ニオの村①
ブルーとの旅が始まって三日が経過した。
色々とあったけど、私の中で何かが変わってからは少しこの旅が楽しく思えてきた。
ひとりじゃない。
私にはブルーとアクエリアスがいる。
とても頼もしい仲間だ。
いや、頼りになるだけじゃない。
一緒にいるだけで安心するんだ。
いつかは終わるこの旅が、まだ始まったばかりだというのにどこかで私はずっと続いて欲しいと思っていた。
四日目の朝、ついに山を越えた。
そして、ニオという村にたどり着く。
だけど、少ししたらこの村を発ち、また再び違う山を越えなければならない。
村の中に入ると、イメージしていたよりは村というより町に近い印象を抱いた。
山峡にあるためか旅人の姿はほとんどない。
でも、さっき話し掛けられたおばさんによるとよく旅人が山を越える前の休憩にとここを訪れては休んでいくそうだ。
ブルーはこのニオの村で私の靴を新調しようと、私をそれらしき建物の中に連れて入って行く。
そして、その店の人と何やら話し込んでいた。
店の中を見渡すと靴だけではなく、旅に役立ちそうな服や道具が揃っていた。
流石、山峡にある村だ。
きっと需要があるのだろう。
「ナナミ、ちょっとこれ履いてみてくれ」
キョロキョロと店内を見ていた私をブルーが呼んだ。
呼ばれて行くと屈んだブルーの前に革のブーツが一足置いてあった。
ボロボロの靴を脱いで、それを履く。
「どうだ?」
ブルーが私を見上げて訊いた。
「うん、丁度いいよ」
サイズはぴったりだった。
今まで履いていた靴よりも随分と重みを感じたが、山を歩くにはこれくらいの厚さがないと足に直接ダメージがくる。
実際、ずっと足が痛む。
「よし、これをくれ」
ブルーがそう言うと若い男性店員が分かりましたと返事をした。
「ち、ちょっと待って、私お金なんて持ってないよ…!」
私の言葉に店員の表情が怪訝なものへと変化する。
「お金は俺が出す。心配するな」
ブルーの言葉に店員の表情が元に戻った。
私がまだ何か言いたそうな表情をしているとブルーが小さくため息をつく。
「靴を変えて、今までよりも進める方が俺にとってはありがたい。悪いと思うなら、その分それで貢献してくれたらいい」
とブルーが店員にお金を払う。
見た目は少し小汚く見えるブルーだけど、お金はしっかりと持っているんだなという感想を抱いた。
「あと、あのマントも見せてくれ」
ブルーが壁に並んで掛けてあるマントの一つを指して言った。
店員が要望のマントを足早で取りに行く。
そして、私の元にそのマントを持ってくる。
パステルイエローのマントだ。
思わずブルーを見上げる。
「その格好は目立つだろ?服を買ってやりたいところだが、また山を越えなければならない。なら、越えた後の方がいいと思ってな。とりあえずマントだけでもあれば寒さも充分に凌げる」
ブルーの言葉に申し訳なさげにマントを試着する。
そのタイミングで店員が大きな鏡台を持ってきた。
「どうですか?」
店員が愛想よく私に訊いた。
私は鏡を見つめた。
マントで制服が隠れて、マント姿と革靴を履いた自分を見た時、なんだか自分がこの世界の人みたいに見えた。
「どうだ?気に入らないか?」
ブルーの言葉に首を横に振る。
「ううん、素敵。気に入ったよ」
思わず、マントの両端を持ってくるりと回って鏡を見た。
「これも貰おうか」
ブルーがそう言うとありがとうございますと店員が嬉しそうな声を上げた。




