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目の前には立派な大きな門がある。そう、ここは奴らの領土だ。
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あれから仇である領主の住んでいる首都に一人で向かった。厳密に言うと二人なのだが見えないので実質一人旅となっている。
というのもメアことメルトリーアは控えめに言っても美人だ。それも街を歩くだけで人々の視線を集めてしまいそうなほどの。それではどう隠そうとしても領主やその仲間に俺の存在がバレてしまうのが考えなくても分かってしまう。なのでどうしようかと頭を抱えていると、
「⋯⋯なら、妾の姿が見えなくすることもできるぞ?シドにも見えなくなってしまうがのぅ」
そう提案してきた。
その瞬間、
「よろしくお願い致します!!!」
凄い勢いで地面に額を押し当て土下座をした。それもジャンプ付きだ。
それを見たメアは苦笑いを浮かべていた。
ついでにこんなことも言っていた。
「シド⋯⋯お主、見た目によらず運動神経抜群じゃのぅ⋯⋯」
そんなことないと伝えたがすぐに否定されてしまった。
⋯⋯⋯解せぬ。
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とりあえず昼も近いので昼食にしようと思い、目に入った宿らしきものに入ってみた。そして目の前の異様な光景につい棒立ちになってしまった。昼食の時間なので人が多いと思って警戒していたのだがなんと客がが一人もいなかったのだ。
すると厨房の方からガタイのいい男性が出てきた。そして俺を見るなり、
「見ない顔だな。まあいいだろう。俺はここの店主だ。昼飯だろ?ちょっと待ってろ⋯」
そう言って戻っていこうとする店主をつい呼び止めてしまった。
「あの⋯⋯」
ん?と言って店主は立ち止まりこちらに振り返った。
「なんだ?」
「この街で一体何があったんですか?」
「ああそうか。よそ者だから分からないか。といっても特別何かがあったってわけでもないんだけどな。説明するとちょっと長くなるけど聞くか?」
はい。と返事をすると店主は俺の席の前に座って語り始めた。
「⋯⋯ちょっと前まではここの街は大勢の人で賑わっていたんだ。だが、今日からちょうど1週間前に王都の馬車がこの街にやってきたんだ。そこからだ⋯そこから一気におかしくなり始めた。領主様は全く屋敷から出てこなくなった。噂によれば体調を崩されたらしいんだがどうも俺には信じられねぇんだわ。あのお方はそんな柔な身体なんてしてねぇ。昔、冒険者をしていた俺にはわかるんだ。住人の元気もなくなっていって終いには冒険者が来なくなっちまった。するとどうだ。俺らみたいな飲食店や八百屋なんかは売上がほぼ0だ。⋯ったく。なにがどうなってんだよっ⋯⋯」
そういう店主の顔は焦燥感でいっぱいになっていた。それは当然、売上が全くないためだろう。
が、その顔もすぐ元に戻って俺を心配するような表情になった。
「言い忘れてたが⋯⋯坊主。この事に絶対首突っ込むんじゃねぇぞ?見りゃ分かると思うがこの街は最近不気味過ぎる。命が惜しけりゃやめとくんだ。⋯⋯これがここの店に寄ってくれた坊主への俺にできる最大のお礼だ。すまんな⋯⋯」
そう言って店主は今度こそ厨房に戻っていった。
よそ者の俺にここまで親切にしてくれた店主に「ありがとう」と小さな声で伝えた。だが、
「⋯⋯悪いな⋯⋯⋯おっちゃん。恐らくもうクビ突っ込んじゃってんだわ俺⋯⋯でも⋯⋯⋯後悔はしていない。ハハ⋯⋯。命なんて惜しくないさ⋯⋯」
そう呟いた。
それからご飯を食べて宿を出た。そして街を見回してみた。
目に映るのは人一人いない大通り、予想外の事態で売れ残ってしまった商品と表情の抜け落ちた顔をしている店主達。
「⋯⋯⋯確かに。尋常じゃない光景だな⋯⋯⋯。それに不気味だ⋯⋯」
店主の言っていた言葉を思い出してしみじみとつぶやく。
「この街で一体何が起こってんだよ⋯⋯」
誰かに投げかけるように放った質問だが当然返ってくる訳もない。
そう思っていた。
「のぅ、シドよ。さっさと用事を終わらせてこの街から出よう。この街はなんだか苦手じゃ⋯⋯」
背筋がぞわりとした。
バッと振り向くと彼女がいた。
完全に彼女の存在を忘れていた⋯⋯。
突然耳元で囁かないでもらいたい⋯⋯⋯。
そう思ってメアの事を恨めしそうに睨んでいると、
「なんじゃその目は!妾は悪くないぞ!!妾の事を忘れていたお主が悪いのじゃ!!」
必死に弁解をしていた。
彼女も故意ではなかったらしい。
でもそんなことより気になることが1つ
「なあメア。お前見えるようになっちゃってるけど?それと何か言い残すことは?」
そう。これだ。確かお願いして透明になってもらったはずだ。
後、俺はまだ許していない。
「あぁ。街の様子を見ると目立つもくそもないような気がしての。無駄に魔力を使いたくないからのぅ。あれ意外と魔力消費激しいんじゃぞ?それとな妾は悪くないと言っておるじゃろうがっ!!!!」
まあ確かに。まず人がいないから目立つにも目立ちようがないってことか。それに透明化って万能すぎるもんね。そんな技が低コストで使用できるなんてそんな都合のいい話なんてあるわけもないか⋯⋯。
それと、彼女もまだ諦めないらしい。
良いだろう。諦めるまで徹底的に言い合ってやる。
「まだ認めないのか!!早く認めろ!!!このバカ美少女!!!!」
「妾は悪くない!!!妾を忘れてたのが悪いじゃろ!!このバカシド!!!!」
そんな本当にどうでもいいような言い合いをしていると、不思議とこの街にきてから抱いていた不安な気持ちも全部吹き飛んでしまっていた。
そして俺はつい呟いていた。
「楽しいなぁ⋯⋯⋯」
それも言い合いをしてる途中にだ。
当然メアには「このどこが楽しいんじゃ!!」っと変人を見るような目で突っ込みを入れられてしまった。
まだモチベあります。




