今夜は宴⑤
「本当はアイリンもそんなことしたくなかったんだよ。でも、子供だけしかいない私たちが生きていくにはそれしかなかった…だからアイリンは悪くない。ただ、マリアの代わりになって私たちを助けてくれているの」
サマンサが訴えるように私に言った。
「…ナナミがサマンサを人質にしないと言った時の表情がマリアにとても似ていた…マリアを忘れていた日なんて一度もないが、マリアの教えや優しさはどこかで私は見失っていたのかもしれない。だから、今は正直揺れている…生きるためとはいえマリアがこのことを知ったらどう思うかと…」
とアイリンが顔を覆った。
「…アイリン」
こんな時、本当なら何か気の利いたことを言ってあげた方がいいのだけど、私にはそれが出来なかった…
「…すまないな。せっかくのナナミを歓迎する宴なのに暗い話になってしまった」
とアイリンは苦笑する。
私は小さく首を横に振った。
「…私には何が正しいとか何が間違っているなんて言えない。そんな資格もない…」
…そうだ、私は本来なら大臣の悪行を止めるべき立場である亡きファーシル王の娘ナリア。
例え、それが最近分かったとはいえ、その真実には変わらない。
「…私は弱い。だから、強くなりたい…それはまだまだ先かもしれないけど、必ず強くなってみせる」
私は決意を語った。
私がこの王国の姫なんてことを知らないアイリンたちからしたら、私の言っていることは意味不明だろう。
だけど、アイリンもサマンサもプリンもそんな表情を一切しなかった。
「…そうか。ナナミならきっと強くなれるさ。私も負けてられないな…ありがとうナナミ」
アイリンがそう笑って私に礼を言った。
礼を言われることなんて何も言っていないのにと思うも、アイリンの表情に笑顔が戻ったことに安堵する。
「さあさあ、まだまだ料理はあるから食べて食べて」
サマンサがそう言って私に勧める。
「…ありがとう。でも、そろそろお腹がいっぱいかな…」
宴が始まってからかなりの量を食べている。
もう、正直お腹がはち切れそうなくらいいっぱいだ。
…でも、この楽しい雰囲気をもう少し味わっていたかったので、もう少し無理して食べることにした。
それから、アイリンとサマンサとプリンと色んな話を語り合った。
それは先程のような暗い現実味のある話ではなく、なんとも言えない非現実な夢のある話だ。
例えば、サマンサはお菓子の家に住んで毎日好きなお菓子を食べることが夢だと語る。
プリンは何人ものかっこいい王子様に言い寄られるなんとも馬鹿げた夢を語った。
その話に私もアイリンもお腹を抱えて笑った。
たしかにこの時の私たちは同じ空間で同じ時間を共有していた。
同年代の女の子同士として…
この時の私はブルーのことをすっかり忘れて、いつまでもこの時間が続くことを願っていた。




