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【動き出す秘密】

とある薄暗い部屋の中に動く影が5つ。


『まさか、本当にこのメンバーに加わるとは…』


『いやー草仮面がいいっすよ、って言ってくれたもんだから、よろしく』

『いやいや、「いいっすよ」とは言っていませんが…許可したのは事実ですけどね』


「ちょっといいですか」と言って鉄仮面が手を上げて発言する。


『砂仮面…それは仮面と呼んでいい物ですかね』


一同が少し頷く。


『今…特殊な樹脂を使ってかっこいい奴を作っている最中で…まだしっかり固まるのにもう少しかかるので…今日はこれで勘弁してほしい』


『まあ、フェイスペイントでも今日はいいでしょう。本題に入りましょう』



草仮面、貝殻仮面、鉄仮面、木仮面、そしてフェイスペイント仮面は静かにその背を気持ち伸ばす。




『砂仮面の加入により、我々の計画を一気に推し進める事ができるようになりました』


『その件ですが、協力者は…その…大丈夫ですの』

『確かに、協力者の力なくして目的が達成される可能性は低いと思いますが』


『木に鉄が不安になる気持ちも解らないではない…そもそも博打のような計画…ドンと行くしかない』



『ちょいといいかい。俺は新参でまだ全部把握しきれていないんだが…協力者は誰だい…』




『協力者については現時点では私だけが知っている。他の3人にも知らせてはいない』

『…そうかい。どの段階で教えてもらえる。それに条件でもあるのかね…』



『全ては計画成功の為…必要となれば必ず伝えます』

『…安心したよ…』



その後の会議は順調に進んだようであった。






やはりあの男は先が見える方だ。もう暫く大人しくしていて欲しいが。

話の切り込み方が上手すぎてコントロールし難いな、しかし鉱石の収集量は跳ね上がる、これであとはタイミングを計るだけ…


できる限り確率を高めたいが、姉様の言葉もある。見えないタブーぎりぎりを見極められなければ行動を起こす前に潰されてしまうだろう。






『どうしようかな…』

独り言が勝手に口から出てしまう、思ったよりすんなり仮面会議に加わる事ができた。

都合よく監視されているだけな気もするが…



オープンテラスでよく冷えた茶を飲む。目の間では人々が活気を持って動きまわっている。


周囲から見ればいい年の男が真昼間からサボっているように見えるだろう。



実際そうだが…


『どうしようかな…』

まるっきりおかしな人だな。

『どうしました』

『うぉっ…セントじゃないか』

あたりをキョロキョロ確認する。

『番犬は一緒じゃないのか』


『ええ、呼びましょうか?』『いやいい。あの人怖いから』


『可愛いところもあるんですよ』

『いやいや、この話の流れは危険だ。セントがやつの可愛いところを言った途端に…』


俺は自分の首を切るジェスチャーをする。それをみたセントはクスクス笑い。

『そうですね』と言い切った。


『何か悩み事ですか』

俺の首が飛ばないように話を変えてくれたセントの顔をじっと見る。


『う~ん…俺うそつきになりたくないんだよねぇ』


セントを手招きして耳元で囁く…

セントの身体がビクッと震える。

『やっぱヤバイ感じ、だよね』

『仕方がありません…私には止める事は出来ないのですから』


動揺はその瞳だけ…気丈にしているが相当まいっているのかな。


『俺もそっち側になった。俺は俺の大切なもの達の為にな』

『わかりました、ごきげんよう、ポント様』



消え去るセントを見ながら、あの子の小さかった姿を思い出していた。






今の世界はそんなに悪いのだろうか…

タブーに近づいてまで変えるべき世界なのだろうか。

鉱石の力によって皆、豊かになった。

ホルダーの力が消え、自分の為にがんばる事ができるようになった。


全ては魔王さんのおかげ。


魔王さんはそんな事考えていないだろうけれど、ヘルさんは私に自由をと願ってくれた。

ヘルさんとお話が出来るわけじゃない私には解らない、私はただ平和に暮らしたいだけなのに。皆が仲良くする事ができればいいのに…


矛盾してる…全ての願いが全て叶うなんてありえない…でもそれを望んでしまう。


皆が幸せになれないのなら誰が不幸になればいいというの…




悩める私には何も出来ないのか、いや今はできることを探すしかない。どこに立つのがいいのか。


今の世界側に…


魔王さん側…



私はどうしたいのか…誰かの為でなく私の願いは…








『お前も酷なことをしたものだ』

『』


『お前の言いたいことは凄くよく解る。全てが決まりきった世界にどれほどの価値があるのか…しかし、あれが手にしたものは重い、ああいう概念は1人が持つものではないからな』


膝枕された魔王はその手を伸ばし愛おしい女の頬を撫でる。




『俺は俺の造ったモノを壊されるのは好きじゃない…対価を払ってもらわないとな』


『』


『止めないんだな……越えられるといいな…』




静かな風に揺れる草、2人だけの空間には草同士が擦れ合う微かな音だけ…






その頃、「山脈」の区画では激しい感情が渦巻いていた。


訓練場の中央には対峙する2人の姿。


派手な装飾の一切ない無骨だが洗練された曲線が美しい鎧を纏いその両手には球体を真っ二つにしたものを持っている。


対する男は軽装に無手…



合図するものもなく、そしてどちらともなく動く。


お互いの立ち位置を入れ替え、両者は立っていた。



『とてもいい物を作られた、そしてそれを活かす腕前を…』

『そのような言葉は無用です。今なら判る、本気ではないことが』



軽装の男は振り向く、その手には剣が握られている。



『そうこなくては、面白くない…』


大きく構え、空気はその動きを止める…




両腕の装備は砕け散ったが確実に相手の剣を止めていた。



『引き分けですかね』

『いや、私の負けでしょう』




暫くして、剣は砕け散る。



『これでも、負けですか』

『負けですね。私は暫く動けそうにないので』




『頼みがある。頑丈な剣を作ってもらえないだろうか…私が全力で振るっても壊れないものを数本…』

『いいですよ。やってみましょう』


『そんなに簡単に引き受けてもいいのか』

『目的の為に使うのでしょう…おそらく、あなたが協力者…それもどうでもいいですね。馬鹿みたいに頑丈なものをつくってみせますよ。腕が鳴ります』


『頼んだ…』


訓練場に1人残された男は、


『動けないといったんですがね…』


その場に崩れ落ちたまま気を失った…






落ち着かなくてはいけないと判っていても、落ち着かない。

計画は順調、だから落ち着かない。


ポントは言った。

「相手は訳が解らないモノ…考えて解ろうなんて無駄な事だ」

相手が解らないからあくまでこちらの計画は順調というだけ…


次の瞬間に俺の前に魔王が現れるのではないか、そんな状態になれば俺がこの世から消える以外の選択肢は無いだろう。


姉様が俺に警告したあの日から、一時も気が抜けない。いつ越えてはいけないラインを踏むのか。考えても仕方が無い、けれども頭から離れる事はない。


気は焦る、すぐにでも実行したのほうがいいのではないか…この考えは逃げだ。



解る。解っている。気がおかしくなりそうだと。これを越えなくては俺の求める俺になる事はできない。





不意に扉を叩く音がする。


『ナセキ様、遊び人のポン太郎という者が会わせてほしいとしつこく入り口に居座っているのですが…』


『皆も困るだろう。入れて構わない。私が相手をしよう』


一体、何をしているんだ…


似合わないメガネをかけて、あれは「島国」の衣類か…へらへらした顔をして部屋に案内されてくる。


『ありがとう。あとはこちらで対応するから仕事に戻ってくれ』

心配そうにこちらを見る兵士…


『私の腕前は知っているだろう。大丈夫だ』

『ハッ、何かあればすぐにおよびください』

キビキビとした動きで部屋を出て行く。


『大丈夫かい。草…いや、ナセキ君、だいぶ顔色が悪いぜ、緊張も過ぎれば足枷だ』

『何しに来た…』

『おっと、俺はちゃんと規定量以上の鉱石を用意している。それ以外の行動に口出しされる事はないと思うがね』


イライラしているな、俺は…


『用も無くあなたは来ないと思いますが』

『あれから結構時間が進んでいる、そろそろまいっているんじゃないかと思ってね。気晴らしに顔を出してみたわけだ』


目の前に差し出される小袋。


『安心しな毒なんて入ってねーから。甘いものでも口にほおりこんでどっしり構えてればいいんだよ。いろいろ考えてもいけるときはイケルしダメな時はそれまでだ』


一瞬見せた表情は深い闇を感じさせるものだ…


『一度経験している者からのアドバイスだよ…もちろん失敗する気は無いけどな』

『言われるまでも無い。我々は駄目もとでぶつかるのではない。そこにある可能性に賭けるのだから』



『もう、大丈夫そうだな。邪魔したな。鉄仮面が面白そうなもん作ってるから遊びに行ってくるわ。セントの番犬によろしくな』


喰えないな…野放しが活きる人だ…いや、飛び切り有能な補佐がつけばさらに………


1人懐かしい駄菓子を口に入れながらあれこれ考える、自分は常に何か考えていないと落ち着かないらしい。




不意に部屋をノックする音が響く。

『どうかしたか』


『ユーロ様がお会いしたいと来られておりますが』

『通してくれ』



『きっと疲れきっていると思って、いろいろ持ってきた。どうだ、できる伴侶がいて嬉しいだろう…抱いてもいいぞ』


ポントに感謝だな。さっきまでの精神状態ではユーロにいいようにされていたかもしれん…


机の上の小袋をわざと高めに上げて見せてやる。




『まず、ユーロは俺の伴侶ではない。加えて…そのような気遣いは先客がいた。懐かしい、平原産の伝統駄菓子を持ってな』


鼻をクンクンさせるユーロはハッとした顔をした。


『あの砂…殺す………寝取られてはいないよね…』

『そういう趣味は無い』


ほっとした表情で床に座り自分で持ってきたものを飲み食いしだす…


『やけ食い…私を喰ってもいいよ…』

静かに机に戻り仕事を始める。


『そういえば、ユーロは誰が協力者が知っているか…』


ニヤリとこちらを向いて。


『知らないにゃ~』


と言った。


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