アッサラーム①
「アクエリアス…?」
アクエリアスが私に何かを伝えようとしているのが分かった。
『あの男はただの旅人じゃない。あいつからは何か強い力を感じる』
アクエリアスの言葉に私とアイリンが反応する。
そして、すぐにルウの塊の中に捕まっている旅人に視線を向けた。
すると、さっきまで困惑した表情をしていた男が今は不敵な笑みを浮かべている。
「…貴様、わざと捕まったフリをしたな!」
アイリンがルウの塊に向かって吠える。
「くっくっく…まさか喋るメアにお目にかかれるとはな…もう少しドジな旅人を演じていたかったのだが、仕方ない」
ルウの中の男が余裕の表情でそう答えた。
…この男もアクエリアスの声が聞こえる。
「…貴様は何者だ?」
アイリンの質問に男は答えずに笑い出した。
「旅人を襲って記憶を消して金目の物を盗む。そんなことを続けていて目立たないとでも思ったか?お前たちは目をつけられていたんだよ王国にな」
男の言葉にパウロが怒りを露わにする。
パウロが男をルウの塊ごと外に放り出そうと、ルウの塊に触れようとした。
「やめろパウロ!」
アイリンの制止の声よりも先にルウの塊が消えてなくなって、自由になった男がパウロの頭を鷲掴みにした。
パウロがすぐに苦痛の声を上げる。
「離せ!」
アイリンが腰に帯刀していた短剣を抜いて、男に襲いかかる。
すると、男はアイリンに目掛けてパウロを投げつけた。
「アイリン!パウロ!」
その光景に思わず二人の名を叫ぶ。
アイリンはパウロの下敷きになって、地面に倒れ込んだ。
その隙に男はゆっくりとアイリンが作り出した土の壁に手を触れた。
すると、その土の壁がまるで溶けるように無くなっていく。
私はその光景をただただ見てることしか出来なかった。
男が入り口を開けた瞬間、外にいた王国兵士たちが次々と中へと入ってくる。
王国兵士は全部で十人いた。
「私は王国のルーラーのアッサラーム。王国の命でお前たちを捕らえ、奴隷として他の国へと売り捌く」
王国兵士の前に立つ男がご丁寧に自己紹介をする。
その表情からは明らかな余裕が感じられた。
アイリンとパウロは立ち上がり、すぐに男たちから距離を取った。
私も一緒に入り口から離れる。
その時、アイリンが私の横に立って囁いた。
「…逃げ道がある。そこからみんなと逃げてくれ…」
「アイリンは?」
アイリンの言葉に思わず訊き返す。
「勿論、逃げるさ。アイツらを倒したらね…パウロも先に逃げろ。ナナミを頼む」
小さめの声でアイリンが言った。
そして、アイリンは短剣を鞘に収めて、両手を地面に付ける。
すると、アッサラームとその周りにいた王国兵士の地面が激しく揺れた。
思わず、王国兵士たちが足を取られて地面に倒れ込んだ。




