アイリン②
「はい…牢の扉が壊されてました。もしかしたら、もう外に逃げたかもしれません」
赤茶色の男の子は深刻な顔をしていた。
「まずいよ…アイツきっとここのことを言うよ。そしたら、俺たちどうなるんだよ…」
「心配するなトンヌラ。まだ、そうと決まったわけではない」
と皆にアイリンと呼ばれている少女が赤茶色の男の子の横に立つ男の子の肩に手を置いて落ち着かせる。
…私がこの集落のことを誰かに言ったら困るの?…何で?
と彼女たちの会話を聞いて疑問が湧いた。
「ボス!早く追いかけて捕まえましょう!今なら追いつく筈だ。記憶を消さなきゃトンヌラが言った通り、俺たちはここで暮らせなくなる!」
赤茶色の男の子がボスに向かって、そう提案する。
「パウロも落ち着け」
と彼女はそう言って、出口に向かってゆっくりと歩いていく。
その落ち着きに嫌な予感がした。
あの子たちのボスは出口付近で立ち止まった。
そして、何やら足元を見ている。
そして、再び戻ってくる。
「心配するな。あの少女はきっとまだこの集落の中にいる」
えっ…!?
「なぜそう言えるのですか?」
パウロと呼ばれる赤茶色の男の子が訊いた。
「足跡だよ」
アイリンという少女の言葉にドキッとする。
「足跡?」
他の子がボスに訊き返す。
「ああ、この集落は棘が付いた背の高い柵で囲まれている。逃げるなら間違いなく出口から出て行く筈だ。しかし、出口には見慣れた足跡しかない。あの少女はここにルウの塊の中に入ってやってきた。だから、もし本当に逃げたのなら見慣れない足跡が出口に向かって付いている筈なんだ」
彼女の説明にしまったと心中で嘆く。
…そして、おそらく彼女は今、私がこの会話を聞いていることを知っている予感がした。
わざわざ、私が聞こえる場所で聞こえる音量で話しているからだ。
「そうだろ?」
急に私の方向を見て、アイリンという少女が言った。
思わず、身を隠す。
…でも、無駄な悪あがきだ。
彼女はきっと私が隠れている位置まで把握している。
…仕方ない。
と私は建物の陰から外に出て行く。
「あっ、お前!」
と彼女の周りにいた男の子たちが私を捕まえようとこっちに向かって走り出そうとする。
しかし、それを彼女が止めた。
「やめろ。無理に捕まえなくても、彼女はもう逃げられないよ。そもそも一人では逃げるつもりはなかったのだろう?」
その言葉に全て読まれていたことに気づく。
「…アクエリアスを返して」
少し離れた場所にいる彼女に要求する。
「そうか…あの剣はアクエリアスというのか。それにしても喋る剣なんて初めて見たよ」
「えっ…!?」
彼女の言葉に思わず驚きの声を上げた。




