新たな展開
軽く曲げた左腕を突きだし、間合いを計りながら、川岡めがけて突撃する。
川岡は迎撃の体勢はとってはいない。相手からの攻撃は無い。そう確信したまま突き進む山本。
もう一度、利き腕の右の拳で、川岡を狙う。
その腕を川岡が身を横にしながらかわすと、山本の背中に手をあてがい力いっぱい押した。
勢いがついていた山本は背中を押された事で、前のめりに近くに有った机に激突する。
山本の取り巻き連中は予想外の展開に、立ち尽くして様子を見ている。
「危ないでぇ。
教室で暴れたらあかんでぇ」
川岡のそのふざけたような物言いに山本がさらに怒りをたぎらせる。
「やめとき。
お前の攻撃は俺にかわされとんねんでぇ。
俺には勝てへんのんが、まだ分からへんのんか?
もしかして、お前、馬鹿なんちゃう?」
「ざけんなぁ」
山本が再び激高しながら、川岡に殴り掛かった。
川岡は右足を近くあった机の脚に絡めると、さっと二人の間に机を移動させた。
勢いがあって、止まる事が出来ない山本が机にぶつかって、前のめりに倒れこむ。
すでに川岡は横に逃れていて、そのみじめな山本の姿を背後に立って見下ろしている。
まるで、かつて、山本が上田に送ったような蔑む視線で。
「しつこい男は嫌われるでぇ」
川岡はそう言うと、立ち尽くしている取り巻き連中に、睨み付けるような視線を送りながら、恫喝した。
「おい、お前ら。
この馬鹿、邪魔なんや。
この馬鹿を連れて行け」
山本の取り巻き連中が慌てて、山本を抱え起こして、自分たちの席に戻って行く。
それををしり目に、川岡はにこやかな表情で上田に席を寄せ、自分の弁当を机の上に置いた。
突然の出来事に唖然としていた上田が、この教室で今まで見せた事が無い目いっぱいの笑みを浮かべ、自分の弁当を机の中から取り出す。
新たな事態の展開。
このクラスの中の一部の生徒たちは、川岡に期待を抱き始めた。そして、一部は川岡の言葉に一抹の不安を抱いた。もしかして、いじめが無くなるのではなく、いじめっ子といじめられっ子が変わるだけではないのかと。




