなら、それぞれの進捗ロードマップに合わせて効率的に肉体ハードウェアを鍛えられるわね」


ミクは、軽くジャンプして自身のコンディション(稼働状況)を確かめながら微笑んだ。

彼女はすでに、この空間で血の滲むような反復演習を繰り返し、【1.5倍】の超重力環境への適応キャリブレーションを一番乗りで完了させていた。1.5倍の負荷を細胞レベルで「デフォルトの1.0倍」と錯覚するまで鍛え上げられた彼女の肉体は、今や完全に一段階上のスペックへと進化バージョンアップを遂げている。


「さて、私以外の六人は現在【1.3倍】の重力負荷で設定しているわ。今日は私が『超高速で突っ込んでくる魔物エラーパケット』の役をやるから、本番さながらの模擬戦ユニットテストを開始するわよ!」


ミクが両手に木製の双剣(テスト用モック)を構え、獰猛な笑みを浮かべた。


「ガハハッ! PM自らがテストツールになってくれるたぁ、ありがたいね! アタシらの亀の陣形(コンテナ構成)の絶対防壁、とくと味わいな!」


ヴァレリアが木製の大斧を担ぎ、ガストンとガルドが分厚い練習用の盾を構えて、魔法組の三人を中央に庇う鉄壁の円陣を組む。彼らには1.3倍の重力がのしかかっているが、連日の特訓の成果により、その足取りはかつてのように崩れることはない。


「行くわよ……! 処理落ち(ラグ)したら、容赦なく叩き斬るわ!」


ドンッ!!

ミクが白い床を蹴った瞬間、爆発的な破裂音が響いた。


「なっ……!?」

「消え……ッ!?」


盾を構えていたガストンとガルドが、目玉を飛び出させて驚愕する。

ミクの姿が、完全に「消失」したのだ。


1.5倍の重力で鍛え抜かれたミクの脚力ハードウェアは、1.3倍の空間においては、文字通り『ストーム・ウルフ』の超高速機動モーションブルーを完全に再現、いや、それすらも凌駕するほどの圧倒的なスピード(スループット)を叩き出していた。


「遅いッ!! バックエンドの保護が甘いわよ!!」


ヒュンッ!!

ガルドの盾の死角、ほんの僅かな隙間(脆弱性)を突いて、ミクが音速で背後に回り込む。


「しまっ――」

「『防壁ファイアウォール』展開!!」


ルカが青ざめながら瞬時に結界を展開するが、ミクの木剣は結界が張られるコンマ数秒のラグを正確に突き、ルカの首筋でピタリと寸止めされた。


「……はい、今ので後衛サーバーはダウンね。ユリウス、アリア! 私の軌道に合わせて広範囲魔法(の代わりの魔力弾)を置いておくって言ったでしょ! 詠唱コンパイルの開始が0.2秒遅いわ!」

「くっ……! は、速すぎる……! 視覚情報の処理が全く追いつかない!」


ユリウスが冷や汗を流しながら杖を構え直す。


「もう一丁行くわよ!!」


ミクは再び残像を残して跳弾バウンスするように空間を駆け回る。


「来やがれェ!! そこだァッ!!」


ヴァレリアが、ミクの軌道を予測して重力に乗せた大斧を振り下ろす。しかし、ミクはその凶悪な落下軌道を紙一重のステップで見切り、斧が床に叩きつけられた硬直(戻りのディレイ)を突いて、ヴァレリアの腹部に強烈な蹴り(モック攻撃)を叩き込んだ。


「ぐふぅッ!?」

「ヴァレリア! 振り下ろす見極め(イベント・トリガー)は良かったけど、外した後のリカバリ処理が全く組み込まれていないわ! バグだらけよ!!」

「ぜぇ……っ、はぁ……っ! PMの野郎、完全に教官デバッガーの顔になってやがる……!」


ガストンが盾の裏で息を荒げながら、悪態をつく。

1.3倍の重力に耐えながら、超高速で飛び回るミクの攻撃を捌き、カウンターのタイミングを合わせる。それは魔物と戦うよりも遥かに精密で、絶望的にハードな負荷テストであった。


「……なぁ、ユリウス」


ガストンが、盾を構えたまま後ろの魔法使いにボソリと呟いた。


「俺たち、この狂った環境でひたすら基礎スペックを上げてるわけだが……。もしこの状態で『旧迷宮(通常の1.0倍)』に戻ったら、どうなると思う?」

「……考えるまでもないさ」


ユリウスが、息を切らしながらも不敵な笑みを浮かべる。


「今のミクの異常なスピードを見たか? あれは魔法による加速バフじゃない。純粋な肉体のベアメタルだ。……あの『アニマルズ』の獣人たちですら、今のミクの機動力には絶対に追いつけないだろうね。そしてガストン、君たち物理組の筋力もだ」

「違いねえ。通常重力でこの大盾を全力でぶつけたら、階層ボスだろうが『魔剣神』の魔剣だろうが、正面から粉砕オーバーライドできる自信があるぜ」


真・ダンジョンの理不尽な超重力。

それは一見すると絶望的なトラップ(罠)に思えた。だが、この極限環境を「特訓の場」として利用し、完全に適応してしまった暁には――彼ら『三律の連環』は、機動力においては最速の『アニマルズ』を凌駕し、火力・防御力においては重火力の『魔剣神』すらも単なる物理(基礎スペック)で圧倒してしまう、正真正銘の『バグキャラ(規格外)』へと進化してしまうのだ。


「よそ見してる暇はないわよ! 次のトランザクション(波)が来るわ!」


ミクの容赦のない檄が飛ぶ。


「うおおおおッ!! 絶対に食い止めてやる!!」

「アタシの超重力スイング、今度こそ当ててやるよ!!」


最強の七人は、自らが旧世界の常識(レガシー環境のパワーバランス)を完全に破壊するほどの化け物へと変貌しつつあることなど意に介さず。


今はただ、眼前の超重力を制覇し、この未知の迷宮(バージョン2.0)を踏破するためだけに、汗と泥にまみれた果てしない模擬戦(デバッグ作業)を熱く、そして楽しげに繰り返すのであった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「面白い!」「この連携、理にかなってる!」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

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明日も更新予定ですので、引き続き『三律の連環トライ・リンク』の活躍をよろしくお願いします!


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