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【調整者もどる】

調整者がもどった。


その情報はあっという間に五国に伝わった。




しかし、その姿を確認したのはポント王ただ1人である…




今日もみんな来ているようね。


私は円卓の間の前で繰り広げられる会話を聞く。




『セントさんにお会いしたいと言っているのです』

『調整者様は今、あなた方とお会いする必要は無いとのことです』


『調整者ではなく。セントさん個人として会いたいと言っているのです。フランが来たとお伝えなさい』

『私は、あなたの命令も頼みも聞く必要は無い』


『では、どうすればセントに連絡をつけれるのか教えてもらえないかしら』

『それに答える必要もありませんね』


『毎日同じやり取りね』

『なんて頑固な奴なのかしら』

『それは、こちらも同じ気持ちだが』



『では、同じ気持ちと言う事で何とかならないですかね』

『また増えましたか…気持ちは同じでも立ち位置が違うでしょう』



『確かに』

『ゲンさん、なに簡単に納得しているのよ』



『「荒野」の王はセントさんの姿を見たのでしょう。ならば無事ではあるということ。今は無事を喜べばいいかと思いましてね』

『まあ、ポント様も特に何とも言っていなかったし…無事なのがわかっているなら…』

『ええぇーい。私はこの目で見るまでは安心できませんことよ。キィー、そこをどきなさい、この黒いの』


ノワールは困っているかしら。


『ノワール、困っているかしら』

良くわからないので率直に聞いてみた。


『いえ、セン…』

『セントさん、フランですわ。一目姿をみせてくださらないかしら』


『セント様、困ってはいませんので大丈夫です』

『そう、困ったら言って頂戴ね』

『は…』

『セントさん、なぜ姿を現さないの。いったい何があったというのです』




『黙らせますか…』

『いえ、その必要は無いわ。フランさん、あなた方にとって私は調整者でしかないの。その意味が解るかしら。そんなに私の姿がみたいのなら調整会議を開きましょう。よろしいかしら…『森林の代表の方』』



『わかりましたわ、よくわかりましたわ』




では、暫らく休みましょう。こちらに準備は必要ないですから。






緊張した面持ちの各国代表を見渡しながら自分の席につく。

以前と違うのは、私の左後ろにノワールが立っているくらい。


『それでは、調整会議を始めましょう。各国代表の皆様、ご無沙汰しておりました。この通り元気ですので』


『そのようですわね。安心しましたわ。何をなさっていたのかしら』

『フランさん、私には答える必要がありません』


『私は心配していましたのよ』

『フランさんはそうかもしれませんし、そうでないかもしれない。本当のところはあなたの心の中だけ』



その場は静かになる、誰も言葉を続けないのを確認して私は続ける。


『今後、調整会議は行いません』




『その意図を教えて…』



『五国は誰も調整など望んでいないからです』

『なぜ、そう思うの』


『セントは、私達のあらゆる物資の動きを知っている…』

『ユーロさん、説明する手間が省けて助かります』



ユーロさんを除く4名は驚きを隠せていない…


『ナセキ…私は知っているのよ…』


『姉様…』

次の言葉が出てこないみたいね。



『責めているわけではないわ。私は「平原」のモノではないのだから』


『小鳥ちゃん、化けたわね』

『皆さん、好きになさるといい。それに気づいただけ、ユーロさんのお陰でね』

『それはよかったわ。楽になったでしょう』

『ええ。ノワール』


私の声にノワールは一歩前に進み出る。


「平原」以外の代表の前にモッキーが現れる。


『各国代表の皆様、急な通信失礼します。今後、このノワールが各国にお邪魔するかもしれません。不干渉をお願いします。これはただのお願いです。ノワールは私の目となる存在である事を付け加えておきます。それではごきげんよう』



『それはお願いではなく警告ではありませんか』

『ゲンさん、あくまでお願いです。聞いても聞かなくてもどちらでもいいものですよ』


『ノワールさん、1つ手合わせをお願いできますか』

『お止めになったほうがよろしいかと…』

『いえ、是非』



『…仕方ありませんね。ノワール、やさしくね。ゲンさんは優しい方だから』


ゲンさんは大きな身体をコンパクトに構えている。


『その鎧だけで大丈夫なのか』

『無手の訓練も怠ったことはない』


『そうか…』

机に自分の武器を置く、ノワール。

『この鎧は伊達ではない、本気で来るがいい』



『では…』


次の瞬間、ベアさんの上半身の鎧は波打つように曲がり、ゆっくりと仰向けに倒れていく。


『「山脈」の鎧はなかなか丈夫にできている。バラバラにするつもりであったのに、技術もあるがたいしたものだ』


仰向けのベアさんに手をかざす。



『まさか、この鎧がここまで変形してしまうとは。自信作であったのに残念ですね』

『私の予想を超える良い物でした』


ベアさんの差し出した手を取る事なく、軽く頭を下げて返したノワール。


『ノワールは、今まで私に無かった力を持っています。今の私は力なき調整者ではなくなりました………皆様と同じように好きにさせていただきます。今後、調整者の力が必要であれば内容をノワールに伝えてください。お手持ちのポイントと私への鉱石量によって皆様の希望をできる範囲で叶えます』



静かに私の声を聴く一同の様子を一通り眺め、続ける。



『ノワールを通さないモノは、ただのセントへのお話しとしてお聞きします…』



『小鳥ちゃん、面白い事を考えたね…ふふふ』

『ユーロさんにそう言われると安心します』


『どうゆうことですの』


『つまり、普通の時は今までのようにしていいってことよ。切り替えがハッキリしたってこと』



『まあ、いいことってことですわよね。ならよろしいですわ』


全体の理解は得られた様子…ナセキだけは難しい顔をしているわね。


まあ、いいわ。

何を考えているかはある程度予想がつく、好きにさせましょう。



『では、皆さんで街に繰り出しましょう。ノワールさんの歓迎会ですわ』


フランさんは元気良く、両手を上げて発言される。

『お断りします。セント様行ってまいります』

『お願いね、ノワール』

『すべてはあなたの御心のままに』


私の前で膝をつき頭を下げる。

そして、目の前から消えてなくなる。


『ですわ…滑稽…』

フランさんの後ろでユーロさんは同じポーズを取りながら話しかける。


『私は用事がありますので今日は失礼します』『僕も今日は遠慮します』


ゲンさんとナセキは階段を降りていった。


『フランさん、そろそろ手を下ろしたらどう。私は行きたいけどどうするの』

『そうですわね。どうせ、ユーロさんは来ないのでしょうか…』

『私をのけ者にする気…感じの悪い幹事ね…』

『何を企んでますの』

『一皮向けた小鳥ちゃんとお話ししたいだけよ。悪い』

『まあ、2人とも。セントは行けるの』


『もちろん』




4人で「森林」の区画のオープンテラスで飲みのもを頼む。

なぜ「森林」かといえば「感じが悪い幹事でも、幹事は幹事ですわ」と逆切れ気味にフランさんが提案したからだ。

「好きになさるといい」と私のマネをしたユーロさんと始めから反対もしていないクロネさんと私はフランさんお勧めのこの店に来た。


『マスター、私にはスカイブルーティーをいただけるかしら』

『私は、オレンフレーバーティーをくださいな』

『では、私はディープフォレストを』


『ウォルトをストレートでドンと来い』

『ユーロさん、カフェにそんな強いお酒、しかもストレートなんて正気ではありませんわよ』


詰め寄るフランさんの斜め後ろで店員さんは困ったように言った。

『フラン様、当店にはウォルトも置いているのですが…』

『なぬっ』

『人気店の裏メニューはリサーチ済み。まさか、自国の把握もできていないとは…滑稽…』


睨みあう2人の気迫に店員さんはソーッと店の奥へ移動していった。



『まあ、折角セントがもどったのに、その辺にしておいたらどう』

『確かに、猿の相手はいつでもできる』

『安い挑発にはのりませんことよ、では本題入りますわね』


3人が一斉に私を見る…


『『『あの人とはどういう関係』』』


前のめりの3人の目はギラギラして飢えた獣のような輝きを放っている。




『拾ったの…』


『ほう…拾った男を飼い、躾ける…セント…なかなかやる』

『そんな、あんな屈強な感じのある男性を、ああっ』

『ちょっと意味が分からないわね』

『初心なふりをするな蜘蛛女。解っているんだろう、もっと上手にしらばっくれるがいい』


ユーロさんの手の上で踊らされてるなぁ…


『フランさん、クロネさん落ち着いてください。そういうことじゃないですから』

『これだから、欲求不満は困る…』

『ユーロさんが変に煽るからでしょう』

『めんご…』


『お待たせしました』

絶妙なタイミングで飲み物は運ばれてくる。

全員で一口…


『くぅぅっ、すきっ腹にきく』

『そりゃそうでしょうが』


『で、拾ったってどういうことですの』


『あても無く私は彷徨っていたの…』


私はノワールとのことを話しだした…


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