139 朝敵
1547年12月初旬。
周防・大内館 広間。
楠予家が大内領へ侵攻したとの急報が大内家に届くと、広間の空気は一瞬で凍りついた。
陶隆房が立ち上がり、怒声を放つ。
「だからわしは言うたではないか! 楠予家は必ず大内を攻めて来ると!」
内藤興盛が手を上げて宥める。
「陶殿、今は大内家の危機。楠予家にどう対応するかが肝要にござる。御屋形様をいたずらに責めても始まりませぬ」
相良武任も頷いた。
「その通り。ここをどう切り抜けるかこそが肝要」
隆房は相良を睨みつける。
「貴様はいつも口ばかりよ。
楠予家六万が迫っておるのだぞ!」
冷泉隆豊が義隆の前に進み出て、深く頭を下げた。
「御屋形様、もはや大友を見捨てても楠予家の進軍は止まりませぬ。ここは全軍をもって楠予家を迎え撃つほかないかと」
相良がすぐに異を唱える。
「いや、今は動くべきではござらぬ。大友家にしばらく籠城させ、楠予家を疲れさせればよい。
かつて尼子に毛利の郡山城を包囲させ、弱ったところを大内家は戦って勝ち申した。同じ手を使えばよいのです」
陶隆房が床を叩いた。
「相良、こざかしいぞ! 楠予家は尼子とは違う! 籠城など2万も残せばこと足りる。あとの4万の軍はどうするのじゃ!」
相良は目を細め、低く返す。
「……ならば陶殿が策を示されよ」
隆房は即座に言い放った。
「知れたことよ。大友義鎮が以前申した通り、幕府を動かすのじゃ。楠予家を“幕敵”とすれば、九州勢は大内に付く。同時に三好が攻めかかれば勝てる!」
相良は笑い、首を振った。
「そううまく運べばよいですな。……尼子がこの機を逃すとは思えぬ」
「貴様は誰の味方だ!」
広間がざわめく。
冷泉隆豊が間に入り、義隆に向き直った。
「御屋形様、相良殿の言も、陶殿の言も一理ございます。
御屋形様、御決断を」
義隆は扇を握りしめたまま、頷いた。
「幕府に使者を送り、三好家と手を結ぶ。この役、隆豊に任す。大友には3月の間、耐えろと伝えよ」
ーーーーー
12月中旬。
摂津国・芥川山城。
冷泉隆豊は三好長慶の前に進み出て、深く頭を下げた。
「どうか楠予家を幕府の敵として、大内家とともに戦って頂きたい」
広間にいた三好家臣たちがざわめく。
長慶は扇を閉じ、静かに隆豊を見据えた。
「……幕敵、とな」
その声は低く、しかしよく通った。
長慶の側に控える松永久秀が一歩前に出る。
「冷泉殿、大内は追い詰められておる。
楠予家と戦うは、三好に取って何の利がござるのか」
隆豊は顔を上げ、真っ直ぐに松永を見た。
「利はございます。楠予家が九州を制し、山陽へ迫れば、次に狙われるは畿内にござる」
長慶の目がわずかに細くなる。
隆豊は続けた。
「大内が倒れれば、楠予家は山陽を手に入れ、瀬戸内の制海権を握りましょう。そうなれば、堺も、京も、三好家の富も脅かされまするぞ」
長慶は静かに立ち上がり、西方――四国の方角へ扇を向けた。
「皆よく聞け。冷泉殿の言われる事は道理よ。我らは楠予家を討つ。今討たねば三好が滅ぶ。だが――幕敵だけでは足りぬ」
広間の空気が一瞬止まる。
長慶は扇を閉じ、はっきりと言い放った。
「楠予を――朝敵とするのじゃ」
家臣たちが息を呑む。
松永久秀が思わず声を漏らした。
「……朝敵、にございますか」
長慶は頷いた。
「幕府は形ばかり。だが“朝敵”となれば話は別よ。
公家も寺社も、畿内の諸勢力も、楠予家に味方すれば“逆賊”となる」
冷泉は顔を上げ、驚愕と希望が入り混じった表情で長慶を見た。
長慶は続ける。
「大内が動き、三好が動き、そして“朝廷”が楠予を敵と定めれば九州の諸将も、山陽の国衆も、皆こぞって我らの味方をせざるを得ぬ」
久秀が口元に笑みを浮かべた。
「御屋形様……それは楠予家を“孤立”させる妙策にございますな」
長慶は冷泉に向き直る。
「冷泉殿。大内家が本気で戦うなら、三好は朝廷を動かす。楠予家を“天下の敵”とするためにな」
「かたじけのうござる。されど朝廷がそのような命を果たして出しましょうか? 楠予家は伏見宮家と深く結びついておりまする」
長慶は不敵な笑みを浮かべた。
「出す。出させるための策がある……」
広間にいた者たちは、誰もが皆、長慶の策に耳を傾けた。
ーーーーーーー
京都 伏見宮屋敷に激震が走った。
邦輔王子は父の貞敦親王の部屋に駆け込んだ。
「父上! 大変です。こ、近衛稙家殿が……」
貞敦親王は扇を置き、静かに息を吸った。
「落ち着け、いかが致した?」
邦輔王子は震える声で続けた。
「近衛稙家殿が……楠予家を朝敵として奏上されました!」
貞敦親王の表情が一瞬で変わった。
「……奏上、だと?」
「はい! 今朝、近衛家より内裏へ正式に文が入り、『楠予家は大内を脅かし、西国を乱す逆臣』さらに『楠予家は伏見宮家と結び、南朝の再興を図っている大逆臣である』と訴えたとのこと……!」
貞敦親王は立ち上がり、几帳を握りしめた。
「稙家め……! 南朝などもはや形骸化すらしておらぬ過去のもの、言いがかりじゃ!」
邦輔王子は続ける。
「しかも、三好長慶が裏で金を積んだと……。三条殿の屋敷にも知らせが参りました。摂関家の奏上ゆえ、朝廷は無視できぬ、と……!」
貞敦親王の目が怒りで燃え上がる。
「皇族の姫を娶った家を“逆賊”と申すか!
恵を……我が娘を……逆賊の妻には出来ぬ!」
「さようです。このままでは恵姫も、私の娘(慶姫)も逆賊の妻になります!」
貞敦親王は歯を食いしばった。
「これは楠予家への攻撃だけではない。宮家への侮辱でもある!」
「父上……どうなさるのです」
貞敦親王は深く息を吸い、静かに、しかし鋭く言い放った。
「三条公頼を呼べ。
宮家として“反対の奏上”を行う」
邦輔王子は息を呑む。
「反対の……奏上……!」
「そうだ。摂関家が奏上したなら、皇族が“否”を突きつけねばならぬ。
宮家が沈黙すれば、恵も、楠予家も、そして宮家までもが滅ぶ」
貞敦親王は扇を握りしめた。
「稙家に思い知らせてやる。宮家を軽んじた報いをな」
ーーー
三条公頼は、伏見宮家の使者からの急報を受け、夜半にもかかわらず駆けつけた。
「親王様、すでに“奏上”は内裏に通っております。
近衛殿は三好と通じ、“即日裁可”を狙っております」
貞敦親王の顔が険しくなる。
「……稙家め。宮家を踏みにじる気か」
公頼は深く頭を下げた。
「急ぎ“反対奏上”を整えねばなりませぬ。明日の朝議に間に合わねば、綸旨が出てしまいます」
伏見宮家の空気が一気に張り詰めた。
ーーー
夜明け前から動いた伏見宮家の一行は、三条公頼を先頭に、急ぎ内裏へ向かった。
冷たい冬の空気の中、公頼は馬上で唇を噛む。
(間に合わさねば……楠予家も、宮家も終わる)
だが――清涼殿の前に着いた瞬間、彼らは異様な静けさに気づいた。
侍従が近づき、深く頭を下げる。
「……伏見宮家の御一行、でございますな」
三条公頼が一歩前に出た。
「うむ。近衛殿の奏上に異議を申し立てる。朝議に通せ」
侍従は苦い顔をした。
「……申し訳ございませぬ。すでに朝議は終わりました」
公頼の顔色が変わる。
「終わった……? まだ巳の刻にも至らぬぞ!」
侍従はさらに声を落とした。
「本日は……夜明けと同時に朝議が開かれまして」
貞敦親王が低く問う。
「何故じゃ。朝議は辰の刻と決まっておろう」
侍従は震える声で答えた。
「……近衛稙家殿が、“西国大乱につき急務”と強く申し立てられ……三好殿の使者も同席しておりました」
三条公頼の背筋が凍る。
(……三好と近衛が、夜のうちに動いたのか)
侍従は深く頭を下げた。
「そして……すでに綸旨は下されました」
貞敦親王の扇が、ぱきりと音を立てて折れた。
「な……何と申した?」
侍従は震えながら文を差し出す。
「『楠予家、朝敵と定む』……との綸旨にございます」
伏見宮家の一行は、その場で言葉を失った。
恵姫と慶姫の姿が、脳裏に浮かぶ。
三条公頼は拳を握りしめた。
(……間に合わなかった。
近衛稙家め、⋯⋯三好の手先になり、宮家を出し抜いたか)
貞敦親王は静かに、しかし震える声で言った。
「……稙家。宮家を愚弄したな。この恨み、決して忘れぬ⋯⋯」
冬の冷たい空気の中、伏見宮家の怒りと屈辱だけが、重く、深く、内裏に残った。
ーーーーー
綸旨が出た翌日。
堺の町には、早くも楠予家が朝敵になったとの話が伝わっていた。
堺・南荘の会合衆屋敷。
若い商人たちが集まる広間は、朝からざわめきが止まらなかった。
「楠予家が……朝敵……?」
「三好が朝廷を押さえたのか」
「いや、近衛家が奏上したらしい」
「伏見宮家の姫を娶った家が逆賊とは、どうなっているのじゃ」
若手の会合衆・今井宗久は、緊張した面持ちで周囲の議論を聞いていた。
年長の会合衆・津田宗達が扇を叩き、声を上げる。
「静まれ! まずは“堺の安全”を第一に考えねばならぬ。三好殿が朝敵と定めた以上、楠予家との取引を禁ずるべきじゃ!」
津田に近い者たちから賛同の声が上がる。
「そうだ! 三好を敵に回すわけにはいかぬ!」
「堺は畿内の町、三好の機嫌を損ねれば潰される!」
だが、すぐに反対の声も上がった。
「待て! 楠予家との交易は莫大な利益を生んでいるのだぞ!」
「そうじゃ。伊予の絹、瀬戸内の塩、楠予の首飾り……楠予家を切れば堺の富が半減する!」
「三好は信用ならぬ。それに楠予家が勝てば、堺はどうなる!」
まだ若い今井兼員(後の宗久)も、口を開いた。
「津田殿。楠予家は朝敵となりましたが見誤ってはなりません。かつて北条義時公も、足利尊氏公も朝敵となりましたが勝利されました」
宗達は宗久を鋭く睨んだ。
「若造が口を挟むな。堺が生き残るには“三好に従う”しかないのじゃ」
宗久は唇を噛んだ。
(……だが、楠予家を切れば堺の富は枯れる。三好に従えば安全は得られるが、堺は三好の財布になるだけだ⋯⋯)
広間は二つに割れた。
• 三好に従い、楠予家との取引を禁ずるべき派
• 利益を守るため、楠予家との交易を続けるべき派
議論は激しさを増し、ついに宗達が立ち上がった。
「ここに代表の権限を行使する。
半数の支持により会合衆全体としての決定を――“朝敵、楠予家との取引を禁ずる”とする。よいな!」
賛同の声が広間を揺らし、反対派の商人たちは顔を歪めた。
「やむを得ん。楠予家は強いとはいえ田舎侍、勝てる見込みはない」
「そうじゃのう」
「本当にそうか? この決定、果たして正しいのか……」
「目先の銭など諦めろ! 我らは官軍のお味方をする! なにが間違っておるのじゃ!」
若い宗久は拳を握りしめた。
(⋯⋯津田殿、それで本当によいのか。堺はこの先どうなるのだ……)
ーーーー
綸旨が出てから三日後。
池田城・広間。
堺の会合衆・油屋常言は、息子の宗次を、密かに早舟で伊予へ渡らせた。
そして次郎に、上方の情報をいち早く報せた。
次郎はすぐに源太郎に報告し、城に残る重臣たちの全てが、広間に集められた。
上座には源太郎(正継)とその嫡子・正光が並んで座る。
その周囲には玄馬、友之丞、次郎、吉田作兵衛、玉之江甚八、国安利勝、楠河昌成の七名の重臣が控えていた。
宗次は旅塵を払う暇もなく、深く頭を下げた。
「父、油屋常言より至急お伝えせよとの命にございます⋯⋯」
宗次は楠予家の重臣達の視線を受け、緊張でゴクリと喉を鳴らした。
「……堺は、楠予家との取引を禁じました。会合衆の決定にございます」
広間がざわめいた。
「堺が禁制……?」
「なぜだ、何があった!」
宗次は深々と頭を下げた。
「三日前……楠予家を“朝敵”とする綸旨が出たのです! それは三好様のご意向らしく、三好様に逆らえば堺が危ういと……」
正光が怒りで立ち上がろうとするのを、源太郎が制した。
「小聞丸、座れ」
正光は悔しさに唇を噛んだ。
「父上……おじい様が九州で戦っておられるこの今……。なぜ我らが逆賊なのです!」
玉之江甚八が怒号を上げた。
「三好め、ふざけおって! 楠予家が何をしたというのだ!」
作兵衛が低く唸る。
「……堺は“損”を恐れたのじゃ。三好に睨まれたくなかったのであろうな」
国安利勝が静かに言う。
「しかし……朝敵とは……」
玄馬が目を細めた。
「敵は大内と三好……家臣と領民がどう反応するか……」
次郎が場を明るくしようと、無理に笑った。
「朝敵となっては仕方ありません。予定より早いですが――南朝を復興させましょう!」
次郎の言葉が落ちた瞬間、広間の空気が一瞬止まった。
南朝の復興計画がある事を、何も聞いていない重臣たちが動揺する。
「……南朝を、復興……?」
国安利勝が思わずつぶやいた。
楠河が腕を組み、次郎を見据えた。
「次郎殿……正気か。南朝の再興など、軽々しく口にすることではござらぬぞ」
だが次郎は一歩も引かない。
「軽々しくなど申しておりません。
朝敵とされた以上、“朝廷に従う道”は閉ざされました。
ならば――我らが“新たな朝廷”を立てればよいのです」
甚八が目を見開く。
「……つまり、新帝を立てると?」
次郎は深く頷いた。
「はい。すでに御屋形様と楠予家一門衆はその心づもりで動いておりました。準備は整っております」
「なんじゃと!」
作兵衛は驚きで、目を見開いた。
次郎は一門衆と顔を見合わせると、皆が一様に頷いた。
「新たな帝には小倉宮家雅良・法印様になって頂きます。雅良様は、後醍醐天皇の末裔。正統な南朝の後継者にございます」
甚八が唸る。
「……確かに雅良様は真律宗の高僧として、四国と九州の各地を回り知名度がある……ま、まさかこのためだったのか! 各地で南朝の末裔の高僧が、戦死者を弔うと言って大きな葬儀を開いておったのは!」
甚八の言葉に、広間の空気が一気にざわめいた。
「……あの大きな葬儀は……この日のため……?」
作兵衛が目を丸くする。
「南朝の末裔の高僧が、楠予領の戦死者を弔う……わしらは“ありがたいことよ”くらいにしか思っておらなんだが……まさか南朝復興のための“布石”だったのか……!」
玄馬が静かに頷いた。
「そうだ。楠予家は南朝に忠義を尽くす家。南朝の復興は楠予家の悲願だ」
国安利勝が息を呑む。
「……では……本当に小倉宮家雅良法印様を“新帝”に……?」
次郎がはっきりと言った。
「はい。雅良法印様は後醍醐天皇の血を引く御方。知名度は高く、民の信頼も厚い。“新帝”として迎えるに何の不足がありましょうか!」
玄馬が続ける。
「慶姫様は伏見宮家の姫。北朝の血筋……だが雅良法印様が帝となられれば、皇太子は光継様、その正室の慶姫は皇太子妃となる。今年お生まれになった光継様と慶姫さまのお子・長寿丸様はやがて南北両朝の血を引く帝となられる。
これは……“争いの終わり”を象徴することになるだろう」
甚八たちが感嘆の声を漏らす。
「……なるほど……南朝の正統と、北朝の皇女……これ以上の“和合”はない……!」
作兵衛が腕を組む。
「では即位は早い方がよいのう、新帝が立てば民の動揺を抑えられるわ」
昌成が静かに言った。
「この道を選べば、朝廷との和睦の道は閉ざされる。もう後戻りはできませぬぞ」
広間が静まり返る。
源太郎がゆっくりと立ち上がった。
「……後戻りなど、とうにできぬ。父上は九州で戦っておられる。
堺は禁制を敷いた。京の朝廷は我らを逆賊と呼んだ。
ならば逆賊・足利尊氏に習い――我らも新帝を立てるほかない!」
そして、源太郎はっきりと言い放った。
「これより――小倉宮家雅良法印様をお迎えし、南朝を再興する。
楠予家は、その外戚として新たな天下を切り開く!」
楠河が異を唱えた。
「お待ちください! 足利は逆賊になった折、上皇様の院宣で後醍醐帝の綸旨を不当だと否定しました。ですが楠予家には逆賊を否定する皇族の支持が何もありません!」
楠河の言葉に広間に沈黙が流れた。
国安が静寂を破る。
「楠河殿! 南朝は後醍醐天皇の末裔、何の不満があるのだ!」
正光がすがる様に次郎を見る。
「次郎にい……なにか策は?」
正光の言葉に皆の視線が集まる。
(おい、ふざけんな小聞丸! 俺に聞くな! 俺はチート屋であって知恵者じゃないって何度言えば分かるんだ!)
次郎は適当に思った事を口走る。
「皇族の支持ですか……なら伏見宮家に令旨を貰えばいいのでは?」
友之丞が首を振る。
「無理だ。伏見宮家は北朝。しかも京におるのだ令旨など出せる筈がない」
次郎は笑う。
「本当にそうですか?
慶姫が皇太子妃に即位すれば、その実家の伏見宮家は間違いなく京に居場所がなくなるでしょ?」
皆が息を飲んだ。
次郎は続ける。
「慶姫だけならともかく、恵姫も楠予家に嫁いでいるのです。知らなかったなどと、言い逃れは通用しません。だから慶姫の即位前に保護すると言って連れて来ればいいのでは?」
皆がギョッとして次郎を見た。
「次郎にい、それだ! さすが次郎にいだよ!」
「お、鬼だ⋯⋯何も知らぬ宮家を⋯⋯」
(俺は鬼じゃねえよ! 提案しただけだろ! やるのはお前らだ!)
源太郎が友之丞を見た。
「友之丞。この大役を任せられるのはお前しかおらぬ。頼めるか!」
「はい! 楠予家存亡の危機、必ずや伏見宮家を伊予にお連れ致します!」
源太郎は再度言い放った。
「策は成った! 我らは南朝を再興し、新たな天下を切り開く! よいな!」
「「ははぁ!」」
次郎、玄馬、友之丞、甚八、作兵衛、国安、昌成――全員が一斉に頭を垂れた。
こうして朝敵となった、楠予家による逆襲が始まった。




