ルウの塊①
私たちはニオの村をあとにして、先へと進むため再び山へと入っていく。
ニオの村での食事はとても美味しかった。
ブルーの用意してくる食事とはまた違った意味で最高だった。
どちらも私の胃袋を高揚させることは間違いない。
しかし、美味しかったということが仇となることも時にはある。
…そう、食べ過ぎてしまったのだ。
ブルーのあとを歩きながら、それを反省していた。
村ではなんともなかったのに、いざ山に入ると苦しくなってきたのだ。
すると、私の異変に気がついたブルーが足を止めてこちらに振り返る。
「どうした?」
「ちょっと食べ過ぎちゃたみたいで…」
と面倒向かって聞かれると恥ずかしくなる。
「何だ用を足したいのか?なら、待っておくから行ってこい」
ブルーの言葉にこくりと頷いて、アクエリアスを持ったまま、その場から離れる。
本当はアクエリアスも置いていきたいけど、ブルーに預けて喧嘩されても困るので、近くまでは持っていく。
「ナナミ!」
少し離れたところでブルーが私を呼び止める。
「あまり遠くには行くなよ!」
ブルーの忠告に手を上げて答えた。
とはいえ、近くでは恥ずかしくて出来やしない。
悪いけど、ある程度見えなくなる位置じゃないと嫌だ。
私は良さげな場所を見つけて、その近くにある木にアクエリアスを立てかけた。
そして、アクエリアスから見えないだろう位置で用を足す。
村ならきっとメキラの町のような「ルウ」の力で色々としてくれるトイレがあったかもしれないと後悔する。
それにしても、こんなところでするなんて、この世界に来るまで考えられなかった。
向こうの世界の当たり前がこっちでは当たり前じゃない。
…まあ、日本が恵まれている環境であったこともあるといえばある。
私は用を足すのを済ませて、アクエリアスの元に戻った。
水筒の水で手を軽く洗って、布で拭いてからアクエリアスに触る。
『おいおい、貴重な水が勿体無いぞ』
とアクエリアスが文句を言う。
「いいの。私にとってはこっちの方が大事よ」
と反論した矢先、近くに何かあることに気がついた。
「何あれ?」
首を傾げながら、それに近づいていく。
『どうした?』
「…何かある。なんだろうこれ?」
私はそれを見上げる。
それは透明な塊で私より少し大きいくらいで更に宙に浮いていた。
『ルウの塊だな』
右手に持っているアクエリアスが言った。
「へぇ、何のためのルウだろう?」
もしかしたら、誰かが仕方なくこんなところで用を足さなければならなくなった人のために作った手を洗うルウかもしれない。
とメキラの町の店のトイレを思い出す。
『おいおい、迂闊に触るなよ!』
アクエリアスが咄嗟に警告するも、既に私の左手はそれに触れていた。




