今すぐ戻れ!
「さよならナナミ。また、近くに来る時は是非立ち寄って欲しい」
「うん、必ず来るよ。さよならアイリン」
私たちはそう互いに別れの言葉を口にして握手を交わした。
「あの子たちが帰ってきたようだ」
アイリンの言葉に視線を外へと向けると、小さくパウロたちの姿が見えてきた。
それに思わず胸を撫で下ろす。
私の時と同様にルウの塊に誰かが入っている。
アイリンの表情が真剣なものへと戻っていく。
やがて、パウロたちが入り口に辿り着くと、ルウの塊を地面に下ろす。
ルウの塊に目を向けると中には旅人と思われるような男の人が困惑な表情を浮かべていた。
「トンヌラとクッキーはこの者を頼む。パウロはナナミを山まで案内してやってくれ」
アイリンの言葉にそれぞれが動く。
「さあ、行こうか」
パウロが私の顔を見て言った。
「ありがとう。でも、さっき行ってきたばかりなのに少し休まなくても大丈夫?」
「心配するな。ここらは俺の庭みたいなものだ。何往復だって苦じゃない」
とパウロが簡単に答える。
「…じゃあ、お願いします」
少し申し訳なくパウロに案内を頼んだ。
「またねナナミ…」
「必ずまた会えるよね?」
サマンサとプリンがほんの少し悲しげな表情でそう言った。
まだ、捕まえた旅人がいるからか、気を抜けないのだろう。
「うん、また必ず会えるよ」
と手を振り、すでに外に出ているパウロのあとを追った。
「パウロ!ナナミ!今すぐ戻れ!」
突然、アイリンがそう叫んだ。
すると、パウロがすぐに私ごと敷地内へと駆け入る。
えっ!?何!?
訳が分からず、私は狼狽えてしまう。
「…どうやらあとをつけられていたようだな」
アイリンが敷地の外へと目を向けて言った。
すると、少し離れた木の影や茂みの中から鎧に身を纏った男たちの姿が次々と現れたのだ。
「王国兵だ!」
ルウの塊を運ぼうとしていたトンヌラがそれを見て声を上げた。
アイリンがすぐに集中して両手を前に伸ばす。
その手が青く光った。
すると、入り口が地面から一気に盛り上がってきた土の壁によって塞がれる。
「トンヌラとクッキーはすぐに他の子たちの安全を確保しろ!サマンサとプリンはここから逃げる手筈を頼む!私とパウロはここを守る!」
アイリンが忙しなく指示を出す。
「ナナミはサマンサとプリンと一緒に行ってくれ。しばらくは奴らも入っては来れないが、おそらく時間の問題だ」
アイリンの言葉にこくりと頷く。
「しかし、何で王国兵がここに…」
パウロが少し狼狽えた声を出す。
「分からないが、今はそんなことよりも全員で逃げることが優先だパウロ」
アイリンがパウロの背中を軽くポンと叩く。
「さあ、皆んな早く!」
アイリンが檄を飛ばした。
その時だった。
アクエリアスが私の腕の中で激しく揺れ動いたのだ。




