今夜は宴④
「親に捨てられたり、親が殺されたりして孤児となった私たちにマリアは常に優しくてまっすぐだった。間違えているということに対しては私たちに全力で教えてくれた。毎日のように問題事は色々あったけど、本当にあの日々は幸せだったと今なら言える…」
アイリンの話に私は何も言わずに耳を傾けた。
「…だが、ある日その幸せは突如崩れ去った。王国の命令として孤児院を閉めろとファーシル城から王国兵士たちがやって来たんだ。孤児は皆、他国に奴隷として売り出すと奴隷商人まで連れて…」
奴隷商人…
その言葉にメキラの町で会った奴隷商人のことを思い浮かべた。
「勿論、マリアは反対した。しかし、命令は命令だと聞く耳を持っては貰えず、何人かの子供が奴隷商人に連れて行かれたんだ。マリアは直接、ファーシル城に話をと私に残りの子供たちを任せて、一人ファーシル城へ向かった。すぐに帰ってくるから心配しないでと私たちに告げて…」
アイリンの瞳からは僅かな怒りを感じた。
「しかし、それから何日が過ぎてもマリアは帰っては来なかった…」
アイリンの言葉に悪い想像をしてしまう…
王国は今やあの大臣の言いなりだ…なら、マリアさんの話を素直に聞いてくれるとは思えない。
「…マリアさんはどうなったの?」
恐る恐る訊いた。
「…分からない。捕まったのかもしれないし…もしかしたら殺されたのかもしれない」
アイリンの哀しげな表情に何も掛ける言葉が思いつかなかった。
「…数日後、マリアが帰ってくる代わりに奴隷商人と王国の兵士が数名やってきた。私は大人しく従うフリをしてルウを使って奴らを騙し、子供たちを連れて孤児院から逃げ出したんだ。そして、ここに辿り着いた」
気がつくとサマンサとプリンもアイリンの話に耳を傾けていて、その時を思い出すように寂しげな表情を浮かべていた。
「ここは昔、罪人などの収容所で私たちが来たときには誰も使っていなかった。そこで私たちはここを綺麗にして住むことにしたんだ」
とアイリンが言うとサマンサとプリンが共感するようにうんうんと頷いた。
「初めは凄かったんだから、ここ!周りにも中も草がボーボーで、建物の中も虫や蜘蛛の巣だらけでさ、地下の牢なんか白骨化した死体があったしね」
プリンが思い出すように語る。
その最後の部分に思わず私は顔を引き攣らせた。
「あっ、大丈夫。ナナミが入ってた牢じゃないから安心して」
サマンサのフォローに胸を撫で下ろす。
「ここに住むようになって、生きていくためにはナナミが知っているような盗賊まがいなことをしなければならなかった…そのためにはこの子たちの協力が必要だった」
そう言ったアイリンの顔には少し後悔が見えた。
「私が教えられるルウを教え、山の進み方や知識を身につけさせた。そして、子供たちと私で山にルウの罠を仕掛けて旅人を捕らえ、ここに連れてきて記憶を消してから山に返す。その繰り返しでなんとか今まで生きて来れた…」
とアイリンが話したあとに今度はサマンサがすぐに口を開く。




