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【出されたカードで出来る手は】

翌日、通信装置を希望する4国の設置に半日を費やした。


その日は皆さんと事務的な話だけにした、私はまだ調子が良くないので…と言って。




『姉様、お身体いかがですか』

ナセキは昼過ぎに現れた。


『大丈夫よ、今出て行きます』



ゆっくり歩いて出て行くと「平原」以外の国の人間が忙しそうに控え室と階段を行き来している。


『随分とにぎやかね』

『細やかな方針の調整ができるので各国準備されているようです。鉱石の利用価値の全貌がわからないため必要ポイントギリギリで変換しているのでしょう』


部屋から声は一切漏れないように注意しながら、階段を行き来している。


『セント…もう大丈夫』

ユーロさんが控え室から現れこちらを見ている。



『ユーロさん、朝はすいませんでした。もう大丈夫です』

『それは良かった。私特製スペシャルドリンクをご馳走しよう…隣の僕ちゃんもいかが…』



『年は若く、仮とは言え僕は国の代表ですよ。ナセキという名前があるのですが』


『この程度のことをいちいち気にする時点で器が知れる』

『ユーロさん、あんまり弟で遊ばないでくださいね。特製ドリンク何が入っていますの』

『味は保障する。材料は聞かないほうがいい…』

『そんな得体の知れない物を姉様に飲ませる気ですか』



『…そう…』


『まあ、味は保障ってユーロさんも言っていますから』

『セントは話が解る…ちょっと待ってて』


ユーロさんは控え室に入っていく…



『姉様、いいのですか』

『ナセキ、あなたは代表よ。解ってやっているのならばいいのだけど』


『お待たせ…さあ、どうぞ』


濁った紫色に謎の赤い泡が載っている…その泡は息づいているように浮かんでは消える…


『さあ、さあ、遠慮せずにグイッとどうぞ…』


ナセキが私の前にスッと出る。


『先ほどは失礼しました。まずは私がいただきます』



『腰巾着…さあ、喰らうがいい』

『いただきます………』


ナセキが固まる…



『これは………おいしい…』

私に特製ドリンクを差し出しながら、ユーロさんはナセキに向かって言う。


『私は、国の代表…セントに態々嫌われるようなマネするわけない。腰巾着、頑張れ』


さわやかな酸味とほのかな甘み、口にはじける泡が軽やかにのどを駆け下りる。見た目の怪しさからは想像できない、仮面ダンサーのよう。


『…どう、私の特製は…小鳥ちゃん』

『ユーロさん、大変美味です』


私の言葉にとても満足した様子で踊りながら控え室へ戻っていった…


残された2人…



『腰巾着か…そうかもしれません。姉様の為といいながら僕は自分で考えることもせず…』

『ユーロさんも「頑張れ」と言っていたではないですか』


『お話し中…申し訳ない。少しよろしいですか』


ゲンさんは私達2人を交互に見ながら少し悩み、2人の間を見ながら言った。




『「平原」と取引をしたいのですが、お話しを聞いていただけますか』




『お話しを聞かせてもらえますか』


『よろしいですか』

ゲンさんは私の方を向き、確認の言葉を口にする。


『ゲンさん、「平原」の代表はナセキですよ。「平原」の内情を知らない私にする話ですか』

『いえ、ナセキ君はあなたをとても尊重していたので』

『今は会議の場ではないですが、私は調整者ですので。一国を贔屓するようなことは望みません』

『余計なことを言って申し訳ない。お2人とも許していただきたい』


『いえ、私が「平原」産まれ、しかも前王の娘であることは事実です。そう思いたくなるのは仕方がないことです。お気になさらないでくださいゲンさん。私の方こそ気を失った時に運んでくださったお礼もせずにすいません』


『セントさんのような可憐な女性を運ばせていただけて不謹慎ですが嬉しかったですよ』

『まあ、何も出ませんよ』

『出ませんか』


つい可笑しくて、ゲンさんと一緒に笑いあう。


わざとらしい咳払いをしながらナセキが私達の間に割ってはいる。

『そうでした。ナセキ君どちらの控え室でお話しを聞いてくれるかな』

『私が選んでいいのならば、是非お邪魔させていただきたい』


『では、どうぞ』

『姉様、行ってまいります』


私は2人が「山脈」の控え室に入るのを見届けてから、自室に戻った。




自室に入り部屋を見回す…なるほどね…


『次の会議はすぐにでも始まりそうね…』

誰に聞かせるでもない言葉は部屋に消えていく。

もう少し、休みましょう。






予想通り、明日を待たずして会議は開かれた。


『では、各国現時点で争いの意思は無いと…』


『「平原」はすでに兵を引く為に動いているのであれば、調整者が直接聞いた分も含め五国は争いの意志なしとなるのではないですか』

『確かに、どの国も今はという前置きがあったとしても自国内に重きを置いているのですから、そう神経質になることもなくってよ』




『私の手にあるカードは不安定なものばかりに思えるのです』



『それならば…調整者の力で安定につなげればいい…』

『その行為が安定に繋がるとは思えない』

『では…いつまでも閉じこっているの…小鳥ちゃん』




『確かに、何もしなければ私は空気でいられる。でも、それを私は望まない。今の状態では無用な小競り合いが続くだけ…私は時を進めます』


一同は私から目を離さない。




傍らにモッキーが湧き出る。


頭に石版がにゅっと生えてきた。




『コール。レベルダウン…』


私の宣言終了と同時に石版はさらさらと崩れ落ちていった。




『調整者、今のはいったい何が起きたの』

『各国のイマジニアのレベルを下げました。これにより今までよりも攻略難易度は下がるはずです。レベルダウンの効果は平等ですので現在の優位性が崩れることはありません』


『今、それを行ったのはなぜ…』

『今のままでは、私の調整者としての力を使うことが出来ないからです。皆さんは通信装置の使用ポイントを見て多いと感じた。それでは困るのです。手が差し伸べられない』




誰も私に何も聞かない。理解しているのだろう、私の言葉の意味を…




『会議は暫らくお休みになりそうね』

『そのようですわね』

『…必要な時は調整者に言えばいい…』





『何もなければ今回は終了とさせて頂きます』


2回目の会議はあっさりと終わった。




『セント、時間があるのなら「森林」の区画に遊びにいらっしゃい、歓迎しますわ』

『猿は手が早い…私と交友を深める方が有意義…』

『それならば、是非「山脈」の区画にも来ていただきたいものですね』


少し困ってしまう…


『下がれ、姉様が困っているであろう。話し合って順番を決めてから姉様に話せばいいものを。その程度の配慮も出来ないのか』

『その通りよ。ナセキさんの言うとおり調整してからでいいでしょう』


『後から割って入ったからこのようなことが起きたのです。言われずともその程度の配慮できますわ』

『猿には無理、本能が勝つはず…腰巾着今のはナイス』

『少々慌てましたね。私のところは最後で構いません。「荒野」とナセキ君はいいのですか』



『私のところは揃う前に一度来てもらってるから。今回は遠慮しておくわ』

『僕のところは他国を刺激したくないので、暫らくは自重したいと思います』


『鎧狸は狡猾…でも言葉には甘える。猿、いざ勝負』

『私は話し合いで文化的に解決する理性的な女性ですが、望むなら受けて立ちますわ』


ユーロさんとフランさんが少し距離をとり対峙する…


高まる2人の間の緊張感、構える姿…そして静寂。




『『最初はグー、じゃんけんポン』』


フランさんは拳を高らかに振り上げる。



『蟹は鋏しか出せませんものね、ほっーっほっほっほ』

『無念…』

あまり悔しく無さそうに「うちが2番」とゲンさんに話しかけている。


『ちょっと、ユーロさん。私に負けて悔しくないのですか』

『悔しくない…セントが来なくなるわけじゃないし…悔しがろうか』


軽く咳払いをして、静かに拳を下ろしながら、何事もなかったかのように笑顔を浮かべるフランさん。


『いつ頃、来てくださいますの』

『では、7日後に』

『お待ちしていますわ…って、ユーロさん何をやってますの』


ナセキとじゃんけんをして拳を天高く突き上げる格好のユーロさんが無表情で言う。


『猿真似………さらば』

あっという間に階段を降りていく、それをふんわりドレスのまま追いかけるフランさん。



『あの2人、仲いいわね』

『そうですね。僕もチョキ出してと言われた時点で気づくべきでした』

『まあ、仕方がないのでは』

『そうですね』


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