アイリン④
「どうなってんだ!?何でサマンサがアイツに剣を持ってくるんだよ!」
トンヌラという少年が混乱して叫ぶ。
「…なるほど、剣がサマンサを操っているのか。流石、お喋りが出来る剣だな…」
フリーダムのボスのアイリンが感心したように話す。
「プリンは?サマンサと一緒にいたプリンは?」
私が逃げたと騒いだ男の子が訊いた。
確か名前はクッキーだ。
「お前たちプリンに何かしたのか!」
トンヌラという少年がそう叫びながら、私たちの方へと歩み寄ってくる。
それを赤茶色の髪の男の子が腕を掴んで止める。
「…向こうはサマンサを人質にしている。迂闊に近づくな…」
そのパウロという少年の言葉が私の心に突き刺さる。
「心配するな。こいつと一緒にいた娘には少し眠ってもらっているだけだ」
サマンサという少女の身体を操って、アクエリアスが答える。
「くそ!卑怯だぞお前ら!」
トンヌラという少年が地団駄を踏んだ。
「卑怯だと?どっちがだ。散々、ナナミにひどいことをしておいて偉そうに…さあナナミ、こいつを人質にしてさっさとここからおさらばしようぜ」
アクエリアスが少女の声で私に言った。
「…私たちの負けだ。もう何もしない。頼むからサマンサを返してくれ」
アイリンが私たちの方に少し近づいて言った。
「…ナナミを牢に入れ、俺を金目の物として奪っておいて、今更そんな言葉を信じろと?」
アクエリアスの言う通りだ。
彼女たちは私たちに酷いことをした…
…でも…だからといって、私たちはこんな小さな子を人質にするの?
「ナナミもそう思うだろ?さあ、ナナミも何か言ってやれ」
アクエリアスの催促に私は口を開いた。
「アクエリアス、その子を今すぐ解放して」
私の言葉に少女を操っていたアクエリアスが驚いた表情を見せる。
「はっ…?何を言ってんだナナミ?」
アクエリアスが私の言葉に混乱している。
…分かっている。
その子を解放すれば、もしかしたらまた捕まるかもしれない。
「お願い…アクエリアス」
私の頼みに少女の姿でアクエリアスがため息をついた。
「…分かった。ナナミがそう言うなら従うよ」
とアクエリアスがそう答えた瞬間、少女の身体がまるで魂が抜けたようにがくんと倒れそうになった。
それを私は咄嗟に支えて助ける。
そして、少女の手からアクエリアスを取り戻す。
すぐに駆け寄ってきた男の子たちにサマンサを受け渡す。
男の子たちはサマンサを連れてすぐにアイリンの元に戻った。
「お願い。記憶を消してくれて構わないから、私を解放して。あと、アクエリアスも取らないで欲しい」
人質が最早いない私の言うことを聞いて貰えるかは分からない。
アクエリアスをまた取られるかもしれない…




