旅立ちの朝②
「分かった。いつものメンバーで行ってくれ。くれぐれも慎重にな」
とアイリンがフリーダムのボスの顔に戻る。
アイリンの指示にパウロ、トンヌラ、クッキー、サマンサ、プリンが動いた。
大きな黒い布にそれぞれ覆い被さり、食堂から出て行く。
その動作から慣れている様子が窺えた。
それでいて皆、気を緩めていない。
昨夜、私と寝室でたわいない話をしていたサマンサとプリンがまるで違う人物に見えた。
心配になり、思わず私は外に出てパウロたちを見に行く。
パウロたちは黒い布に身を包み、早々と出口を出て山へと向かって行った。
その姿に少し心配になる。
「大丈夫だ。あの子たちはしっかりしている。もし、危ない時は無理しないで逃げるように言ってあるから心配ない」
とアイリンが私の肩に手を置いて言った。
それに私はこくりと頷いて、あの子たちの姿が見えなくなった方をただ見つめていた。
「ナナミも早く発つ支度を済ませておいてくれ。パウロたちが帰ってきたら、パウロに山まで案内させる」
アイリンの言葉に私は分かったと返事をして、食事を済ませてから、女の子専用の宿舎に戻りアクエリアスとボンサックを手に持った。
そして、他の幼い子供たちと別れを済ませて、食堂でパウロたちの帰りを待つ。
「もうじき帰ってくる筈だ。入り口で待っていようか?」
とアイリンの提案に従い私はアイリンと共に食堂をあとにした。
他の子たちはそれぞれの宿舎で待機している。
ルウの塊の罠に何者かが掛かってここに連れてくる時は、警戒のために幼い子たちは身を隠す。
だから、昨日に私がここに連れて来られた時も、外には誰の姿もなかったのだ。
…それだけこの仕事は危険なのだろう。
アイリンと一緒に入り口でパウロたちを待つ。
すると、アイリンがそっと口を開いた。
「…近いうちにこの仕事は辞めようと考えている。やはり、例え生きていくためとはいえ、人を襲い人の物を盗むのは許されることじゃない…今までのような生活は出来ないとしても、皆んなが胸を張って笑っていけるような道を探すよ」
アイリンが山の方に視線を向けたまま、そう語る。
「…うん、きっとフリーダムの皆んななら出来るよ。私は信じてる」
私も山の方に視線を向けたまま、アイリンに言った。
するとアイリンが私の顔に視線を向ける。
「ナナミに出会えて良かった。もしかしたらマリアが私たちを引き合わせてくれたのかもしれないな…」
アイリンの言葉に、もうアイリンはマリアさんが生きているとは思っていないことに気がつく。
それに少し悲しくなるも、懸命に表情には出さない。
「私もアイリンに出会えて良かった。そして、フリーダムの皆んなにも…」
アイリンがスッと手を差し出した。
私は左手にアクエリアスを持ち替えて、右手でアイリンの差し出した手に握手する。




