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「これが魔法か⋯」
そう呟くシドの目の前には轟轟と燃える大きな炎が一柱。
そしてシドの唯一の外見的特徴とも言えるサファイアのような澄みきった蒼の眼。
その眼が今は燃え盛るような深紅の眼となっていた。
村長の知識によると魔法はトリガーとなる言葉、所謂呪文というものを発することによって発動するようだ。
だが俺は呪文を唱えていない。そしてそれを無詠唱魔法というらしい。イメージ力が強い人はできるらしいが残念ながら俺にはそんな大層な才能などない⋯⋯はずだ。
ではどういうことなのか⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯謎だ⋯⋯。
⋯⋯⋯まぁ。今は深く考えないことにしよう。
俺はそう心の中で決心した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「⋯⋯よし。それじゃ⋯村の皆には悪いけど⋯⋯始めるか⋯⋯」
そしてトリガーとなる呪文を発した。
「悪魔召喚」
直後、周囲の空気は一瞬にして淀み、とんでもなく重いオーラが発生した。そしてその発生源は⋯⋯目の前にある歪んだ空間である。
何事かと目を凝らして見ていると歪んだ空間、ゲートと呼ぶことにしよう。そこから声がした。
「⋯⋯ふむ。主が召喚者かの?それにしてはなんとも覇気のない雰囲気というかなんというか⋯⋯ちと期待外れじゃのぉ⋯⋯」
ゲートから出てきた声の主は俺を見るなりそう発した。
容姿は金髪で身長は俺と同じくらいで少し幼い感じだがちゃんと出るところは出ていてとても大人っぽくみえる。そして服装はあまり露出がなく大人しい感じのドレスだ。顔もとても整っており絶世の美少女という言葉がとても似合っている。
「君が⋯⋯⋯悪魔なの⋯⋯??」
それを聞いて目の前の少女はキョトンと目を丸くした後、突然お腹を抱えて笑い始めてしまった。
少女は何が面白かったのか2、3分はずっと笑い続けていた。
そして、
「召喚したお主がどうして不安げなんじゃ⋯⋯。⋯⋯まぁ、よかろう。そうじゃ、妾が悪魔じゃよ。それもお主が思ってるよりもずっと上位のな」
どうやら彼女は本当に悪魔らしい。しかも俺が思ってるよりずっと上位の存在。まあそれはひと目見たときから薄々気がついてはいた。なんというか近寄りがたい気品のようなものを感じていた。
「してお主よ、そろそろ本題に移ろうではないか。お主は妾に何を望む?⋯⋯あぁ、安心せい。生贄は十分すぎるほどにもらっておるから大抵の望みは叶えてやるぞ」
そういって彼女が視線を向けた先には燃え尽きて真っ黒になった民家の中に横たわっている村人の死体らしきものがある。
悪魔召喚のデメリットがこれだ。悪魔の強大な力を借りる事はできるがその代わりに生贄となるものが必要なのだ。原則は人間の魂だそうだ。そして生贄が少なすぎると召喚主が襲われる可能性があるらしい。だから俺は生贄としてこの村の住人の魂を差し出したのだ。
「⋯⋯⋯俺は復讐がしたい。そして連れ去られた姉を取り返して一緒に平和な生活を送りたい。」
「ふむ。復讐のぉ。⋯⋯よかろう、その望み叶えてやろう。それで?妾は具体的に何をしたらいいのじゃ?」
「俺の護衛をしてくれないか?男として情けないがこう見えて実戦経験がないんだ。だから俺の旅に付き合ってくれないか?その⋯⋯
無理にとはいわないが⋯⋯」
「⋯⋯はぁ。全く。お願いではなくもっと自信をもって命令をするのじゃ。仮にも妾を召喚した人間なんじゃからのぉ」
「そうか。それはすまんかったな。では改めて、俺の旅にしばらく付き合え」
次の瞬間、彼女はビクッと肩を震わせ慌てて俺の顔を見てきた。そして何を思ったのか俺の両頬を手で固定し目のあたりを凝視してきた。
「お、お主。その眼はどうした⋯⋯?な、なぜその眼を⋯⋯」
「眼??なんの事ですか???」
なんのことか俺にはさっぱり分からない。
だが目の前の彼女は何かを考え込むように頭を押さえ、ブツブツと独り言を呟いている。
「本人に自覚はなく、それに先程までは蒼い眼だった。それが急に漆黒の目になっていた。そして目の奥のあの紋章⋯⋯。あれは⋯⋯だって、そんなはずは⋯⋯」
「あのー。お姉さーん。それで、返事はどうなんですかー?」
考え込むのは勝手なのだが命令に対して何も言葉を返してくれないので少しいや結構不安になってしまう。
「あ、すまんすまん。返事は喜んでじゃ。お主の秘密を暴いてみるのも面白そうじゃしのぅ」
「秘密もなにもそんなものないんですけどね。でも良かったです。えーと、お姉さん名前なんて言うんですか?あ、俺はシドです。これからお願いしますね!」
「あ、そういや名前言ってなかったのぅ。妾はメリトルーア。ちょっとだけ上位の悪魔じゃよ。気軽にメアとでも呼んでおくれ。これからよろしくのシドよ」
そう言って目の前の美少女いや、メアは微笑んだのだった。
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