帰宅②
以前は父と母は仲が良かった。
それも、もしかしたら私に気を遣っていたのかもしれない。
ただ、ここ数年は気を遣うことすら疲れ果てたのか、互いに顔すら合わそうとすらしない。
そして、最近では父が家に帰って来なくなった。
それでも、二人の口からは「離婚」というワードが出てこない。
きっと、それは私のせいなのだろう。
私が自立するまで我慢しているのかもしれない。
いっそ、私がもう無理しなくていいよと言えば、両親の肩の荷が降りる可能性はある。
…でも、私はそれをしない。
私自身、父とは仲が悪くなく、むしろ関係は良好だ。
だからこそ、父と母を失う勇気がなく、それが父と母を苦しめることになっても見て見ないふりをしている。
…私は最低だ。
夕食を終えると自室で宿題をしてから、残り時間をゆっくりとリビングで過ごす。
母は仕事を家に持ち帰っているため、夕食の後片付けを終えると部屋にこもっている。
夜の10時になるとゆっくりとお風呂に入り、床に就く。
ベッドの上で両親のことと学校のことが不安として頭の中に押し寄せてくる。
それを六倉さんの話を思い出して掻き消した。
すると、私の身体はフワッと宙を舞う。
辺りには雲がたくさんあり、私は広く青い空の上に浮いている。
気がつくと「エヴァ」の世界に入り込んでいた。
そして、六倉さんが教えてくれた七つの大陸をひとつひとつ見て回る。
まずは中央にある竜海に囲まれたルーゴフェルベ。
次に北上して、石海に囲まれたモデウスアスと白海に囲まれたマンモ公国。
マンモ公国から南下して神海のあるヴィアレタンへ。
次は更に南下して虚海に囲まれたベルバブゼ。
そのあとは西に移動をして滅海のあるタサン王国へ。
最後に銀海に囲まれたファーシルを堪能する。
さっきまで穏やかだったのに急に暴れるような海へと変貌するまるで竜が住んでいるような竜海。
見た目は普通の海と変わらない感じがするのに、航海している船が今にも沈みそうになっていた怖い石海。
大陸は砂漠ばかりなのに白くて美しく、思わず見惚れてしまう白海。
海の上にはたくさんの船が並んでいて、常に穏やかでまるで神に加護されているような安心感のある神海。
常にもやっとした霧のようなものが出ていて、船乗りたちに幻を見せたりするちょっと意地悪な虚海。
大陸同様にあまり日が当たらなく常に夜の海のイメージがあるが、実は穏やかで意外と航海しやすい滅海。
きらきらとした輝きを時折見せる美しく穏やかで、船乗りたちに精神的安らぎを与えてくれる銀海。
七つの海。
どの海たちも特徴的で綺麗で穏やかな海も魅力的ではあるが、そうでない海も見る側としてはとても神秘的で私は好きだ。
骨董品店のショーウィンドウに飾られた七つの海の絵を初めて見た時から何か運命的なものを感じた。
その七つの海があるといわれている「エヴァ」の世界を想像しては、その世界の中で自由と居場所を感じている。
そして、いつの間にか想像の世界から夢の世界へと切り替わり、気がつくと私は眠りについていた。




