【イマジニア崩壊…】
いよいよか…
机上に広げられた用紙を見つめる…
5つの小さな人形を各国イマジニアの上に乗せる。
それを見つめるのは同士5人。
始めに「荒野」の人形を「森林」の人形へ移動する。
次に「森林」の2体の人形を「島国」の人形のところに移動する。
3体になった「島国」のところにある人形を「山脈」の人形へ移動。
4体の人形を最後に動かすのは…「平原」だ。
これは、各国のイマジニア攻略が進んでいる順番でもある。
「荒野」からの情報で攻略が進んでいるイマジニアは上層の危険率が低い。実際にポントが各国のイマジニアに潜り、その違いを調査してくれた結果を基に1つの仮定を立てた。
イマジニアの生産力は一定であり。最深部にはエネルギーを産みだす何かがありそれはその仕組み自体の防衛にもエネルギーを使っているのではないかと言う事だ。
重要な最深部から離れている場合にイマジニアは最深部の防衛にエネルギーを割く必要が無く、全体にエネルギーを割り振る事ができる。
しかし、枝葉を落すようにイマジニアの末端から攻略されていくにつれてエネルギーの濃度は濃くなる、高エネルギーにより防衛力は高まる…
一番攻略が進んでいる「荒野」のイマジニアの破壊が可能であれば…
もちろん俺の仮定が正しければと前置きがつくが…全てのイマジニアの破壊は可能になる。
肩に手が置かれる。
肩越しに見える銀色の仮面に片手を見せる。それを確認すると軽く頷く。
そのまま姿を消した。
5日後だ…当日は時間との戦いになると考えている。もし邪魔が入るとすれば一つ目のイマジニア、すなわち「荒野」のイマジニアが破壊されたとき。
本日より5日間は各自、自由行動とした。
最終的には何が起こるかわからないからな…
『で、なぜユーロがここにいる…』
『最後になるかもしれない。だから傍にいる…当然』
『…勝手にするといい…』
いつも通りに仕事を始める。
部屋の中には用紙をめくる音とペンをはしらせる音だけが響く…
音も立てずに書類の仕分けを始めるユーロ。
的確に書類を裁いていく、捗る…
日が傾く前に本日分の仕事は終わった。
『仕事を手伝ってくれてありがとう。どうして…』
『どうして、的確に仕分けできたのか…でしょう』
静かに頷く。
『今まで、この部屋であなたの仕事をずっと見ていたわ。それだけ、あなたを見ていた…ただそれだけよ』
『夕食を奢らせてくれないか。少し高めの店で…』
『ええ、喜んで』
『それで、王様は理由も言わずに、自分の傍に4日間居ろっていうのかい』
『そうですわ。私の仕事ぶりをすぐ傍で見ていただきたいのです。何か気づいた事があればご指摘いただきたいですの』
『あたいより賢いフランがやる事に何か言う事があるとは思えないけどね…まあ、いいやしっかり仕事ぶりを見せてもらうよ』
フランがこんなことを言うなんて珍しい、きっとなにかあるんだろうね…話せない何かが。
居てやらなきゃね。
机の上の書類を確認しながら判を押していく。
この4日間はしっかり傍に居よう、そしてたっぷり愛してやろう。
暇だね…眠くなってくるね…凛々しい顔の子猫ちゃんもいいけど暇すぎる。暇すぎてムラムラしてくるね…気を逸らさないと邪魔しちゃうね。
おっ、いいこと思いついたよ。
『フラン』
『バブエ様、何か気になる点がありましたか』
手を止めてこちらを見つめる瞳を真っ直ぐに見返す。
『判を押す時に力強さがあったほうがいいと思うんだよね。これ、押していい』
『いいですわ』
フランから判を借りて、剣を振り下ろすような感覚で…
スパーン
『どうだい、景気のいい感じがするだろう。きっと捗ると思うんだ』
『なるほど、やってみますわ』
「なかなか難しいですわね…」
とかいいながら暫くするといい音が鳴るようになってきた。
『なんとなく弾みがつきますわね』
『そうだろう、そうだろう』
自分の椅子に座って腕を組んで軽く目を閉じる、耳に聞こえるスパーンと響く音を聞きながら。
「…子猫ちゃんのいい声があれば最高だけどね…」
『何か言いましたか』
『何も言ってないよ。晩飯は何食べようか考えているだけさ』
いい音で判を押すフランの顔もとても幸せそうであった。
『久しぶりですね。ポント様が靴作りなんて』
『まあな、腕は鈍ってねーぞ。どうだ』
そういいながら女物の靴を取り出す。
クロネは言葉が出ないのか嬉しそうな表情で固まっている。
更に小さな靴を横に並べて置く。
『頑張ろうな。おい、痛い痛い』
ペシペシ叩くクロネを包み込んでやる。この小さな靴は決意でありお守りだ。
『今作っているのは、ポント様の分ですか』
『いや、違う。頑張ってほしい奴がいてな…そいつにもう一度こいつを送ろうと思ってさ』
クロネは何も言わずに俺の作業を見ている。心強いな、最高のやつを作れそうだ。あのときのような小細工はできないけどな…
『源様、手合わせをお願いしたい』
『ふむ、その姿…いや、何も聞くまい…行くぞ』
壁に飾られている長槍を大きく振り下ろしてくる、しかし、今の私にはその動きがとても遅く感じる…これは囮。
槍を籠手で受け止めた瞬間に源様は槍にそって潜り込んでくるいつの間にかその手に握られた短刀は喉元へ、しかし余裕を持ってその一撃を止める。
『わしをはるかに越えたな…見事だ』
『ありがとうございます』
生き残れたなら源様へ飛びきりの短刀をお贈りしよう。そう心に決めた。
『…生きろよ…』
『はい』
何も話していないが、何かを察したのだろう。深く頭を下げて自分の仕事に戻るとしよう。
決行当日、今頃同志諸君はそれぞれの国のイマジニアに待機している。
そしてイマジニアの中はどの国も無人となっている。
目の前には銀仮面こと姉様と黒仮面ことノワールが立っている。
『調整者に願う。ここにいるノワールの能力をできる限り強化して欲しい』
『承知しました』
膨大な量の鉱石とポイントが一瞬にして消え去る…
『では、行ってくる』
ノワールがそう言うと目の前の2人が徐々に黒い靄に包まれていく。
『待っています。ここで、よろしくお願いいたします』
消え行く2人に深く頭を下げる。
『いらっしゃい、待ってたよ。いつでもいいぜ…やってくんな』
ノワールの手に靄が集まるとゲンの工房で見た例のやつが握られている。
でかい、かなりでかいそれを静かにブンブン振り回す。
そして、俺の目の前から姿が消える。セントの目線を追うとイマジニアの上空に黒い点が見える。
『始まります…』
空気を切り裂く轟音、そして吸い込まれるように投げた何かはイマジニアに吸い込まれていく。
少し遅れて足の裏に振動が伝わってくる。
落下するノワールのもとにモッキー達が先ほどと同じものを2本持って飛んでいく。
イマジニアに入るギリギリでノワールは2本受け取ると中へ入っていった。
足元の揺れがノワールの生存を示す証か…
セントのところまで戻ってきたモッキーたちは同じものを持ってまたイマジニアへ飛んでいく。
『イマジニアの攻略は何を持って攻略なんだ』
俺の問いかけに顔をイマジニアに向けたまま。
『コアの破壊です。本来、コアを破壊する事はできません…皆様の力ではどれだけ力をつけようと、技術を高めようと。あれはそういうモノ…』
背筋に冷たい汗が流れる。そんなものを作り出した相手が俺達の相手…勝算ないんじゃね。
『それでも、今の彼なら壊せるでしょう…ほら』
地響きが収まり、目の前のイマジニアはその色を灰色に変えていく。
ひびが入りその中から埃まみれのノワールが出てくる。
その顔の汚れを白いハンカチでやさしく落しながらあたりには黒い靄が立ち上る。
『急ぎましょう』
『ああ』
ノワールはゲンの作った半分に折れたものを投げ捨てた。
『…おお、わかった』
俺が言えた言葉はそれだけだった。




