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【連載版】悪役貴族に転生したので破滅エンドを避けるために継承権を放棄したら、激重感情の美少女家臣達が曇り始めた  作者: しんこせい


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7/8

私は


 Aランクモンスターであるベヒモスと、それに伴う魔物の襲撃。

 そこから立ち直ったウェスティア村の復興がレオンハルト主導の下で順調に進んでいるという噂は、既に領都へと広まっていた。


 当然ながらその話は、領都の一等地に店を構えているベルンシュタイン商会にも届いている。

 ここ数年、ベルンシュタイン商会の業績は悪化の一途を辿っていた。


 かつて娘であるリーゼロッテに任せていた仕事を自分達でこなすとなぜか上手く商談を纏めることができず、商会の持つ影響力は年々減じ始めている。


「あいつが……リーゼロッテが動いているのか」


 そんな最中湧いてきたリーゼロッテの話。

 商会長であるリーゼロッテの父、ハインリッヒ・ベルンシュタインは心中穏やかではいられなかった。


 自分達が大変な思いをしているというのに、あの娘はその苦労も知らずに楽しく過ごしている。

 そんな状況を許せるはずもない。


「そうだ……リーゼロッテを呼び戻せばいい。こちらから頭を下げれば、彼女も戻ってきてくれるはずだ」


 今までは業腹で謝ることもできなかったが、このままいけば商会は首が回らなくなってしまう。

 彼女の方も、さすがに長年勤めた商会の危機とあってはこちらに力を貸してくれるだろう。 娘が父を助けるのは当然のことだ。

 そう信じて疑わない彼は、レオンハルトとアポイントを取るべく動き出すのであった――。



 ウェスティア村の復興が一段落した頃、公爵家の屋敷に戻っていた俺に来客があった。

 その相手は、なんとベルンシュタイン商会の当主であるハインリッヒ。

 なんでも今回の復興の際に一枚噛ませてくれと今更ながらに言いに来たらしい。


「まったく……呆れた方達ですわ。身内の恥です、本当に……」


 リーゼロッテはそんな風に軽くあしらっていたが、その態度にはどこかおびえのようなものがあった。

 なので俺はあちら側の家族水入らずでの面会を無視し、同席させてもらうことにした。




「久しぶりだな、リーゼロッテ」


「お久し振りです、お父様」


 数年ぶりに見るハインリッヒは、以前と比べるといささか痩せているように見えた。


 仮にもリーゼロッテの生家なのである程度情報は集めているんだが、どうやらベルンシュタイン商会は彼女が抜けて以降、あまり上手くいっていないらしいからな。


「なんでも最近、村の復興で活発に商いを行っているそうじゃないか。なぜうちにも一枚噛ませてくれなかったんだ?」


「……今回の取引規模は領都に店を構えているような大商会に頼むほどのものではございませんもの」


「そんなに悲しいなことを言うな、私達は家族じゃないか」


「……っ!(びくっ)」


 ハインリッヒの言葉に、リーゼロッテの肩が震えるのがわかる。


 直接聞いたわけじゃないが、彼女は実家に対して強いトラウマがあることは、一緒に過ごしていればわかる。


 以前棒グラフをさも自分のことのように語っていた時からそうだが、こいつはリーゼロッテが編み出したものや繋げてきた顧客を、全て自分のものにし続けてきた。


 そして商会のために多大な貢献をしたリーゼロッテのことを、ただ同然でこき使い続けていた。


 私達は、家族じゃないか。


 使い勝手のいい、便利な言葉だ。

 リーゼロッテが商会に居た頃もきっとそう言って、彼女のことを散々利用し続けてきたのだろう。


(こいつ、何をしにきたんだ?)


 実際のところ復興のための物資の搬入計画はほぼ全て完了しており、今更ベルンシュタイン商会が入る余地はない。

 俺からすると狙いが読めなかったが……ひとしきり話をした後に頭を下げるハインリッヒを見て、ようやくあちら側の意図がわかった。


「リーゼロッテ……すまなかった! 本当に悪いと思っている。今のベルンシュタイン商会には、お前が必要なんだ……戻ってきてくれないか?」


 ハインリッヒが頭を下げ、哀願するようにリーゼロッテのことを見つめる。

 大柄な身体からは信じられないほどに悲しそうな態度は、演技だとわかっていても信じ込みたくなるような名演っぷりだ。


「わ、私は……」


 ハインリッヒの言葉を聞いたリーゼロッテは震えていた。

 彼女の歓心を引こうと辛い現状を述べ繰り返し謝り続けるハインリッヒを、俺は冷めた目で見つめている。


 前世でもこういうやつは良く居た。

 都合が悪いとすぐにいい顔をして、調子が戻ればすぐにDVを振るうような人間のクズ。

 こいつはまさしくそういう手合いだ。

 まともに相手をする必要はない。


「リーゼロッテがこれほどの仕事を任されるようになったのも、ベルンシュタインが育ててきたおかげだろう? ずっと居てくれとは言わない、一年でも構わないから家族のためだと思って戻ってきてくれないか?」


「……」


 リーゼロッテから、いつものような元気さは消えていた。

 おそらくかつての生活を思い出しているのだろう、その目から光が消えており、ただ黙ってハインリッヒの言葉を聞くだけの人形のようになっている。


「ハインリッヒ、少し黙れ」


「なっ……」


 ハインリッヒはキッとこちらに鋭い視線を向けると、すぐににこやかな顔に戻る。

 モラハラをするやつって、こういう行動の端からカスさがにじみ出るんだよな。

 そんなやつにこれ以上リーゼロッテのSAN値は削らせねぇよ。


「リーゼロッテ、お前はどうしたい?」


「わ、私が……ですか?」


「あのデブがお前にかけている負荷のことも過去のことも一旦置いておけ。俺はお前が本心でどう思っているかが知りたいんだ」


「わ、私は……」


 こちらを見つめるリーゼロッテの瞳に映る色が変わっていく。

 そして彼女は……

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