限界②
ずっとだんまりだったアクエリアスが堪らずナナミの暴走を静止する。
「うるさいっ!何で私をこの世界から向こうの世界になんて連れて行ったのよ!もし、私がこのままファーシルで姫として育ったならこんな苦しい思いはせずに済んだのに!」
とナナミが泥だらけの地面を叩いた。
『…ナナミ』
「…何で?…何でいつもこうなるの…私だけいつも上手くいかないの…?」
とナナミが項垂れて泣いた。
ここでどんな言葉を掛けてやれば正解なのだろうか…?
ジーナの顔をふと思い浮かべる。
ナナミは言葉を発さずに声を上げて泣き続けた。
さっきまではまだ頑張って感情を抑えていたが、疲労が限界を越えて錯乱してしまったのだろう。
「…気が済んだか?言いたいことは吐き出しただろう?」
俺から出た言葉は慰めの言葉ではなかった。
これが正解だとは思わないが、慰めたところでナナミに降りかかる現実は変わらない。
「…私が一体何をしたかって言ったが、逆にお前はその現実から抗うために何かしたのか?ただ、現実を受け入れて他人や環境のせいにして逃げていただけじゃないのか?それで上手くいく筈がないだろう?なぜなら、例えどんなに抗っても絶対に上手く保証はなんてこの世にはないのだからな」
と項垂れるナナミを見下ろして言った。
「これ以上、進みたくないのなら好きにしろ。俺は先を急ぐ…」
そう言い放ち、踵を返して歩き出す。
…ジーナならなんて言うだろう?
レインは冷たいって言うだろうか?
などと思いながらも先を進んだ。
しばらくして、後から追ってくる気配がないと分かったところで立ち止まる。
…この旅はナナミをファーシル城に連れて行くのが目的であって、俺にこれっぽっちも急ぐ理由なんてないと、去り際の自分の台詞を嘆いた。
そして、雨で濡れた髪をくしゃくしゃにした。
…ったく、仕方がない。
ナナミの元へ戻ろうと踵を返した。
と、同時に何かが俺の横を通り過ぎていった。
ナナミだ。
泥ですっかり汚れてしまったナナミが俺の横を通り過ぎてどんどん前へと進んで行く。
「やるわよ!やってやるわよ!抗えばいいんでしょ?絶対にファーシル城に辿り着いてやるんだから!」
と威勢良く吠えながら勢いをつけて登っていく。
…おいおい…どうなってるんだ?
というか、まだあんな体力があったのかと感心する。
俺は急にハイペースで先を進むナナミのあとをすぐに追った。
…似ているのは見た目だけじゃない。
中身までジーナに似てる…
と思わず少し笑みを浮かべてしまった。




