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計り屋のはかりごと  作者: 滝壷ゆん
5/7

人、そして鳥

それから、患者が増えるのはあっという間だった。


パン屋、商家、酪農家、便利屋、八百屋、多くの人が病に倒れたそうだ。


一貫して、痙攣と発熱があるそうだ。


そうだ、といったのは、全てが聞いた話だからだ。


ミノの両親は疫病について口をつぐみ、ミノには何も教えなかった。


それを知ってか知らずか、ワタルは仕事終わりによくミノの家の裏口に寄り、こっそりと情報を教えてくれた。


「一家全員が発症している場合が多い。


でも、その隣の家は全く無事だったりする。


わけが分からないと伯父は頭を抱えているんだ」


ワタルは傍にあった木箱に腰かけた。


「こんな話を、私にしてもいいの?」


ミノが尋ねると、ワタルは声を抑えた。


「僕らが患者の家を回るから、僕も疫病にかかっているんじゃないかと疑われてね。


僕が心配なんじゃなくて、僕が病気をうつして回らないかを心配しているんだ。


だから、近づく人もいない。話をしてくれる人は貴重なんだよ」


「話をしているのは、専らあなただけどね」


「細かいことは気にしない。僕は、そろそろ帰らないと怒られる」


ワタルはそういうと、こっそりと裏口から出て行った。





次の日、ミノは手桶に川の水を汲んでヤマネサシの葉を数枚浮かべ、橋の下に運んだ。


ヤマネサシは町のすぐ近くの森に多い木で、濃い緑の大きな平たい葉をつける。


木の皮を煮て柔らかくした晒しを巻いた青い小鳥が、弱弱しくその水を飲み始めた。


この晒し(仮)は、ワタルとミノが苦労して作り出した代用品だ。


人に使うには肌触りが悪すぎるが、動物に使うことはできるらしい。


高価な人の薬をつけるわけにもいかず、自然治癒に任せるしかないのが現状だが、


晒しのおかげか、切り傷が膿化することはなかった。



さて、この小鳥は、特定の木の葉に付いた露を好むようだ。


前に、森の中でヤマネサシの葉をつつくようにして水を飲んでいるのを見かけた。


その後、カラスに襲われて怪我をするところまで目撃してしまい、橋の下に匿ったのだ。


川の水を汲んでも飲んでくれず、日に日に弱っていく小鳥を見て、


葉に付いた露の代わりにと葉を浮かべた水を与えてみたら、なんとか飲んでくれた。


「美食家な鳥もいるものね。」


森で取ったヤマネサシの実をミノが掌に乗せると、鳥は掌に飛び乗ってそれをつついた。


あと3日もすれば、元気に飛び立つだろう。


それほどヤマネサシの露や実を好む鳥なら、いっそ早く森に戻してやるのも手だ。


「怪我をした状態で、またカラスにつつかれるのも可哀そうかな。」


人の疫病を看病することはできなくても、


少なくともこの鳥が元気に去っていくまでは見守ってやりたい。


ミノは鳥を柔らかい草の上に戻すと、立ち上がって服に付いた土を払った。


日が暮れる前に帰らなければ、配達の途中で寄り道をしてしまったことが母にばれてしまう。


森の中で匿うとしたら、今のように気軽に立ち寄れなくなってしまうことも問題だ。


ミノは帰路を急いだ。


ヤマネサシは、空想の植物です。


イメージは、ヤマモモのような赤くて小さな木の実と椿のような分厚い葉っぱ。


葉っぱは、ある程度の存在感や香りみたいなものがある少し分厚いイメージ。

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