保健室
小谷が教室を出て行くと、教室の雰囲気は一変した。小山が横に座っている上田を睨み付けながら、怒鳴り始めた。
「あんた、先生にちくったんか?
卑怯なやっちゃなぁ」
上田は身に覚えのないこの事で、さらに自分へのいじめが激しくなるのではと狼狽気味に答える。
「ち、ち、違う。僕じゃない。
僕は何も言ってない」
そう上田が言った時、鈍い大きな音と共に、机が大きく揺れ、机の上に置いてあった筆箱とノートが床に落ちて、悲しげな音を立てた。
上田が振り向くと、そこには山本が上田を睨み付けて立っていた。
山本が上田の机の脚を蹴ると、最後まで机の上で耐えていた教科書も耐え切れずに、床に落ちて行った。
「お前はほんま、どうしようもないやっちゃなぁ。
ああ」
そう言いながら、座っていた上田の胸ぐらをつかんで、立ちあがらせると、右の拳を振り上げた。
殴られる。
その恐怖から、上田が小さな悲鳴を上げて、目を閉じる。その上田の姿を見て、山本が笑いながら、力いっぱい上田を突き放した。
その力によろけた上田が隣の柏木の机に体をぶつけて、床にしゃがみ込む。
ぶつけて痛む腰のあたりをさすりながら、上田が目を開けると、山本が蔑むような視線を向けていた。上田は耐え切れず、慌てて立ち上がると、教室から飛び出して逃げ出した。
廊下を走る上田。
行きかう生徒たちの間を縫って走る上田に目的の場所はない。
ただ、教室にいたくなかった。
階段を駆け下り、教室から少しでも遠くを目指す。
でも、チャイムが鳴れば戻らなければならない。
戻りたくない。
このまま学校から逃げ出そうかと思った上田の目に、保健室の看板が映った。




