様子を見る事は事態を悪化させる
家の中で顔を合わさないと言う事が無理な以上、青あざを祖父母に気付かれないで過ごすことなどできる訳がない。
顔の青あざを見たら、祖父母は心配するに決まっている。
そう思うと、上田の家に帰る足取りは重い。
「ただいま」
そう言って、家に入ると、少しでも気付かれるのを遅らせようと、足早に二階にある自分の部屋を目指す。
上田は自分の部屋に入ると、鞄を机の横におき、制服のままベッドにうつぶせで倒れこんだ。
誰もいない部屋が、上田のぼろぼろに傷ついている心の鎧をはぎ取り、上田の心を丸裸にする。大粒の涙が流れだし、嗚咽が止まらない。
こみあげてくる悔しさとさみしさ。そして、不安。
そんな中、一生懸命祖父母たちへの言い訳を頭の片隅で考える。
喧嘩。それしかない。
上田は夕食ぎりぎりまで、自分の部屋に閉じこもっていた。と言っても、自分の部屋で宿題に勉強にと、時間を費やすのは普段からの生活パターンであったので、上田の祖父母も心配などしていなかった。
上田の祖父母が上田の無残な顔の青あざと腫れの事を知ったのは、夕食のために上田がダイニングに下りてきた時だった。
少し腫れ気味で、大きく痛々しい青あざを作っている自分孫に、祖父母は動揺した。
しかし、上田が学校の先生も知っていて、喧嘩によるもので、自分自身にも非があったので、反省文を自分も書かされたと説明した。
自分たちの孫も反省文も書かされたとなれば、一方的に相手を責めるのは筋違いであるし、学校にも文句を言いにくい。
上田の祖父母は心配しながらも、今回の事を学校に説明を求めることもせず、しばらくは様子を見ることにした。
しかし、学校での上田への嫌がらせはエスカレートしていった。
上田に新しく渡れた教科書を隠したり、上田のノートに落書きをしたり、鞄の中に道端で拾った鳥の死体を入れたり。
そして、お昼休みに上田に上田のお金で山本が食べるパンを買いに行かせたり。




