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【警告】

街を見て回り、いい香りのする鳥の焼きものを買って自分の部屋に戻る。



『セント…今日は警告だ。タブーに触れようとしている、命を1つ貰う』


その目には一切の感情を感じない。理由を聞くことも許されない、絶対的なモノからの決定事項…


空間に溶けるようにその姿は消えていく…



『ナセキなのかしら…』


現状で考えられる人物はナセキを含む謎の集まりのメンバーである4人、その中でもその場を取り仕切っているであろうナセキの可能性が高い…

それを伝える事すらできないのならどうすればいいのか。何をしているのかも解らないのに止めるように言っても納得しないだろうし、そもそも、タブーに当たる内容で無いかもしれない…



今は情報が必要、ただ待っていても仕方がない。




行きましょう…




狭く飾り気の無い部屋の机には多量の書類があり、その中で忙しなく手を動かしている人物はその手を止め、顔をあげた。


『姉様、こんな時間にどうされました。少しいいですか、キリのいい所まで処理したいので少し待っていただけますか』


静かに木の椅子に腰をかける。それを見たナセキは静かにペンをはしらせる。


暫く待つと椅子を引きずりながら机の前に出てくる。



『義兄様は一緒ではないのですか』

『ナセキ、今貴方がしようとしていることはタブーに触れるかもしれない…』

『そうでしょうか。姉様は以前僕に言いました。「教える事もタブーなのよ」と。そう考えるならば今まさにタブーに触れようとしているのは姉様の方なのでは…』


厳密には際どいラインだと思う、私の行動は…内容を知るからこそのもの。


『内容を知る、姉様が一線を踏み越える事はないとは思いますが』


やはり頭がよく回る。


『それならば…』

『姉様、何かの弾みで越えてしまうかもしれない。あまり口を開かれないほうが良いかと思いますが』


意図せず…その可能性はありうる。


『感謝するわ。確かにその通りね』



『あまり反応せずに聞いてください』


私は静かに身動きひとつしない。


『ご理解いただいたようですね。僕達の目的は鉱石の力をこの世から消す事です。具体的な方法についてはお伝えできません。その方法も目的を果たせるか解りません。それでも…やると決めたのです』


真っ直ぐ…


『たとえ、どのような結果になったとしても』


私には止める事が出来ないことなのね。



『ナセキ、あのお酒、美味しかったわ。ありがとう』


靄に包まれながらその部屋を後にする。




どうしたらいいか、何も手のうちようがない。


1人静かにお酒を注ぐ。


『俺にも注いでくれるか』


見る感じフランさんには遭遇してない様子だった。


玉無し…なんて、でも…こんな時にふっと傍にいてくれる…


『…どうぞ…』



静かに注ぎ、言葉なくお互いの杯を静かに重ねる。



ありがとう…ノワール…






布のすれる音で私は目を覚ます。


『起こしちまったか』


言葉を出さずに、愛しい人の身体に触れる。

大きな手が私の髪を撫でる…


『気になることがあるのですね』

『ああ、王を辞めようかと思ってな』


驚きのあまり上半身を持ち上げる。

『ポント様、みんなが了承するはずがありません。なぜ、そんな事を言うのですか』



私をやさしく抱き寄せて静かに話してくれる。


『平原のナセキは俺に言った。「もしポント様が活動に参加するなら………王をお辞めになればいい」と…』


ちっとも似ていない真似をしながら話す彼…


『その言葉が本当である保証はどこにもないじゃないですか』

『それはそうだ。あのいかれた島国の女も可能性があるのは俺じゃない、クロネ、お前の方だと言っていた…しかしナセキとの話で1つ解ったのは国としても「荒野」は遅れている。なんとなくだがそう感じる。大きな枠からはみ出している感じがする』



『考えすぎでは…』

『解るはずだ、お前にも。それから目を背けてはいられない。俺の為にも、お前の為にも、もちろん国のみんなの為にも』


もう逃げてはいられない…

私の目を真っ直ぐ見つめる愛おしい人。


『クロネを加えた部族長合議による新体制の国に変更するように動いてくれ』

『ポント様はどうなさるのですか』


新しい悪戯を思いついた子どものような顔をして、楽しそうに笑う。


『正面から頭を下げに行く。でも、その前に1つ昔のなじみに確認したい事がある』

『その方は…』




『バブエだ…』


諜報部の解散、新国家体制の調整を私に託して一人部屋を出て行った。

私ももう止まってはいられない、現状の実務は部族長がそれぞれ担当しているから移行はすぐにでも行えるはず。


今度こそ、あの人の為に…







「森林」のイマジニアは盛り上がっていた…ここにはカリスマがいる。


その戦う姿を見るだけで自分の力が上がっていくような高揚感、その口から発せられる激励に心を震わせない者などこの国にはいない…


戦いのカリスマ、その人の名は…



「元森林の王、バブエ」




『バブエ様、上に客が来ていやす』

『珍しいね、私に客かい。どこのどいつだい』


『ポントとか言う名前だったと思いやす』



『へー、ちょっと上行ってくるけど任せて大丈夫かい』

『『『『『『おまかせあれっっっ』』』』』』




なんかいい面構えになったね…


『いきなり切りかかるなんてひどくねーか』

『あたいに会いにきてくれたんだろう…楽しませてくれるんだろう』


殺す気でいくよ…

思った以上にいい腕をしている。



暫く打ち合う、ギャラリーも増えてきたね…そろそろいい頃合かね。


足元がお留守だよ。



『しまったっ…』


ポントの足元を掬い上げ真っ逆さまに地面へ送ってやる。

武器を手放しかろうじて受身を取る奴の首元にそっと刃を添えてやる。


『『『『『バブエ様―最高―』』』』』

『『『痺れるぜぇ』』』


野次馬共のテンションはぶち上げだ。



『随分と活き活きしてるっすね、バブエさん』

『懐かしい話し方になったねポント。ここは騒々しいからついてきな』


1人では広すぎる私の部屋で、ちょっといい酒を1本ポントの前に置いてやる。

自分用にも1本栓を開け直接のどの奥に流し込む。


『あー、一仕事のあとはこれは格別だねぇ』


『いただきやす』

『今の普通でいいよ。もうあたいらはホルダーじゃない』


『聞きたいことがあって来ました』



もう一口瓶をあおる。


『いってみな…』




『うちを除く4国の代表が何かやっているんですが、知らないかと思って』

『知らないね』


フランが私の代わりに王になると言ったあの日。


そして皆を納得させ本当に王になったあの日以来、私は自由になった。

思うままに腕をふるって、思う存分羽根を伸ばした…責任を全部押し付けて…


私から政治的なことを聞くことはない…そしてフランが話す事もない。



『わざわざ来てもらったけれど、政治的なことからは一切身を引いているでね』


さぞかし残念そうにするかと思えば、ポントの奴は瓶底を天井に向けて一気に飲み干すとニカッと笑い。



『それが確認できれば十分来たかいがあります』


そういって頭を下げてくる。正直よく解らないが良かったらしい。


『良かったね。がんばんな』

『はい』




いい返事を返して足早に出て行った。


フラン…危ない事してないといいけど…逢いたくなったね、行くか。

小さな鞄に物を放り込み私も部屋を出ることにした。






俺の足取りは軽やかだ、自然と移動の速度は上がっていく。

街までの道のりはまだまだあるが少しでも早くあの男のところにたどり着きたいと思うと足を止める気にはなれない。


本当に国を巻き込まずに何かをやっている可能性がぐんと上がった、荒野の民だけが取り残される危険性は少なく、あの男のいっていた言葉がただのでたらめではないと思えるようになれた。あとは迷うことはない、この目で直接見るだけだ。




ニヤニヤした男が1人休む事なく走り続ける姿を田舎の町の人々はかわいそうなものを見るような目で見送ったという。






それから3ヶ月後、『荒野の王、ポント』は一度表舞台からその姿を消した。


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