アイリン③
「私が入り口に行った際、あの剣がアンタに話し掛けている声が聞こえたのさ。耳ではなく頭に聞こえてくる声をね」
迂闊だった…
アクエリアスの声は私とブルーしか聞こえないと踏んでしまっていた。
だから、彼女は私がアクエリアスを…剣を置いて逃げないと初めから分かっていたんだ。
「…私をどうする気?」
私は恐る恐る訊いた。
「最初にも言ったが、命まで取るつもりはないよ。ただ、あの剣は返す訳にはいかない。他に金目の物を持っていないようだったから、せめてあの剣くらいは頂いておく」
「…あなたたち盗賊なの?」
…そうだ。
きっと山に私を捕まえたような罠を仕掛けては旅人を捕まえてお金や物を盗っているのだろう。
「まあ、そんな大層なものではないさ。私たちは私たちの力で生きていくために一緒に協力し合う仲間…そうこの場所を拠点に生活しているフリーダムという名前の集団だ」
「フリーダム…」
「ああ、私たちは自由を手に入れる意味を込めて皆で付けた名だ」
アイリンという少女がそう答える。
「ボス…そんな説明したところで記憶を消すんでしょ?意味なくないですか?」
トンヌラと呼ばれていた男の子が言った。
…記憶を消す?
それで、この場所を知れないようにしているんだ…
「まあ、そう言うな。例え、相手が忘れるとしてもたまにはこうして話したくなるんだ。逆に忘れてもらうからこそ話せるしな」
彼女の言葉に思わず後退った。
アクエリアスを取り戻す前に記憶なんて消される訳にはいかない。
アクエリアスがあるであろう建物に目をやった。
「…剣がある場所は知っているようだな。まあ、牢を抜け出した努力は認めよう。だが、諦めるんだな。この子たちは子供でもそれなりのルウが使える」
彼女の言葉に流石に打つ手がなくなってしまったと半ば諦めそうになった。
その時だった…
アクエリアスがある建物から誰かが出てきたのだ。
「サマンサ…?」
赤茶色の髪をしたパウロという少年がその女の子を見て言った。
よく見るとサマンサと呼ばれた少女は手にアクエリアスを持っている。
そして、彼女は仲間のところには行かずに黙って私の方へと歩いてきた。
その彼女の表情をしっかり見たとき、もしかしてと頭にある考えが浮かんだ。
それが確信に変わったのは彼女が私の目の前まで辿り着いて口を開いた時だった。
「待たせたなナナミ。こいつを使って逃げて来たぜ」
とそれは少女の声だが、少女自身の言葉ではなかった。
…アクエリアスだ。
「まさか、牢を自力で抜け出すとは思わなかったぜ。やるなナナミ」
とアクエリアスがサマンサという少女を操って、私に話し掛けた。
アクエリアスにこんな力があったなんて…
その驚きとアクエリアスが私のもとに返ってきた喜びがあったが、同時にある迷いが生まれた。




