ニオの村②
ここに来るまでに泥で汚れた服を一度、山中の小川で綺麗に洗った。
ついでに下着も。
普通なら乾くまで時間が掛かるか濡れたまま着るかだが、アクエリアスが一瞬でそれを乾かしてくれたのだ。
「へぇ、ただのうるさい剣じゃなかったんだな」
と言ったブルーの言葉にアクエリアスが逆上したのは言うまでもない。
マントを試着した時に制服を綺麗にしておいて良かったと安堵した。
あのまま、泥だらけだったら試着すらこの店員なら嫌な顔をしたに違いない。
「ありがとうございました!」
店員の言葉を背に私たちは店をあとにした。
私は上機嫌に少し弾むように歩く。
そして、ブルーの方を向き直った。
「ありがとうブルー。大切にするね」
とブルーに礼を言った。
「これから、また山を歩くんだ。ボロボロになったらなったで構わない。その時はまた新調すればいい」
とブルーは言ってくれてはいるが、私は大切したいと思った。
それからブルーは旅に必要な物を調達するからと言ってどこかへ出掛けで行く。
その間に私は村を少し探索することにした。
メキラの町の時は人を探すのが目的で歩き回っていたので、ただ見て回るだけというのはなんだか新鮮さを感じる。
この村を訪れた際は何人かの村人が私を不思議そうな目で見ていたが、今はこの馴染んだ格好なのか誰もじろじろと見なくなった。
『あまりアイツから離れるなよ』
アクエリアスが心配してそんなことを言う。
「あら?それはアクエリアスもブルーが頼りになるって思っているってこと?」
『ち、違う!俺様はただナナミが心配なだけだ。アイツをそんな風には思ってない!』
アクエリアスが必死に弁解する。
「はいはい、そういうことにしておくね」
と私は上機嫌に村の見学を続けた。
このニオの村はメキラの町の北にある山を越えたところにある。
山を越えたとはいえ、山峡にある村なのでそれなりに標高は高く、割と空気が薄い。
基本的には山の上に村があるようなイメージだ。
吊り橋で渡らないといけないところもある。
ぐるぐるとしばらく歩き回ったあとでブルーを探しに戻った。
初めは村だから大丈夫かと思っていたが、充分に迷子になりそうだから、早々にブルーと合流しようと試みる。
靴を買った店に戻ってきたが、ブルーの姿はない。
その付近の店を見て回る。
「ナナミ」
誰かが私の名前を呼んだ。
ブルーの声だ。
慌てて振り返る。
「ブルー!」
私は勢いよくブルーに駆け寄った。
「ん、どうかしたのか?」
私の反応に何かあったのかとブルーが心配する。
「ううん大丈夫、何もなかったよ。ただ、ブルーとはぐれたらどうしようって少し心配になっただけ…」
と首を横に振った。
「そうか…」
と答えたブルーの表情がいつもより和らいで見えた。
「買い物は終わったの?」
「ああ、必要な物は大体揃えた。あとは出発前に何か食べて行くか?魚や木の実ばかりじゃ飽きるだろ?」
その問いに私は首を横に振った。
「そんなことないよ。魚の身を挟んだパンは絶品だったし、木の実もどれも私が食べれそうな物を選んでくれていて美味しかった。私にとってはブルーが用意してくれた食事はどれも素敵なものだったから…」
と思い出すように答えた。
するとブルーが少し照れくさそうに顔を逸らした。
「…まあ、用意するのも手間が掛かる。今日はここで食べていこう」
そう言って、ついて来いとばかりにブルーが先を歩き出した。
置いていかれないように小走りであとについて行く。
ブルーも照れたりするんだと思わず笑みが溢れたのは内緒だ。




