今夜は宴②
言ったらきっと怒るだろうし、せっかくブルーのことをブルーって呼んだのに止められたら嫌だから、そこは触れないでいよう。
「…うん、少しね。でも、ブルーならきっと分かってくれる。結局なんとかなったし、心配ないだろうから…」
…本当にそうだ。
もし、ここが残虐非道の盗賊団のアジトなら私の命の保証なんてないし、もっとブルーにも心配を掛けていた筈だ。
『これに懲りてあんまりあちこち興味本位に触るなよ』
アクエリアスがルウの塊に躊躇なく触った私を注意する。
それに対して何も言い返せなかった。
その代わりにアクエリアスの鞘を意味もなく触る。
『な、何だよ?』
その私の行動にアクエリアスが怪訝な声を上げた。
…特に意味はない。
ただ、素直に謝るのはなんとなく悔しくなっただけだ。
そんな、やり取りをアクエリアスとしていると私のところに一人の男の子がやって来た。
「用意が整いました。さあ、こちらへどうぞ」
細目が特徴のクッキーだ。
「ありがとう。あっ、私に敬語なんていいよ。堅苦しいでしょ?」
私の提案に分りましたとまだ敬語で返すクッキーに思わず笑ってしまった。
真面目なんだなと感心する。
「じゃあ、こちらへどうぞ…じゃなくてこっちについてきて…」
と私はクッキーに案内されて外に出た。
そして、私が捕らえられていた地下室に牢がある建物へと案内される。
中に入ると、たくさんあったテーブルの上には豪華な料理が並んでいた。
席にはフリーダムの幼い子供たちがすでに座っていて、少しお姉さんやお兄さんの子供は奥のキッチンの方に姿があった。
「さあ、ナナミ。今宵は宴だ。今日の出来事は忘れて一緒に楽しもうじゃないか?」
料理が並んだテーブルの前にアイリンが立っていた。
…なんだか、私なんかのためにわざわざこんな豪華に歓迎してくれるのが凄く申し訳なくなってきて、思わずたじろいでしまう。
「遠慮するな。私はナナミが気に入ったんだ。今宵はナナミと色々と語り合いたい」
アイリンが私を席へと誘う。
私は少し遠慮気味に席へと座る。
「さあ、たった一晩ではあるがこれはナナミの歓迎会だ。みんな今日は遠慮なく騒いでくれ!」
アイリンの挨拶に皆んなが沸いた。
その時、この場にいるのが全員ではないことに気づく。
「どうかした?」
私の左隣に座っていたサマンサが私の表情に気づいて訊いた。
「うん…パウロがいない」
「パウロは入り口の警備に行ってくれている」
サマンサの代わりに右隣に座るアイリンが答えた。
「えっ…」
「…今夜くらいは警備しないで、入り口にルウの罠を仕掛けておいたらいいと言ったんだが。パウロがダメだと言ってな…」
少し困ったような表情でアイリンが言った。
「パウロって責任感が強そうだもんね」
と今日一日しか彼を知らないけれど、それは分かった気がした。
「パウロにはあとで食事を持っていくから大丈夫だよ」
と私の不安をサマンサが払拭する。
「さあ、楽しんでくれナナミ」
そのアイリンの言葉に私はテーブルの上の豪華な料理をご馳走になった。




