呼び出し
みんなの前で恥をかかせられた。
腹の虫が収まらないのは山本である。もちろん、山本の力が衰えることは自分たちにとっても不利であると分かっている取り巻き連中は、この挽回策を必要としていた。
できればみんなの前で、川岡をやっつける。それができないとしても、みんなの前で、川岡を服従させる。
先のけんかで川岡がそれなりに強い事を知った山本たちは、川岡を呼び出してやきを入れる事を決めた。
「川岡君に」
「おい、川岡にって」
ある日の授業中、ひそひそと生徒たちの間を小さく折りたたんだ紙が伝わって行く。
川岡は渡された紙を広げて、目を通すと、その紙に何かを書き始めた。
書き終わると、その紙を後ろの小山に渡した。
「山本に」
生徒たちの間を渡って行く紙は、一度川岡にたどり着いた後、元の山本に戻って行く。その様を山本が訝しげな表情で見ている。
「山本君にって」
前の席の女生徒から、紙を受け取った山本が、その紙を開く。
山本の近くに座っている取り巻き連中の一部が、何が書いてあるのかと首を伸ばして、その紙に視線を向ける。
「馬鹿へ。
分かった。お昼に行ってやるよ。
ただし、場所は体育倉庫の裏側だ。
そこの方が人目につかないからな」
山本がその紙を怒りで握り潰す。
調子に乗ってんのも、そこまでや。
山本の心の中は川岡への怒りでいっぱいだった。




