楽しい夜①
夢のような時間はあっという間に過ぎ去っていった。
宴が終わると私は女の子組が寝る建物へとサマンサに案内される。
その時、外に出た際に入り口の方にパウロとトンヌラとクッキーの姿が見えた。
男の子の中で年齢が上から順の彼らがしっかりとここを守っている。
サマンサによると夜中は一人ずつ警備について、交代して回すそうだ。
しかし、かつて何か問題が起こったことは無いそうだ。
それでも、警備を怠らないフリーダムは凄いなと感心する。
建物の中は二階建てになっていて、下は着替えをしたりするところで、あと浴室もついている。
二階が寝室となっていて、たくさんベッドが並んでいた。
かつてここが収容所だった頃の監視員用のベッドを他の建物からかき集めてここに運んだそうだ。
男の子の寝室にはベッドが少なく、床に布団を敷いて寝ないといけない子もいるので、ベッドは交代制らしい。
ベッドがレディーファーストなところが、流石はリーダーが女性の集団だと納得した。
私は寝る前にサマンサと8歳の子と7歳の子と一緒にお風呂に入ることになった。
まず、サマンサがルウの力を使って浴槽に水を張る。
続いてプリンがルウの力で浴槽の水を温めた。
私の世界のようなシャワーは設置されていないが、お湯の入った浴槽に入れるだけで夢のようだ。
この世界に来て初めてのお風呂に入る前から舞い上がっていた私をサマンサがクスクスと笑っていた。
久しぶりに髪や身体をお湯で洗い流し、更に温かいお湯に浸かる。
昼間に牢にぶつけたところが痛かったが、それよりも全身の疲れが取れる感じがして気持ちよく、お湯から出れなくなりそうだった。
「酷いことをしてごめんね…」
私の身体のところどころにあるアザに触れてサマンサが言った。
「気にしないで。でも、このアザは今日に出来たものだけじゃないよ」
そうだ…森や山の中で出来たアザや傷もある。
アザや傷なんて本当に前の世界で作ったことなんてなかった気がする。
あの居た堪れないほど窮屈で平凡な人生が今はとても幸せだったんだなとつくづく思う。
人と上手く話せない?
友達が出来ない?
両親が仲が悪くて喧嘩する?
両親が実の親じゃなかった?
今、思えばたかがそんなことで私は悲劇のヒロインを演じて、この世界に希望を抱いたのだ。
たしかに私のいた世界では私の苦痛はそれなりに同情を得られたかもしれない。
…でも、このフリーダムの子供たちの境遇に比べたら随分と恵まれた環境だった筈だ。
私は馬鹿だ…
もし、仮にいつか家に帰れることがあるなら、私は両親に言いたい。
本当の子供じゃないのに大切に育ててくれてありがとうと…
まあ、それが叶う日が来るかどうかは分からない。
でも、必ずそう言おうと心に誓う。




